復帰早々に存在感を見せつけた遠藤航 守備から一瞬で攻撃に切り替える30メートル級パスを連発
交代時には大観衆が総立ちになって
この日、アンフィールドにはリーグ戦におけるスタジアムレコードを更新する5万9896人が詰めかけた。終了間際に遠藤がピッチを去る時には、その大観衆が総立ちで彼の活躍を称えた 【写真:ロイター/アフロ】
また試合終了直後、遠藤がチームメイトとのセレブレーションに加わるためにベンチからピッチにゆったりと歩いて戻る途中、クロップ監督が日本代表主将に後ろから近寄り、その肩を抱いて何かを囁いていたのも印象に残った。
そして、いつもは超過激サポーターで埋まるゴール裏の『コップ・スタンド』だけに、3回の正拳突きをして勝利の喜びを分かち合うクロップ監督だが、この日は反対側のゴール裏、そしてメインスタンドにも向かって、3回拳を突き出す大サービス。こんなシーンにも今季限りの勇退の現実味が表面化した。
試合後、遠藤に聞きたいことは山ほどあった。ところが復帰初戦で素晴らしいパフォーマンスを見せた日本代表主将はミックスゾーンに姿を現さず、本当に残念ながら取材が叶わなかった。
こういうことは大きいクラブほどある。それでも遠藤は取材に応じてくれるほうだ。この日もハーフタイムの時点で広報官に日本代表主将と「話がしたい」と伝えていた。だから取材ができるものだと安心していたのだが、試合後のカオスな状態で遠藤本人がつかまらなかったのか、それともクロップ監督の勇退発表後、選手のインタビューを控える方針になったのか。試合後、午後6時15分までミックスゾーンで粘ってはいたのだが、スタッフの1人に「もう控え室には誰も残っていない」と言われて、後ろ髪を引かれる思いでアンフィールドをあとにした。
三笘はピーク時の体調を取り戻しつつある
2月10日のトットナム戦。三笘は自身にとって約50日ぶりのプレミアの試合でキレのある動きを見せた。前半29分にはララーナからパスを引き出し、右足アウトサイドのシュートでゴールを脅かすシーンも 【写真:REX/アフロ】
この形態は筆者が番組を見始めた90年代半ばから全く変わっていない。変わる必要がないのだ。これは原稿を書いている者の実感でもあるが、プレミアリーグのフットボール自体が素晴らしく、それをそのまま伝えればそれで勝手に素晴らしいものになってしまう。制作する側もテコ入れや新企画の導入など全くせず、国民の習慣となっている番組の視聴率を気にする様子がない。無論のこと、芸人が出て番組を盛り上げる必要もない。
リバプールとバーンリーの試合は、この日、12時30分のアーリー・キックオフだったマンチェスター・シティ対エヴァートンの次に放映された。試合のダイジェストは約8分間。そのなかで先制点のコーナーキックにつながるヘディング、ジョッタに送ったスルーパス、そしてヌニェスがオフサイドとなったが、ロバートソンに送った完璧なパスと、遠藤のプレーが3つも紹介された。
これは敵味方合わせて4ゴールが飛び出した試合では異例と言っていい注目度だった。
そして偶然、3試合目にトットナム対ブライトンが続いた。ハイライト映像を流す直前に、この日の解説を剛脚ストライカーとして名を馳せた元イングランド代表FWアラン・シアラーと務めた元アーセナルで元イングランド代表DFでもあるマーティン・キーオンが、「双方ともに攻撃的なチームで、フットボールの試合はこうあるべきというエキサイティングなゲームだった」と賛辞を送った。
この試合の映像は約6分間流れたが、こちらでも復帰したばかりの日本代表MF三笘薫のプレーが2度紹介された。
まずは前半にアダム・ララーナからのスルーパスを受け、得意の右足のアウトサイドでオン・ターゲット(枠内)のシュートを放ったシーン。そして後半、左サイドからボックス内に進入し、マイナスの折り返しクロスを放ったプレーが流れた。
あのクロスは、至近距離だったということもあり、アンス・ファティがきっちりと決めて、日本代表MFにアシストをつけてほしかったが、放ったシュートは対角線上の右サイドのポストをかすめるように外に逸れ、惜しくもゴールはならなかった。
この最大のチャンスを逃したブライトンは、1-1の同点で迎えた後半アディショナルタイム6分に、ソン・フンミンが左サイドから放った低空クロスをファーサイドでフリーで待ち受けていたブレナン・ジョンソンに右足を合わされてゴールを割られてしまう。パスカル・グロスのPKで先制しながら、ブライトンは1-2で痛恨の逆転負けを喫した。
キツい敗戦ではあったが、マッチ・オブ・ザ・デイが注目した三笘の2プレーを映像で見る限りは、26歳MFがピーク時の体調を取り戻しつつあると感じた。アジア杯参加中にしっかりケガを治して、動きに本来のキレが戻っていたという印象だ。
翌日、日本の報道を見ると、三笘の談話が掲載されていた。ブライトンにはチャーリーという日本贔屓(びいき)の若い報道官がいて、アウェーの敗戦直後でもしっかり日本代表MFを日本人記者団の前に連れて来てくれる。
アディショナルタイムに決勝弾を食らい、「自分たちのミスでボールを失ってからショートカウンターの形が多かった」というような渋いコメントだったが、ロンドンへ行っていれば三笘の取材ができたと思うと同時に、遠藤と話せなかった悔しさも再びこみ上げてきて、筆者のプレミアリーグ第24節が幕を閉じた。
(企画・編集/YOJI-GEN)