Jリーグを経由せずの海外挑戦は是か非か 前興國高監督が明かす高校→海外の舞台裏
2023年6月で監督を退任した内野氏だが、昨夏にはチームのエースで10番を背負っていた宮原勇太(ポーランド1部グールニク・ザブジェ所属)の高校卒業を待たずしての海外挑戦もサポートしてきた。
内野氏に監督退任についての思いや、Jリーグを経由せずに海外にプレーの場を求めた宮原のケースにどんな背景があったのかを聞いた。
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監督交代は、シンプルに残念な気持ち
昨年6月に興國高の監督を退いた内野智章氏 【栗原正夫】
内野氏は現在も同校の保健体育の教員を務めているが、退任については何を思っているのか。
「残念ではありましたが、シンプルに結果が出なかったので仕方がないです。もちろん年間を通じてチーム作りをしていくなか、まだシーズンの半分にも満たない6月の段階で評価されてしまったことについては思うこともあります。個人的には、約19年かけてようやくチームの土台ができて、ここから全国の舞台で結果を出せるかなと考えていた部分もありましたので。ただ、学校にも考えがあってのことでしょうし、判断については尊重しています。
GMという立場でどうサッカー部と関わっているか? そこは僕と一緒にサッカーをやりたくて興國高に来てくれた生徒(選手)には方向性が変わってしまい申し訳ない思いもありますが、新監督やスタッフと話し合ったうえで現場とは距離を置いています」
高校卒業を前に海外挑戦を決めた宮原
高校卒業を待たずに海外挑戦を決めた宮原勇太。左は元ドイツ代表のポドルスキ 【内野氏提供】
元々、宮原は海外志向が強く、高校在学中からドイツやオランダ、ベルギーなどのクラブのトライアルに参加していたというが、内野氏はどんな思いで送り出したのか。
「宮原は興國高に来る段階で、10数チームのJクラブユースから誘いがある選手でした。高校入学後も1年時から、トップチームでやっていましたし、彼の成長を考えればよりレベルの高い環境が必要だったと思います。
学校の許可も出ていましたし、何より彼自身が海外でプレーしたいという強い希望を持っていましたので『選手権の予選がまだだから』とか周りの都合で引き留めるのは違うと考えていました。彼は高卒で即海外に行きたいとずっと言っていましたし、1度Jクラブと契約をしてしまうと、違約金などが発生してしまい移籍のハードルが上がってしまいます。海外へ行くことを考えれば、高校からの方が行きやすいのは間違いありません」
そして、内野氏は海外行きは「必ずしも早い方がいい」とは思わないとしながらも、実力があれば早く海を渡ることも選択肢の1つだとする。
「海外に行けば言葉の壁や生活文化も違いますし、早く行った方がいいかどうかは選手によると思います。ただ、宮原の代理人によれば、事前にポーランドでの生活環境や行ったことによるリスクなどを本人に説明したところ、宮原にまったく迷いはなかったようです。普通なら『少し考えます』ってところを、『行きたい』の一点張り。宮原はそういうキャラですし、僕もそういう性格は海外向きだと思いました」
ちなみに宮原のポーランド行きについては、現在グールニク・ザブジェでプレーし、17年から19年にかけてヴィッセル神戸でもプレーするなど日本サッカーの事情を理解している元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキのあと押しもあったそうだ。
「宮原の選手としてのクオリティを信頼している部分もありましたし、ポドルスキ選手が宮原をクラブに紹介してくれたという事情もありました。それに、グールニク・ザブジェはU-19やU-21などのチームも持っていて、試合に出られる環境もあると聞きました。最近は高卒でJクラブに行けても、そこで紅白戦にも出られず苦しんでいる選手も多く見てきましたからね」