広島が示したJ1首位・町田の「攻略法」 黒田監督、選手が語った敗因と浮上する課題
「間延び」を強いられる
仙頭啓矢らボランチは苦しい対応に追われた 【(C)FCMZ】
広島戦の町田は分かりやすく間延びが起きていた。セカンドボールを拾おう、ボールを奪おうとするときの「アプローチ」が総じて遠くからだった。それが試合の流れを失い、ファウルや警告が増えた端的な理由だ。
町田はこれまで4試合の4バックでなく、3バックを採用して広島に向き合った。幅を取る相手に対して、枚数を合わせるのは守備の定石で、これが敗因ということではないだろう。
ただし広島は前に踏みこもうとすると外や裏へ思い切りよく入れて、前への圧をいなしていた。高い位置では2対2、3対3の形からいい距離感、少ないタッチで正確にボールを動かしていた。「遠近」「大小」を巧みに織り交ぜた攻撃に対して町田は振り回される、裏を取られる状況が頻発していた。
平河悠はこう振り返る。
「自分たちはプレスバックの回数が多かったし、いつもより後ろでプレーしなければいけなかった」
サッカーの守備と攻撃は一体で、守備の歯車が狂うと攻撃にも影響が出る。逆に狙い通りにボールを動かせば、チーム全体で敵陣に「押し込める」状態が生まれ、プレスの圧も上がる。プレスはハマり始めると、選手の迷いが消え、球際の鋭さも増しがちだ。それが4月3日の広島だった。
町田は相手に振り回され、前でなく後ろにベクトルが向いた守備を強いられていた。相手が引いていた終盤の時間帯を除くと、前後左右が広がった状態になっていた。それは分かりやすい敗因であり、今後への課題だ。
82分の得点は鈴木準弥のロングスローを、オ・セフンが競った中で生まれたもので、オウンゴールではあっても狙い通りの形だ。町田が残り15分、10分で流れを引き戻したことは今後につながる収穫かもしれない。
とはいえ町田がこの試合で初めてのロングスローを投入したのは67分と遅かった。コーナーキック、ロングスローから相手ゴールに迫るのは町田の形だが、そのためには「いい奪い方と高い位置からの仕掛け」が前提になる。
「試練の4月」に向かう町田
チームの目標、サポーターの願いは「ACL出場」だ 【(C)FCMZ】
「球際、セカンドボールの争奪で遅れを取らない」ことは町田がJ1で上位に食らいつくための大前提だ。そのためには前から圧をかけつつ、コンパクトな陣形を保ち続ける必要がある。一方でボールの動かし方、失い方が拙いと守備の歯車が外れやすい。広島は強度と技術、そして戦術で町田をそのような状況に追い込んだ。
第6節のJ1はセレッソ大阪、ヴィッセル神戸といった上位勢が引き分けたため、町田は辛うじて首位にとどまった。ただ4月の後半にはU-23日本代表のパリオリンピック最終予選が組まれており、平河と藤尾翔太は7日の川崎フロンターレ戦を終えるとしばらくチームを離れる。2月・3月を順調に乗り切った町田にとっては、間違いなく「試練の4月」だ。
J1の全クラブが広島と同じ特徴、クオリティーを持っているわけではない。町田はJ1経験の乏しい若い選手が主力を占めており、彼らの「慣れ」も期待できる部分だ。しかし町田はAFCチャンピオンズリーグの出場圏内、5位以内を目標としているチーム。広島戦の内容に対して、危機感を持っているはずだ。
逆に考えると、敗戦を糧にできる逞しさが、どんなチームにも必要だ。あのレベルの相手に対して強みを出せるようになれば、町田は目標達成に接近する。広島戦はJ1初体験のチームにとって、目指すべきターゲットが明確に定まった試合だったのかもしれない。