アジアカップ敗退から中2日で国王杯にフル出場 久保建英不在の1カ月、ソシエダに何が起こっていた?
アジアカップ敗退後、中2日でマジョルカとの国王杯準決勝にフル出場した久保。試合はスコアレスドローに終わったが、ソシエダの関係者は想定よりも早いエースの帰還を素直に喜んでいる 【Photo by Cristian Trujillo/Quality Sport Images/Getty Images】
※今回はジローナ戦の結果を反映するため、第2木曜日の掲載とさせていただきました。
躍進ジローナ相手に敵地で勝ち点1も……
わずか2シーズン前までは2部にいたこのカタルーニャのチームは、今節開始前の時点ですでに勝ち点55を獲得。首位レアル・マドリーに次ぐ2位につけ、ラ・リーガ版の“ミラクル・レスター”(メガクラブを出し抜いて奇跡のプレミアリーグ制覇を成し遂げた2015-16シーズンのレスター)とも言える快進撃で話題をさらっている。
一方、昨年末から勝ち切れない試合が続くソシエダは、ここまで勝ち点36の6位。トップ集団にこれ以上離されないためにも、この大一番を落とすわけにはいかなかった。しかし、開幕戦の同カードで先制点を記録してマッチMVPに輝いた久保に加え、右サイドバックのアダマ・トラオレ(マリ代表)がアフリカ選手権に出場、カルロス・フェルナンデス、アリツ、エルストンド、アイエン・ムニョス、キーラン・ティアニーが怪我と、チームは多くの主力を欠いていた。さらに悪いことに、中盤と最終ラインの柱であるミケル・メリーノとロビン・ル・ノルマンも、フィジカル面に問題を抱えていて先発起用できない。
この厳しい状況の中、イマノル・アルグアシル監督は今できる最善策として、システムを4試合ぶりに定番の4−3−3に戻し(それまでの試行錯誤は後述)、久保の代役として、右ウイングには今冬に獲得した新戦力のシェラルド・ベッカーを配置した。
前半はラ・リーガ最多得点を誇るジローナにボール支配率で上回られ、いくつかの決定機を作られる苦しい展開となったが、ソシエダはボールがない時のハードワークが際立った。ハイプレスをかけ続け、ファウル数が前半だけで14回を数えるほどインテンシティーの高いプレーで、なんとか凌ぎ切る。
後半は主導権を奪い返し、ブライス・メンデスに絶好のチャンスも訪れたが、惜しくも決められず、結局試合は両者譲らず0-0のまま終了。ソシエダは2戦連続スコアレスドローとなった。
後半は明らかにジローナを上回り、勢いのある強敵を相手にアウェイで貴重な勝ち点1を手に入れたことは、現在の台所事情を考えれば納得の結果かもしれない。それでも、またもや決定機を得点に結びつけられず、久保不在による攻撃面のオプションの少なさがあらためてクローズアップされたような一戦でもあった。
さらにこの試合では、アルバロ・オドリオソラ、ベッカー、ミケル・オヤルサバルまでもが負傷。大きな代償も払っている。
2シーズン連続のチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得という目標からまたも遠ざかる結果に、「後半は相手を圧倒した。我々は勝利に値したはずだ」と、試合後のアルグアシル監督は悔しさを滲ませていた。その一方で指揮官は、3日後に控えたマジョルカとのスペイン国王杯準決勝第1レグに向けて、冗談交じりにこんなポジティブな発言もしている。
「幸いにもこの後、タケとアマリ(トラオレ)が戻ってくる。うまくいけばマジョルカ戦に間に合うだろう。彼らを合流させるために、必要ならプライベートジェットを用意しなくては。会長は私の言うことを聞いてくれるはずだ(笑)」
結局、プライベートジェットこそ飛ばさなかったが、指揮官の言葉通りに久保は、アジアカップ敗退から中2日の強行軍でマジョルカ戦に先発フル出場を果たした(結果はスコアレスドロー)。
最も大きなダメージを受けたソシエダ
ラ・リーガの上位陣の中で、大陸選手権開催の影響を最も受けたのがソシエダだ。久保とトラオレという右サイドのホットラインを欠いた影響は大きかった 【Photo by Emmanuele Ciancaglini/Ciancaphoto Studio/Getty Images】
久保は新年初戦のラ・リーガ第19節・アラベス戦(1-1)を最後にチームから離脱した。ここまで公式戦25試合に出場して6得点・3アシスト。ラ・リーガのマッチMVPを7回、月間MVPとCLのマッチMVPをそれぞれ1回ずつ獲得するなど、攻撃陣で最も活躍していた主力中の主力が長期にわたって抜けることを、サン・セバスティアンの人たちは大いに懸念した。
久保離脱期間の公式戦の成績は、7試合で4勝2分け1敗、7得点・3失点。スペイン国王杯ではマラガ、オサスナ、セルタをいずれもアウェイで撃破して準決勝進出を果たし、4大会ぶり4回目の優勝に向けて大きく前進している。
一方、ラ・リーガでは4試合のうち勝ったのはセルタ戦(1−0)の1試合のみ。アスレティック・ビルバオとのバスクダービーは内容も伴わずに1-2で敗れ、ラージョ・バジェカーノ、ジローナとはスコアレスドロー。堅守を支えに負けにくいチームになっているのは確かだが、ゴールを予感させるようなプレーが少なく、1試合平均0.5点と得点力不足を露呈した。
その原因はいくつか考えられるが、なんといっても、「できるだけ早く敗退し、戻ってくることを願っている」とアルグアシル監督が正直な胸の内を吐露したように、久保とトラオレの1カ月以上にわたる欠場が大きく影響したのは間違いない。
ラ・リーガの上位陣の中で、この時期にアジアとアフリカで大陸選手権が開催されたことによるダメージを最も受けたのは、ソシエダだった。マドリー、ジローナ、バルセロナから、アジアカップとアフリカ選手権に参加した選手は1人もいない。アトレティコ・マドリーとアスレティックは1人ずつを代表チームに送り出したが、どちらもグループリーグ終了後に戻ってきた。しかしソシエダの2人は、チームが準々決勝まで勝ち進んだため、より長く戦列を離れることになったのだ。
ソシエダが今季、ラ・リーガで上位をキープし、国王杯とCLで優勝の可能性を残している事実は称賛されてしかるべきだろう。しかしながら、それゆえの過密日程によって負傷者が急増していることも、結果に大きな影響を与えている。
特に両サイドバックは壊滅的な状態で、同じく選手層の薄い中盤も疲弊し切っている。久保離脱直後のアスレティック戦では0人だった負傷者が、わずか4試合後のラージョ戦では今季最多タイの5人にまで膨れ上がった。