尚志の安齋と3人のエースストライカー “最後の冬”に挑むJクラブ入り内定の逸材たち

松尾祐希
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 今回の高校サッカー選手権に出場する選手で、卒業後のJクラブ入りが内定しているのは9名。コロナ禍に見舞われ、高校入学後も難しい時を過ごしてきた世代だが、それでもプロが認めた逸材たちの実力は本物だ。ここでは尚志の安齋悠人、市立船橋の郡司璃来、神村学園の西丸道人、静岡学園の神田奏真という4人のアタッカーをピックアップ。“最後の冬”に挑む彼らのストーリーをお届けする。

壁を越えて万能アタッカーに変貌した安齋

世代トップクラスの突破力が魅力の安齋。複数のJクラブが争奪戦を繰り広げた今大会最注目のアタッカーが、初優勝を狙う尚志のキーマンだ 【写真:松尾祐希】

 今季、2種年代の選手でJクラブと来季の契約を結んだのは51名。うち高体連出身の選手は16名で、今回の選手権には9名のプレーヤーが出場する。例年と比べれば、その数は少ない。中学3年生の時にコロナ禍の影響でセレクションが思うように受けられず、高校入学後も強化の場が失われるなど、難しい時を過ごしてきたからだ。

 そんな逆境にもめげず、成長を続けてきた選手たちの実力は本物だ。可能性は無限大で、この選手権をきっかけに周囲の想像を超えるような飛躍を遂げたとしても不思議ではない。

 なかでも今大会で最も期待値が高いのが、尚志の安齋悠人(3年/京都サンガF.C.入団内定)だろう。複数のJクラブが争奪戦を繰り広げ、海外クラブも興味を示していた。左サイドハーフを主戦場とし、自慢のスピードを生かした突破力はこの世代のトップクラス。足元の技術も確かで、ラストパスの精度には目を見張るものがある。

 昨年から注目を集めていたタレントだが、中学時代までは無名の存在だった。福島ユナイテッドU-15でのポジションはボランチ。現在のようにドリブルを多用するスタイルではなく、周りを使うタイプのプレーヤーだった。

 その後、高校1年の冬にボランチからサイドアタッカーに転向。尚志の仲村浩二監督から「縦にドンドンいけ。仕掛けられる選手になれ」という言葉をもらって徹底的にスキルを磨くと、2年次には東北トップクラスの打開力を有するまでになった。

 それでも、最上級生になってしばらくは人知れず悩みを抱えながらプレーしていたという。ある程度のレベルであればドリブルだけで戦えていたが、Jユース勢との試合や世代別代表の戦いでは、今までのスタイルが通用しなくなったからだ。

 壁にぶつかった安齋に手を差し伸べたのが、流通経済大柏で本田裕一郎氏(現・国士舘高校テクニカルアドバイザー)の参謀役を務め、2007年度の選手権制覇にも尽力した名伯楽、小室雅弘コーチだった。

「パスがあると、もっとドリブルも生きる」。10月頃にそんなヒントをもらうと、それからは中学時代の“周りを使う感覚”を取り戻す作業に励んだ。とりわけ意識したのが、プレー中の立ち姿。背筋を伸ばしてルックダウンしないよう心掛け、常に視野が確保できる状態をキープした。すると、パスとドリブルの使い分けがスムーズに。万能型のアタッカーに変貌を遂げ、より効果的にボールを運ぶプレーができるようになった。

 初優勝を目指す尚志のキーマンとして、安齋は最後の冬にどんなプレーを見せてくれるのか。U-19日本代表でも活躍するアタッカーが、主役の座を虎視眈々と狙っている。
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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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