アジアカップ敗退から中2日で国王杯にフル出場 久保建英不在の1カ月、ソシエダに何が起こっていた?
CL参戦チームのCFが3人で4ゴールでは
快進撃を続ける2位ジローナとの対戦は、スコアレスドロー。苦しい台所事情の中でよく戦ったが、久保不在による攻撃オプションの少なさもあらためて浮き彫りに 【Photo by Alex Caparros/Getty Images】
右ウイングに関しては、久保の離脱後最初の2試合では今季新加入のアルセン・ザハリャンが務めたが、スピード不足で機能せず。やむなくオヤルサバルをこのポジションに入れると、右サイドに大きく張り出す久保とはプレースタイルは異なるものの、さすがの適応力で及第点のパフォーマンスを見せた。
その後、さらなる怪我人の増加を受けて、アルグアシル監督は起用可能な選手の特徴を熟考しつつ、3試合連続でシステム変更を施している。守備的な5−3−2や、ダビド・シルバ(引退)がいた昨季の中盤ダイヤモンド型の4−4−2などを採用したが、その結果、試合内容はより保守的なものとなった。ラ・リーガ第21節、国王杯準々決勝と続いたセルタとの2連戦には僅差ながら勝利(1-0、2-1)したものの、22節のラージョ戦では最後までゴールを奪えなかった。
ただ、ソシエダの得点力不足は今に始まったことではない。前半戦で大活躍の久保が徹底マークに遭うようになってから、コンスタントに得点力を発揮できている選手はオヤルサバルだけだ。実際、久保が1得点・1アシストを記録したラ・リーガ第16節ビジャレアル戦(3-0)以降、直近のジローナ戦までの公式戦11試合で、2点差以上の勝利はわずか1回しかないのだ。
とりわけセンターフォワードが機能していないことが、アルグアシル監督の頭を悩ませている。ウマル・サディクは爆発力こそあるが安定感を欠き、開幕前からの怪我で出遅れたアンドレ・シウバは徐々に調子を上げているものの、まだ本領発揮には至っていない。そしてカルロス・フェルナンデスは右膝半月板損傷の手術を余儀なくされ、今後2カ月間の欠場が予想されている。
この3人はラ・リーガで計17試合に先発出場しているが、わずか4ゴール(サディクとC・フェルナンデスが2得点ずつ、A・シウバは無得点)と、CLを戦うチームのストライカーとしては非常に物足りない。
日本とマリは涙を流し、ラ・レアルは笑みを
得点力不足解消へ、1月に獲得した快足FWベッカー。早速ゴールを決めるなど久保との共闘が楽しみだが、ジローナ戦で痛めたハムストリングの状態が気掛かりだ 【Photo by Juan Manuel Serrano Arce/Getty Images】
ニースに移籍金1000万ユーロ(約16億円)+出来高でモハメド=アリ・チョーを売却する一方で、スリナム代表FWのベッカーを移籍金300万ユーロ(約4億6500万円)でウニオン・ベルリンから獲得。ブンデスリーガ歴代3位となる時速36.57kmを記録したスピードスターは、デビュー戦となった国王杯のセルタ戦でいきなりゴールを決め、サポーターに希望を与えている。
ジローナ戦で痛めた右足ハムストリングの状態が気になるが、前線の複数ポジションをこなせるポリバレント性も持ち合わせるベッカーだけに、久保のバックアッパーとしてはもちろん、久保との共演も十分に可能だろう。
さらに、21節のセルタ戦で今季絶望の大怪我を負った左サイドバックのアイエン・ムニョスの代役として、アトレティコではサムエウ・リーノやロドリゴ・リケルメの陰に隠れ、今季ほとんど出番のなかったハビ・ガランをレンタルで獲得。ティアニーの負傷によって加入後すぐにデビューを飾ったが、左サイドから積極的にクロスを入れ、高評価を得ている。
また、トラオレの不在とオドリオソラの怪我で人材難となった右サイドバックでは、トップチームデビューを果たしたばかりのカンテラーノ(下部組織出身者)、21歳のジョン・アランブルが上々のパフォーマンスを披露。これも後半戦の数少ない明るいニュースの1つだろう。
2月14日にはCLのラウンド16第1レグで、強豪パリ・サンジェルマンとの対戦が控えている。この先、ソシエダにはさらに過酷なスケジュールが待ち受けるが、そんな中での久保とトラオレのホットラインの復活は、チームにとって何よりも心強いはずだ。
日本代表とマリ代表の敗退を受け、現地紙『エル・ディアリオ・バスコ』は「日本とマリは涙を流し、ラ・レアルは笑みを見せた」と報じ、ストレートに主力2人の戦列復帰を喜んでいる。
「サン・セバスティアンに久保が戻ってきた──」
ここまでラ・リーガで上位につけ、CLと国王杯でも勝ち残ってはいるものの、お世辞にも良い状態とは言えないチームの救世主として、サポーターの久保への期待は以前にも増して高まっている。
前半戦のMVPとも言えるエースが帰還したソシエダが、今後いかにして負傷者続出の苦境を乗り越えていくのか、その戦いぶりに注目が集まる。
(企画・編集/YOJI-GEN)