森保ジャパン、5度目のアジアカップ優勝の勝算は?

森保一監督が描く日本代表2026年へのロードマップ「“今を戦う”と“W杯優勝”の両輪を回していきたい」

竹内達也

W杯優勝は代表チームの力だけでは難しい。それゆえ、国民全体にサッカーを見る輪が広がっていってほしいと森保監督は願う 【写真:飯尾篤史】

 元日に行われたタイ代表戦に5-0と勝利し、国際Aマッチの連勝記録を9に伸ばした日本代表。いよいよ1月14日には5度目のアジア王者を目指す戦いの火蓋が切って落とされる。そこでAFCアジアカップ・カタール2023の開幕を前に、多彩な切り口で森保一監督に迫る。インタビュー後編ではチーム編成やW杯での戦い方、選手選考やロードマップについて訊いた。

「固定したメンバーで戦っている」というフェイク

「固定したメンバー」との指摘に首を傾げる森保監督。例えば、9月12日に行われたトルコ戦では3日前のドイツ戦からスタメン10人を入れ替えて戦った 【Photo by Isosport/MB Media/Getty Images】

——ここからは編成についてお聞かせください。これまでの招集人数はカタールワールドカップ(W杯)までの5年間が122人、W杯後からアジアカップまでの1年間で51人(合流できなかった選手も含む)でした。世間で言われているよりも多くの選手を招集している印象です。これくらいは呼ぼうといった展望があったんでしょうか?

 特に数値目標はないですね。でも、たくさんの選手を招集しているということはもっと言ってください(笑)。エゴサーチをしているわけじゃないですけど、「固定したメンバーで戦っている」っていう説が一人歩きしていませんか(笑)。

——確かに、そう捉えている人はいると思います。

 ただ、私としては「多くの選手を招集している」ということを言いたいのではなく、この5年間の大きな成果の一つに“ベストメンバー”という見方をされなくなったことがあると思っています。もちろんコアとなる選手はいますし、活躍している選手、力を持っている選手、広く名前を知られている選手はいますが、負傷やコンディション不良、クラブ事情などで、そうした選手たちを起用できないこともありますよね。だから、誰が試合に出てもチーム力が落ちないようなチーム作りをしていかなければいけない。

 次のW杯ではコアの選手たちだけで決勝までの8試合を戦い抜くのは難しいと思います。しかもFIFAランクで我々よりも上の相手を下していって、決勝でも勝つことを考えているわけです。選手たちには8試合を戦い抜く力を培ってほしいですが、一方で、選手を入れ替えながら戦っていくというのは、自然なことだと思っています。理想は同等の力を持った3チームくらいを作ることなので、今いろんなチャレンジをさせてもらっているところです。

——ターンオーバーをしながら戦うことが前提にあると。

 カタールW杯でも同じ思いでやっていました。結果としてベスト16で敗れましたけど、決勝まで7試合を戦うつもりでいました。W杯前の(9月に行われた)デュッセルドルフでの試合(アメリカ戦とエクアドル戦)でも、完全にターンオーバーしたんですよね。あれも単純に選手を試したいというだけではなく、「W杯ではこうやって勝っていくんだ」ということを選手たちに示す意図がありました。

 実際にW杯ではドイツ戦からコスタリカ戦に向けて5人を入れ替えました。最終的には後ろはそのままにして、前にフレッシュな選手を使うということで5人だけにとどめたわけですが、もともと全員入れ替えることも考えていました。

 ターンオーバーするためには、チーム作りの過程で多くの選手の経験値を上げなければいけない。チームの底上げをする、レベルアップをするという観点でも、より多くの選手を見たいと思っています。なので、最初の質問で言うと、数値目標は決めていませんが、自チームで存在感を放ち、代表選手としての可能性を示している選手は、できる限り呼びたいです。そこで経験してもらって、さらなる刺激を受けて、所属チームに戻ってからもレベルアップしてもらって、我々の戦力になっていってほしいと思っています。なので、可能性のある選手は限りなく見たいですね(笑)。

「久保が見たい」という気持ちはわかるけれど…

リーガ、CL、代表戦と過密日程を強いられている久保に対し、森保監督は「コントロールしながら起用している」と話す 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

——ラージグループとしての取り組みは、日本のサッカーファンにも徐々に伝わってきていると感じます。コアな選手のコンディション調整に注目が集まる機会が増えたのも、そうした理由だと思います。10月シリーズで久保建英選手が長距離移動の疲労に言及したうえで、「そういうところも踏まえて日本代表を楽しんでほしい」と話したのも、日本のサッカーファンにより深い理解を促しているんだなと感じました。

「久保が見たい」「久保を出せよ」と思う人はたくさんいるでしょうけれど、彼はチャンピオンズリーグの舞台でやっていて、日常のリーガでも戦っていますから、休みながらプレーしないと怪我をしてしまうと思います。

 ただ、ああいった発言はとてもいいですよね。ネガティブじゃないので。彼らは「戦いたくない」なんて言ってないし、そもそも来てくれている。無理なら「辞退させてください」となりますが、彼らはきつい思いをしても、日本のために戦いたい、日本代表として戦いたい、勝って日本代表のサポーターと国民の皆さんに喜んでもらいたいという思いがすごくある。だから、こちらもコントロールしながら起用しています。

——実際に欧州組の連戦は頭を悩ませる部分だと思いますが、負荷のマネジメントはどう捉えていますか? 11月シリーズは1戦目の起用で配慮を感じましたが、何か基準を設けたりしているのでしょうか?

 明確な基準はないですが、一つは見た目の主観的な疲労と、もう一つは何試合に出続けているかというデータ的な疲労ですね。代表戦の前にも自国のリーグ戦があって、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグ、カンファレンスリーグにも出ている選手がいて、代表から帰ってからもリーグ戦やカップ戦が立て続けに控えている場合もありますからね。そうした日程は、こちらも把握しています。

 あとは、可能な限りクラブともやり取りをして、今どういう状態にあるのかを把握しながら判断しています。なので、本当に基準はいろいろですね。もちろん、組み合わせを試したい場合、戦術的に試したい場合、選手自身を試したい場合などもありますから、そうしたことも限られた代表活動の中で選手を入れ替える理由ですね。

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著者プロフィール

1989年生まれ。大分県豊後高田市出身。大学院卒業後、地方紙記者を経て、2017年夏から「ゲキサカ」でサッカー取材をスタートさせた。日々のJリーグ、育成年代取材のほか、18年9月の森保ジャパン発足後から日本代表を担当し、19年のUAEアジアカップ、22年のカタールW杯で現地取材。21年からシャレン!アウォーズ選考委員。VARなど競技規則関連の発信も続けている。

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