あなたも日本代表に? 未知のスポーツが持つ可能性

平野貴也

まだ知らぬ競技が人生を変える? 【写真:平野貴也】

 年度初めの4月は、新社会人、新入生が多い。大学のキャンパスでは、部活動やサークルの新入生勧誘も行われる。新しい競技を始める人が多い時期でもある。3月23、24日に、日本薬科大学のさいたまキャンパスで行われた「マイナー競技認知度爆上祭」では、50を超えるマイナー競技団体が出展。体験ブースなどで競技の紹介を行った。

 アーチェリーやボルダリングのような五輪採用競技もあれば、モルックやパルクール、フットゴルフなど最近流行りの競技もある。また、ドローンファイトや電子チャンバラのSASSENなど、電子機器を用いた新たな競技もあれば、競技ヨーヨーやスポーツ鬼ごっこのように、広く知られる遊びが競技化されたものもある。マイナーであるほど、活動環境は限られ、競技人口は少なくなる。しかし、逆手に取れば、ライバルが少なく、競技歴も影響しないため、メジャー競技では不可能な成績を収められる可能性は大きくなる。

 新たな生活の一つとして、まだ知らないマイナー競技に取り組めば、あなたの人生は大きく変わるかもしれない。

競技歴1年で世界王者に!

YOU.FOという競技を始め、1年で世界王者となった滝澤さん 【写真:平野貴也】

 実際に、このイベントを機に新たな競技を始め、わずか1年で世界王者になった人物もいる。

 特殊なスティックでリングをパス、キャッチして得点エリアへの侵入を目指す「YOU.FO(ユーフォー)」という競技がある。オランダ発祥で欧州に広まっており、競技人口は約5000人だが、日本ではまだ競技者が数えるほどしかいない。
 
 Katsuの活動名で競技に取り組んでいる滝澤克明さんは、知人からマイナースポーツのオンラインコミュニティに誘われたことをきっかけに、22年に行われた「マイナー競技認知度爆上祭」に参加。新しいことを始めるなら、日本代表を目指せるような競技をやりたいとの思いで、自身の特徴と競技性の相性を知るために10種目以上を経験。その中から「当時は、まだ3人くらいしかやっている人がいないと聞いたが、23年6月にオランダで世界大会があることは決まっていたので、日本代表として世界大会に出場できるのではないかと思った」とYOU.FOを選択。日本や北米など初めて非欧州の国が参加した第1回世界大会に参加し、見事に優勝を果たした。

部活動に熱中した時期とは異なる、状況に適したモチベーション

 滝澤さんは、バレーボールの経験者。ピアニストになるため、高校で競技を辞めた。たまに仲間で集まってプレーをしたが、部活動のように練習を積み重ねているわけではないため、イメージと動きが合わず、熱中できた部活動のような楽しさは感じられなくなったという。しかし、競技者が少ないYOU.FOは、週に2回、2時間ほど汗をかく程度でも、高みを目指せる。

 日本では、スポーツと言えば、他の生活を犠牲にするほど力を注いで取り組むイメージが強い。プロスポーツや五輪、あるいは全国大会などで、その姿勢が生み出す競技性の高さが魅力を生む一面はある。一方で、各自の環境に応じて楽しむ「生涯スポーツ」としての価値もある。

 新たな競技との接し方を知った滝澤さんは「世の中には、まだ知らない競技がたくさんある。ほかの競技をやりながらでもいい。週に1回の活動でもいい。スポーツを楽しんでほしい」と、スポーツへの携わり方の再考を勧めた。

運動音痴でも世界2位に、普及が進む電子スポーツ

競技用ドローンを飛ばす寺澤さん(左)と畠さん。左上に光っている輪が「ゴール」 【写真:平野貴也】

 マイナースポーツの中には、競技が生まれて歴史の浅い競技も多い。近年は、コンピュータゲームの技を競うeSPORTS(イー・スポーツ)も存在感を増しているが、電子機器を用いた競技は、最たる例だ。

 ドローンを操作して、輪の中をくぐったり、妨げたりする、ドローンサッカーは、韓国発祥の競技。攻撃2機、守備3機を1チーム5人で操作する。25年10月に韓国で開催予定の第1回ワールドカップには、32カ国から200チームが参加予定だ。

「あやのん」の名前で活動する、寺澤彩乃さんは、23年5月に行われたFIDA世界選手権のクラス20(直径20センチの機体を使用)に「ええやん!大阪」チームの一員として参加し、準優勝した。旅行で空撮を行うために、ドローンに興味を持ったのがきっかけ。インストラクターなどと出会う中で競技を知り、誘われたという。自身はスポーツには無縁だっただけに「運動音痴で、身体を動かすのは苦手。でも、ドローン操作に使うのは、頭と指だけ。対戦するのがすごく面白くて、上手くなりたい気持ちになる」と自身が参加して楽しめる競技との出会いを喜んでいた。

 ドローンの操縦は、2022年に国家資格も制定された(競技には不要)。ドローンサッカー連盟埼玉支部の代表を務める畠隆介さんは「資格取得にも役立つ。私は実家が旅館だったので、いつかは、観光業にもつなげたい。男女問わず、車いすの方も一緒にできる、バリアフリーで楽しめる競技」と魅力をアピールした。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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