三笘薫、守田英正、上田綺世のたどったプロへの道は……多様化するユース年代の進路先
第102回高校サッカー選手権で優勝した青森山田。選手たちのたどってきた道、進路は人それぞれだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
プロへの道が多岐にわたる日本特有の環境
高体連の頂点を決める大会、第102回全国高校サッカー選手権が1月8日に幕を閉じた。ユース年代の進路については、冒頭のテーマで議論されることが多いが、結論から言うと高体連とJユースのどちらかがいいかは選手個人の判断に委ねられるものだ。その選手の考え方、しいては保護者を含めた当事者の状況など複合的な要因によって、どちらがベストかは変化する。重要なのは双方のメリット、デメリットの両面を理解しながら、自己選択をすることにある。
高体連、Jユース、さらに街クラブにまで高校年代の進路選択の幅があり、その3年間の先にもプロに進むだけではなく、大学経由という選択肢もある日本は、多様化という面では非常に恵まれていると言っていい。
もちろんヨーロッパなどはそれぞれの年代、レベルに合ったリーグ戦が整備されており、すべてではないが、各プロクラブが育成環境も整えて子供たちにアプローチをしている。その環境は見習うべきではあるが、もし日本でそれを行う場合は小学校、中学校、高校、そして大学という日本に根付いた「6-3-3-4制」の教育制度そのものを変革しなければならない。この作業はサッカー界だけでどうにかなる話ではないからこそ、この枠組みの中でも多様化が進んでいるサッカー界の特性をもっと活用してくべきではないだろうか。
現場に目を向けると、サッカーの実力を測る物差しが1つではないことで、中学年代で評価されなかったり、成長曲線がこなかったりした選手が、自分の希望ではないにせよ、別の環境で才能が開花することもある。また、高校年代に花開かなかった選手が、大学の4年間で一気に成長するケースもある。さらには高校年代に花が咲いたとしても、もう一度自分を人間的にもじっくりと磨きたいという考えから、大学に進学してより大きな選手となってプロの世界に行くケースもある。ここまでプロへの道が多岐にわたる環境は、世界を見渡してもそうないだろう。
だからこそ、この稀有とも言うべき環境をさらに発展させていくためには、「どっちがいいか、悪いか」という0、100の極端な考えは持つべきではないだろう。実際、中学・高校年代の選手や保護者を見ても、多くが「どこに行けば自分(子供)にとってベストか」をきちんと考えて、進路を選択している時代になっていると言える。
中学から高校への「10のパターン」
①Jクラブのジュニアユースからユースへ昇格
②Jクラブのジュニアユースからユースに昇格できず高体連へ進学
③Jクラブのジュニアユースからユースに昇格できたが高体連へ進学
④街クラブのジュニアユースでプレーし、そのままユースへ昇格
⑤街クラブのジュニアユースでプレーし、Jユース/高体連へ
⑥中高一貫教育の中学校からエスカレーターで高校へ
⑦中高一貫教育の中学校から別のJユース/高体連へ
⑧(下部組織を持つ高校の場合)下部組織から高校へ
⑨(下部組織を持つ高校の場合)下部組織から別の高校・Jユースへ
⑩中体連からJユース/高体連へ
もっと細かくすればこれ以外のケースもあるが、ここではこの10パターンを挙げたい。要するに今の子供たちは中学生に入る段階で、将来自らが進むべき道を考えなければならない状況にある。例えば③や⑦、⑨の場合はその選択の際に多くの労力が生じるリスクもある。
小学生の段階で「自分はこのクラブ(学校)で中学、高校と成長していきたい」「この高校に行ってサッカーをしたいから、このクラブに入りたい」など、中長期のビジョンが必要になってくるのだ。
もちろん小学年代からこうした大人の考え方をするのは難しく、衝動的な動機や強烈な憧れが選択に大きな影響を及ぼす。だからこそ、いざ中学、高校時代を過ごしたときに考え方が変わったり、小学時代に描けなかったビジョンが描けるようになったときに、きちんと選択肢を持って自分で考えて決断することが重要になる。それを可能にするのが、今の日本の多様化した進路と言えよう。