悲嘆に暮れた西山雄介と新谷仁美 東京マラソンで日本勢が直面した「甘くない現実」と、今後への「大きな希望」

酒井政人

東京マラソンで自己ベストを1分16秒更新する2時間06分31秒をマークした西山雄介。日本勢トップとなる9位もパリ五輪代表選考の設定タイムは突破できず、悔し涙を流した 【写真は共同】

「力不足だった」西山が流した涙

 東京マラソン2024は日本人トップ選手が揃って涙を流す結果となった。

 男子はオレゴン世界選手権代表の西山雄介(トヨタ自動車)が2時間06分31秒で日本人トップに輝くも、MGCファイナルチャレンジ設定記録(2時間05分50秒)には41秒届かなかった。

 レース後は、「オリンピックに行きたかった。その一言です」と涙がこぼれた。

 西山は19km過ぎに転倒するも、「ここで気持ちを切らしてしまったら、今までやってきたことが無駄になる」と奮起。ほどなくして集団に復帰すると、後半は期待感を抱かせる走りを見せた。

ペースメーカーが離脱した後、33.3km過ぎに浦野雄平(富士通)をかわして日本人トップに浮上。34.5kmでは前世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)も抜き去った。

「30kmで一度きつくなったんですけど、自分のベースで落ち着いて走りました。そこから少しずつ動いてきて、浦野選手を抜いた後が大事だなと思っていたんです。そこからどれだけ押せるかが勝負でした」

力走する西山(写真左)と浦野 【写真は共同】

 西山は30kmからの5kmを15分03秒で走破。このペースを維持できれば、2時間05分50秒を突破できる可能性はあった。しかし、次の5kmに15分31秒を要して、パリ五輪への望みが潰えた。

 女子は新谷仁美(積水化学)が、今年1月の大阪国際女子マラソンで前田穂南(天満屋)がマークした日本記録(2時間18分59秒)の更新にチャレンジするも、前半から予定したペースに乗ることができず、2時間21分50秒でフィニッシュした。

 新谷もレース後の記者会見で、「単純に結果が出なかったということで、それ以上でも、それ以下でもありません。本当にただただ力不足だったなと思います」と目を赤くした。

 男子の西山は自己ベストで日本歴代9位の好タイム。女子の新谷はサードベストで日本歴代11位相当の記録だった。ふたりともタイムは悪くなかったが、“ミッション”を果たすことはできなかった。

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著者プロフィール

1977年愛知県生まれ。東農大1年時に箱根駅伝10区に出場。陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』やビジネス媒体など様々なメディアで執筆中。『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)など著書多数。

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