ロッテ小島 神宮球場ベンチ前の階段にまつわる苦い思い出。そこから学んだ人生哲学。

千葉ロッテマリーンズ
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千葉ロッテマリーンズ小島和哉投手 【千葉ロッテマリーンズ提供】

 強い雨が降る神宮球場で丁寧なピッチングを続けていた。5月28日のスワローズ戦に先発した小島和哉投手は低めにボールを集めた。そして雨中だからこその予期できぬ様々なアクシデントに細心の注意を払いながら投げた。水分を吸い込んだ不安定なマウンド。濡れたボール。一つ一つに神経を集中して投じていった。

 小島には神宮球場での忘れられない苦い思い出があった。

 早稲田大学4年秋。自身がキャプテンを務めるチームは優勝争いを繰り広げていた。そして負ければ終わりながら優勝の可能性を残し、慶応大学戦を迎えた。晴天のデーゲームだった。グラウンドで整列を行い、ベンチに戻った時、思いもよらないアクシデントに見舞われた。ベンチ内にある小さな階段で足を滑らせ、右足首を捻ったのだ。症状は捻挫。それでも「これはかすり傷みたいなものだと自分に言い聞かせて投げた」と痛みを押し殺しながら小島は先発をした。

 しかし結果は残酷だった。7回3失点で負け投手。大学最後のリーグ戦での優勝の夢はこの時、潰えた。今も鮮明に記憶に残る辛い想い出だ。
 
 「とても大事な試合だった。本当に申し訳ない気持ち。整列して『お願いします』といって戻ったベンチの一段目の階段ですべった。ちょっとした心の油断。神宮にくると、真っ先にその事を思い出します。だから、昨日、雨という事もあり、あの時のようにベンチで足を踏み外さないように。どんなトラブルが起こるかわからないので色々な事に細心の注意を払ってプレーをしていました」と小島は振り返った。

 投げてベンチに戻るたびに、3段しかない階段を見つめた。人生は油断禁物。どこでどんな災いが待っているか分からない。だからこそどんな時もどんな状況でも目の前の一歩を大事にしながら丁寧に生きていかなくてはいけない。あの日、悔しさと引き換えにその事を学んだ。

 小島は、その原点を思い返すように、自分に言い聞かせるように投げ終わってベンチに戻るたびにしっかりとした足取りで小さな階段を1段ずつ踏んだ。
 
 「ベンチの階段の小さな1歩すらも油断してはいけないということをあの試合で覚えました」と小島。

 この試合は5回3失点で勝ち投手。4勝目を挙げた。ただ、それでも反省を忘れなかった。「雨でピッチングとしては難しかったですけど、なんとかストライク取れる球で組み立てることは出来たかなあと思います。そしてリードした状態で試合を終えることができました。ただ、まだまだ自分は甘い。ボールが濡れてるとかスパイクに泥がたまって、全然噛めないなあ、嫌だなあとか雨を嫌がってしまった部分があった。雨とお友達になるぐらいにならないと。まだまだだと改めて思いました」と苦笑いを浮かべた。

 人には色々な思い出がある。いいこともあれば、悪いこともある。ただ、たいがい失敗した経験、辛い思いこそがその後の人生に役立ち、成長へと繋がっていくものだ。小島は思い出の詰まる神宮球場、2度目の先発でプロにおける神宮初勝利を挙げた。それは大事な原点を思い出した勝利でもあった。この日の強い雨もまた一つ、小島の思い出に加わった。

千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章

千葉ロッテマリーンズ小島和哉投手 【千葉ロッテマリーンズ提供】

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