サントリーサンバーズが史上初の快挙 「日本代表だけじゃない」セッター大宅が示した確かな結果

田中夕子

世界クラブ選手権で日本チームとして初のメダルを獲得したサントリーサンバーズ 【(C)SUNTORY SUNBIRDS】

 日本バレーボール界初の快挙だ。

 12月6日から10日までインドで開催された世界クラブ選手権に、アジア代表として出場したサントリーサンバーズが日本チームとして初の銅メダルを獲得した。帰国後、18日にはホームタウンの箕面市を表敬訪問し、上島一彦市長からの歓迎を受けた。

 チームを代表して、栗原圭介GMと山村宏太監督、主将の大宅真樹、小野寺太志、デ・アルマス・アラインが出席。日本代表としても10月のオリンピック予選でパリ五輪出場を決め、今夏のネーションズリーグ、9月のアジア選手権に続くメダル獲得に、日本代表のミドルブロッカーとしても活躍する小野寺太志は「順位は満足していない」と言いながらも「クラブチームとして日本勢初のメダル、歴史に名を残せたことは嬉しく思います」と笑顔を見せた。

 世界クラブ選手権で3位。繰り返すようだが、これは紛れもなく素晴らしい快挙だ。

 ところが、もしも他競技ならば試合の中継を含め、もっと多くの報道や露出があってもおかしくない。だが日本国内を見れば、バレーボールが好きな人には伝わっても、なかなか広く伝わっていないというのも現状ではある。

 なぜか。そもそも世界クラブ選手権という大会自体がどんな大会で、どんなプロセスを踏んで出場するか、ということがやや不明瞭であるのも一因だ。

  まず背景を説明すると、今回の世界クラブにサントリーサンバーズが出場したのは、昨年(2021-22シーズン)のVリーグを制したことで、翌年のアジアクラブ選手権への出場権を獲得したため。そして今年5月にバーレーンで開催されたアジアクラブ選手権を制し、アジア代表として世界クラブ選手権へとつながった。

 日本代表の活躍だけでなく、クラブでも日本が世界に強さをアピールする。Vリーグという観点で見れば、「V.LEAGUE REBORN」を掲げ、来シーズン、2024-25シーズンからはSVリーグを頂点に、世界最高峰リーグを目指している。

快挙の裏でクラブか代表、どちらを選ぶか難しい側面も…

サンバーズのメンバー、スタッフが箕面市の上島市長らに銅メダルを報告 【(C)SUNTORY SUNBIRDS】

 今回サントリーサンバーズが残した3位という結果は、日本のバレーボールが世界に通用する力を持っていると世界に示す、十分すぎる形になったのは間違いない。世界を知る小野寺はこうも言う。

「代表チームで日本と対戦して負けた選手も(世界クラブ選手権には)多くいたので、少なからず“日本のバレーは強い”“嫌だな”という感じもありました。クラブ選手権でも高いレベルを維持しながら戦うことができたので、より日本に対して嫌だと思わせる、やりづらさを植え付けることができたのは、日本代表にとってもプラスな要素になると思います」

 代表でもクラブでも、世界の頂点をかけた争いを繰り広げ、「日本のバレーボールは強い」と知らしめる。まさに世界最高峰へと続く道のりである一方、Vリーグの優勝チームが毎年この成績を残し続けていけるかと言えば、難しい問題も生じる。現役時代に日本代表でも活躍した山村監督が言った。

「アジアクラブ選手権が行われる時期は、各国の代表シーズンがスタートする時期と重なります。選手のキャリアを考えれば、クラブとしてアジア制覇、世界クラブで勝負したいと思う一方、当然日本代表で戦うチャンスがあるならそこにフォーカスしたい選手もいる。僕が現役の頃にもアジアクラブ選手権があり、サンバーズとして出場権を得たこともありますが、僕は代表の活動に集中していたので、(アジアクラブ選手権には)出場したことがありません。クラブとして世界を目指す、でも選手個人としてはまた別の世界もある。

 今、自分が監督という立場になっても同じです。監督としてクラブを勝たせたい、と思うけれど、選手のキャリアも大事にしたい。すごく難しいですよね。今回、サンバーズは代表選手として国際大会に出場した選手がいなかったので、アジアクラブ選手権をベストメンバーで戦えたことも偶然の産物だったのかもしれない。そういった背景も含め、今回の成績がアジアクラブ選手権、世界クラブ選手権という大会自体を知っていただく機会になったのであれば、一石を投じることはできたのかな、と思いますし、興味を持って下さる方が増えるのは、すごくいいことでありがたいことであるのは間違いありません」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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