あなたも日本代表に? 未知のスポーツが持つ可能性

平野貴也

すいか割りにルール制定 地域活性化を促進

体験ブースでスポーツすいか割りのルールを説明する三浦さん 【写真:平野貴也】

 浅い競技歴で日本一や世界一を目指せることは、マイナースポーツの一つの魅力だ。ただ、スポーツの魅力は競技成績だけとは限らない。

 遊びをそのまま競技にした「スポーツすいか割り」は、2009年頃にルールを制定。すいかの名産地として知られる山形県尾花沢市の町おこしとして、年に1回、全日本すいか割り選手権大会を行っている。優勝賞品は、高級温泉街として知られる銀山温泉の招待券。近年は東北地方を旅行中の外国人も参加しており、地域活性化のツールとして役立っており、24年で第13回大会を迎える(コロナ禍は非開催)。

 目隠しをして、その場で5回と3分の2の右回り。仲間の声掛けで正面に向き直り、目が回ってよろける足取りで7メートル先へ進み、制限時間1分半以内にすいか(販売規格外)を割る。割った断面で点数を判定(赤い果肉が見えたら5~10点、ひび割れだけなら2~4点など)、同点の場合はタイム勝負となる。

 競技化を推進した三浦好昭さんは、すいか農家に生まれ育った、元高校球児。「大会は参加費3000円だけど、ビニールで包んだすいかを割って、持って帰れる。予選で落ちたら、種飛ばし大会もあるし、早食い競争もある。副賞も尾花沢牛の肉や大根など地産の物がたくさん付く。普通に買うよりお得」と笑った。

 競技化することで、全国への普及を目指しているという。「すいかは、各地で生産されている。いろいろな産地でやってほしい。夏すいかは(寒冷地の東北地方である)尾花沢が最後。大会が広まったら、いつかSUIKA 割ORLD CUP(すいか割るどカップ)ができるかもしれない」と日本の課題となっている地域活性化に生かしたい思いを語った。

障がい者との障壁をなくす、ユニファイドスポーツも注目

フロアボールを通じて多くを学んだという田村さん 【写真:平野貴也】

 知的障がい者の競技団体として知られるスペシャルオリンピックスは、フロアボールを出展していた。北欧発祥で、スウェーデンにはプロリーグも存在する。6人制で、スティックでボールをゴールに入れる、アイスホッケーに似たルールの競技だ。健常者を中心に親しまれているが、スペシャルオリンピックスでも3年前に採用した。

 スペシャルオリンピックス日本・埼玉のスポーツプログラム委員長を務める田口正彦さんは「スポーツを通じて、知的障がい者は、社会活動における自信を得られ、生活を充実させられる」と障がい者におけるスポーツの重要性を説いた。

 スポーツが成し得るのは、彼らの生活を充実させるだけではない。普段、触れることの多くない知的障がい者への理解を深めるためのコミュニケーションツールにもなる。知的障がい者と健常者がともにプレーするユニファイドスポーツとしても行われている競技だ。小学生の頃、児童館でユニホックと呼ばれる類似競技を始めた田村隆幸さんは、健常者。フロアボールをプレーする傍ら、知的障がい者の選手に競技を教えている。

 競技を通じて知的障がい者のアスリートと知り合い「知的障がい者を差別する意識はなかったけど、偏見のようなものがあったのかもしれない。初めは、自分が知らないNGワードなどがあるのではないかと怖がっていたけど、そんなことはない。何回も話せば少しずつ分かってくれると知った。スポーツを通じて知らなければ、一生、分からずにいたかもしれない。スポーツは、コミュニケーションツールとして、すごく価値があると思う」と話した。

 今までに取り組んだスポーツでは届かなかった日本代表、世界大会の経験。あるいは、未知の世界や社会とのつながり。スポーツの形は多様で、価値も様々だ。まだ知らない、新しいスポーツが、あなたの生活を豊かにしてくれるかもしれない。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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