尚志の安齋と3人のエースストライカー “最後の冬”に挑むJクラブ入り内定の逸材たち
壁を越えて万能アタッカーに変貌した安齋
世代トップクラスの突破力が魅力の安齋。複数のJクラブが争奪戦を繰り広げた今大会最注目のアタッカーが、初優勝を狙う尚志のキーマンだ 【写真:松尾祐希】
そんな逆境にもめげず、成長を続けてきた選手たちの実力は本物だ。可能性は無限大で、この選手権をきっかけに周囲の想像を超えるような飛躍を遂げたとしても不思議ではない。
なかでも今大会で最も期待値が高いのが、尚志の安齋悠人(3年/京都サンガF.C.入団内定)だろう。複数のJクラブが争奪戦を繰り広げ、海外クラブも興味を示していた。左サイドハーフを主戦場とし、自慢のスピードを生かした突破力はこの世代のトップクラス。足元の技術も確かで、ラストパスの精度には目を見張るものがある。
昨年から注目を集めていたタレントだが、中学時代までは無名の存在だった。福島ユナイテッドU-15でのポジションはボランチ。現在のようにドリブルを多用するスタイルではなく、周りを使うタイプのプレーヤーだった。
その後、高校1年の冬にボランチからサイドアタッカーに転向。尚志の仲村浩二監督から「縦にドンドンいけ。仕掛けられる選手になれ」という言葉をもらって徹底的にスキルを磨くと、2年次には東北トップクラスの打開力を有するまでになった。
それでも、最上級生になってしばらくは人知れず悩みを抱えながらプレーしていたという。ある程度のレベルであればドリブルだけで戦えていたが、Jユース勢との試合や世代別代表の戦いでは、今までのスタイルが通用しなくなったからだ。
壁にぶつかった安齋に手を差し伸べたのが、流通経済大柏で本田裕一郎氏(現・国士舘高校テクニカルアドバイザー)の参謀役を務め、2007年度の選手権制覇にも尽力した名伯楽、小室雅弘コーチだった。
「パスがあると、もっとドリブルも生きる」。10月頃にそんなヒントをもらうと、それからは中学時代の“周りを使う感覚”を取り戻す作業に励んだ。とりわけ意識したのが、プレー中の立ち姿。背筋を伸ばしてルックダウンしないよう心掛け、常に視野が確保できる状態をキープした。すると、パスとドリブルの使い分けがスムーズに。万能型のアタッカーに変貌を遂げ、より効果的にボールを運ぶプレーができるようになった。
初優勝を目指す尚志のキーマンとして、安齋は最後の冬にどんなプレーを見せてくれるのか。U-19日本代表でも活躍するアタッカーが、主役の座を虎視眈々と狙っている。
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