広島が示したJ1首位・町田の「攻略法」  黒田監督、選手が語った敗因と浮上する課題

大島和人

町田は広島を相手に今季初の敗戦を喫した 【(C)FCMZ】

 無敗でJ1首位を走っていたFC町田ゼルビアが、4月3日の第6節・サンフレッチェ広島戦で1-2と敗れた。町田は2023年に黒田剛監督が就任するとJ2を独走で制し、さらに今季はJ1でも旋風を巻き起こしていた。そんなチームが、昨年10月1日のいわきFC戦(●2-3)から数えて12試合ぶりに敗れている。

 昨季の町田も、42試合で7敗を喫している。広島はJ1優勝候補の筆頭で、11戦無敗で町田戦を迎えていたのだから、厳しい展開は想定内に違いない。

 とはいえ黒田体制の町田が技術はもちろん、球際の強さ、組織で完全に上回られた試合は初めてだった。町田の「攻略法」という部分で、他クラブのスカウティング担当者にとって、貴重なサンプルとなった90分かもしれない。

試合の支配を許し、敗れる

 黒田監督は試合後にこう振り返っていた。

「我々も球際や切り替えなど彼らの意図するところ、彼らの得意とするところで真っ向勝負をしたいということで入りました」

 広島は最終ラインを佐々木翔や塩谷司らのベテランが締めつつ、中盤と前線は活きのいい若手、中堅が揃っている。切り替えの速さ、スプリントの量といった強みを見れば、町田とは「似たもの同士」だ。

 しかし町田は90分間の大半で後手を踏み、強みを出せなかった。普段の町田は両ボランチを中心に高い位置でボールを奪う、セカンドボールを拾うことでカウンターの起点を作る。相手のボール回しにFWから「規制」をかけ、じわりじわりと苦しい状況に追い込むからこそ、高い位置でボールは奪える。

 広島戦は、まず前線からのプレスがハマらなかった。

 公式記録を見ると町田のシュートはわずか3本。ロースコアとなりやすい雨中の試合だったし、オウンゴールで1得点は挙げている。2失点も、その局面を切り取れば、防ぎようがあったはずだ。

 とはいえ試合を支配していたのは間違いなく広島で、町田は「らしさ」をほとんど出せなかった。

 黒田監督は31分に大橋祐紀が決めた1点目をこのように分析する。

「ボランチのところで入れ替わるようになって、ボールを失ってからの失点でした。広島さんがボランチのボール奪取をかなり厳しく狙ってきていた中で、我々がロストをしてしまいました。その処理、判断も含めて、もう一つクオリティーを上げていかなければいけません。またはそこでリスクを負わずにワンタッチで背後を取るなど、もっと手立てはあったと思います」

球際とセカンドボール争奪で上回られる

FWオ・セフンも厳しいマークを受けて仕事ができなかった 【(C)FCMZ】

 試合結果を左右したポイントは球際とセカンドボールの争奪だ。途中交代でピッチに入った荒木駿太は振り返る。

「1点を返したのはよかったと思いますが、広島との差を感じた試合です。いつも以上にセカンドボールは狙っていましたが、すべて拾われる印象がありました。どうやったら拾えるのだろう?という答えを試合の中では見つけられませんでした」

 ボランチの仙頭啓矢は言う。

「勢い、出足の速さで少し負けてしまいました。セカンドボールが相手にこぼれてしまうシーンはかなりありましたけど、そこをマイボールにするだけで流れは変わってきます。後半に修正できた部分はありましたが、自分たちの流れにするのにすごく時間がかかった印象です」

 さらに仙頭はこう述べていた。

「相手が中間ポジションというか、僕らの脇、後ろのポジションに立っていました。そこをセンターバックがケアするのか、僕らがケアするのかというところで、ちょっと間延びをしてしまった。その結果として、前にあまり力をかけられなかった。(マークを捨てても)もっと前から、町田らしく行けるようにできればよかったのかなと思う点もあります」

 広島戦では単に高い位置でボールを奪えないだけでなく、「失点に直結するスペースに入りこまれる」「マークを外してはいけない場面で外してしまう」場面も多かった。

 例えば55分にVARを経て広島にPKが与えられた場面は、ファウルを取られたタックルだけを切り取れば不運もあった。ただ、その直前に満田誠はエリア内で1タッチ、2タッチできる状況で前向きに仕掛けている。町田に限らず「エリア内で相手にフリーに持たれる」状況を作られた時点で、守備は失敗だ。

 黒田監督は2つの失点について、こう語っていた。

「取られたくないような形、またはボックス内に侵入されながらワンタッチで落とされる形でした。そこは大いに反省しなければいけないところです」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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