森保一監督が描く日本代表2026年へのロードマップ「“今を戦う”と“W杯優勝”の両輪を回していきたい」
経験はさせるが、そこから先は自分次第
19年アジアカップに向けた合宿にトレーニングパートナーとして参加した上田。当時は大学生だったが、この頃から森保監督の期待は高かった 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】
そこは我々だけが見ているわけじゃなくて、「この選手はどうですか」と推薦された選手もいるので、日本サッカー全体の目だと思います(笑)。もちろん、彼らは東京オリンピック世代でしたから、私自身も見させてもらったことはありましたが、でも我々がというより、「こういう目的でトレーニングパートナーをお願いします」と伝えた上で、日本サッカー協会から「育成年代のこの選手はどうか」という提案をいただき、参加してもらっていたので、育成分野の方々の見る目が素晴らしいということだと思います。
——では、今後はどのような形で選手の抜てきを進めていこうと考えていますか。具体的にロードマップを描いているものなのでしょうか?
ロードマップが明確にあるわけではないですね。確かに今の話を聞くと、これからの若い選手たちも良い経験を積んで、A代表まで来てもらって、日本国内はもちろん、世界の舞台でも戦ってほしいし、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントに行く、優勝を争えるようなチームに行ってほしいという思いはあります。
ただ、A代表につながるように期待していますし、そう願っていますけど、そこには競争があるので。経験したことを日常生活の中で積み重ねていき、力をつけて、競争の中で勝ち抜いていってほしいです。若い選手を育成していかなければいけない、日本のトップトップの選手を育成していかなければいけないという思いは持っていますけど、保証はできません。できるだけ経験をしてもらうけど、そこから先は自分でつかみ取っていくもの、勝ち取っていくものなので、そこでの競争をしっかり見ていきたいと思っています。
W杯はいちスポーツ団体の力だけでは優勝できない
カタールW杯でのアルゼンチンやモロッコがそうだったが、W杯で躍進するためには国民やサポーターの後押しが絶対に必要だ 【. Photo by Maja Hitij - FIFA/FIFA via Getty Images】
違いは状況の違いくらいですかね。前回、優勝は逃しましたが、優勝を目標に大会に挑みましたし、その時点での最強チームだと思って選びました。それが最終的にはW杯での戦いにつながっていったと思います。それは今回も同じで、両輪かなと思っていて。
両輪というのは、目の前のアジアカップでの優勝を目指しながら、一方で、2026年のW杯で優勝するという大きな目標を忘れずに今を戦っていくということです。前回大会で優勝を逃した悔しさを糧に今大会で一つひとつ勝っていくだけでなく、高い目標、高い志を持って、先を見据えながらレベルアップしていく、という両輪を回していきたいですね。
――では、森保ジャパンが両輪を回しながら勝ち進んでいく過程を取材したいと思います。
でも、こうしてプロセスを話せるのはいいですね。日本代表なので結果論で語られるのは当然だと思いますし、手のひら返しも当然あると思いますが、批判されるならプロセスを見ている方に批判してもらったほうがうれしいです。そうして日本サッカーを見る輪が広がっていったらなと思います。ヨーロッパとかはそうじゃないですか。日常の中で「これはダメだ」とか、「これがいい」とかいう議論になりますよね。
選手ともこの前話しましたが、W杯優勝って、自分たちが頑張るだけで成し遂げられるような簡単な目標じゃないんですよね。国民が普段からサッカーを見ていて、サッカーを国技だと思っていて、本気で優勝したいという思いが大きなパワーとなるから優勝できる。僕自身、W杯に2回参加させてもらいましたが、いちスポーツ団体の力だけで優勝できる大会じゃないです。アルゼンチンもそうじゃないですか。サポーターが家を売ってまで見に来くるんだって(笑)。だから我々も勝ち上がれば勝ち上がるほど、サポーターの方々がどんどん来てくれるように頑張っていかないと。
——確かにこれまでのW杯ではグループステージを観戦するというファン・サポーターが多かったと思いますが、ベスト8やベスト4に勝ち上がっていくようになったら、そこでもっと多くの人に休みをとってもらわないといけないですからね(笑)。
カタールW杯でベスト4に入ったモロッコがそうでしたよね。カタールから近いということもあったでしょうけど、彼らは勝ち進むにつれて会場をホームに変えていきましたから。サッカーではそういうものがすごく力になる。すぐに文化として定着させるのは難しいですけど、まずはこれまで以上に興味を持ってもらえるようにしていきたい。そして、興味を持ってくださった方と一緒に、文化として定着していけるようにしたいです。そこでは批判があっても構わないです。サッカーの見方はいっぱいあるので、どんどん広げていっていただけたらうれしいです。
(企画・編集/YOJI-GEN)