【バレー/Vリーグ】彼らがリーグに聞きたいこと。「結局、REBORNって何ですか?」

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V.LEAGUE REBORN対談 第1回 -サントリーサンバーズ編-

V.LEAGUE REBORNについて選手はどのように受け止め、感じ、考えているのか。どのような意見や疑問を持っているのか。選手と大河バイスチェアマンが本音でディスカッションする対談企画。
記念すべき初回はサントリーサンバーズの練習拠点(大阪府箕面市)にお邪魔し、大宅真樹選手・藤中謙也選手にお話を伺いました。

【©JVL】

大河 大宅選手、藤中選手、どちらもプロ選手として活動されています。最初からプロ契約だったのでしょうか?

大宅 僕は2年目からです。

藤中 僕も3年目からプロ契約をしました。

大河 以前僕はJリーグで常務理事、その後バスケットボールのBリーグでチェアマンを務めました。バスケットボールも以前は今のVリーグと同じ、アマチュアリーグでしたが、変遷を経てプロ化してBリーグになり、選手の年俸は平均して3倍ぐらい上がっています。1億円プレーヤーも出てきました。

縁あって昨年9月にVリーグの副会長になり、改めてもう一度、バレーボールのVリーグを新しい軌道に乗せて行こうよ、とV.LEAGUE REBORN(以下REBORN)を発表しました。そこでは2030年に世界最高峰リーグを目指すこと、そのために強く広く社会とつなぐことをミッションとして掲げていこう、と動き始めたのですが、お2人はまずREBORNをご存じでしょうか。

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藤中 今まで何度か名称が変わり、今は「Vリーグ」として運営されていますが、名前だけが変わっている印象が強く、REBORNに関してもあまりよくわからない、というのが正直な意見です。これからどうなるか。期待もありますが、どう変わるのかということが僕たち選手にはほとんど伝わってこないというのも現状です。

運営やお金の面でうまく行くのかな、という不安や疑問もありますし、ライセンスの条件も拝見しましたが、現時点では選手として期待もありつつ、どうなるのかな、というのが正直な感想です。

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大宅 プロ選手からしたら、すごくいいチャレンジだと思います。でも今、社員選手として頑張っている人たちからすると、今後Vリーグもプロ化するのではないか、と考えるだろうし、会社を辞めて全員プロにならなければならないのか。選手がどうなるか、ということがハッキリ見えないので不安もあると思います。

会社を辞めるのは勇気がいるし、人生もかかっている。今現時点でもプロになっている選手は、バレー1本で本気でやろうと思っているけれど、セカンドキャリアも見据えなければならない。プロ選手は増えてきたけれどプロチームはまだまだ圧倒的に少ない。そこでどうなるのか、という不安もあります。

僕個人としては、外国人選手枠も増えると聞いたので、それはすごく楽しみです。僕も海外リーグに挑戦したいと思っているので、いろいろな選手と戦えるのは楽しみです。ただ、ひねくれた見方をするとお金があって、いい選手を集めるチームが勝つリーグになるのかな、とも思う。そういうリーグにははらないでほしいな、という思いもあります。

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大河 よくわかりました。おっしゃる通り、これまでは「リーグの名前は変わったけれど、中身が変わったかわからない」という状況が続いてきました。その中で今回お伝えしているのは、プロかアマかというのはどちらでもいいということなんです。

大きく分けるとプロかアマかというのは2つあって、1つは選手がプロかアマかという選手個人の話。そして2つ目はプロのバレーボールとしての会社をつくるかつくらないかということです。

東京グレートベアーズやヴォレアス北海道のように現時点でプロ化しているクラブもあれば、サントリーサンバーズさんのように将来的にはプロを検討しながらもまだ完全に法人化はしていないクラブもある。どちらも混在しながら、ホーム&アウェイを徹底して、もっとバレーボール、Vリーグを盛り上げて行こうよ、というのがREBORNです。

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大河 サッカーやバスケットボール、同じバレーボールでも海外リーグと比べて日本のVリーグは地域との根づきがまだまだ足りていないな、というのが私の印象です。

たとえば大阪という土地は阪神ファンが多くて、ガンバ大阪やセレッソ大阪を応援する文化はありますよね。同じように、サントリーサンバーズを応援する文化、世界観をつくって行きたい。そこに外国籍選手を増やすことで、たとえば今イタリアにいる石川祐希選手のように、海外で揉まれて自分を鍛える。そこで生き残った選手が真の日本代表として戦っていく。そういう環境をつくりたいと思っています。

まだまだバレーボールは地域やクラブにつくというよりも、選手個人につくファンが多い、というのが僕の印象です。

藤中 おっしゃる通り、コート付近はいつも来て下さるファンの方がいらっしゃることが多いので、たとえば東京で試合があっても同じように来て下さる。それもありがたいことですが、大阪のサンバーズ、箕面にあるサンバーズを応援してくれる地元の方々という客層にどう切り替えていけるか。そのために僕ら選手ができることは何だろう、と最近特に考えるようになりました。

僕個人としては、やはりここ大阪、箕面のファンをつけたい思いはあるので、どうやっていけばいいのか、どうすれば箕面の人たちが来てくれるのかな、という思いはあります。

大河 チームの戦略もあるので箕面のほうがいいかもしれないし、大阪のほうがいいかもしれない。地域に選手が出て行って活動したりすることはあるんですか?

藤中 家庭婦人対象のバレー教室、クリニックなどを実施しています。

大河 喜ばれる?

大宅 いい感じだと僕は受け取っています。

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大河 たとえばサッカーの場合は各クラブがクラブハウスを持っていて、そこに一般のファンも出入りできるようになっています。公開練習を見られたり、ちょっとしたカフェもあるのでお茶が飲めたり、メディアにもオープンにしている。プラスして、地域のお祭りへ参加したり、クラブの社長が講演をするなど地域の方々に知ってもらう活動をしています。Bリーグもそうですね。

大宅さんが出かけて行ったら人気者になるんじゃないですか?(笑)。でも冗談ではなく、プロの持っている価値ってそういうものだと思うんですよ。

大宅 よくも悪くも自由というか、自分の売り方というのがまだわかっていないので。たとえば個人スポンサーをつけることもそうだし、そういう活動も今後やっていきたいという思いもあります。ただ、個人スポンサーのつけ方がわからないっていう状況です。

大河 他の競技の選手とコミュニケーションをとったりすることはありますか?

大宅 それが僕自身はゼロなんです。

大河 それがあるといいですよね。サントリーさんはラグビーもあるし、大阪にはガンバもセレッソもエベッサも阪神タイガースもある。

大宅 JT広島の選手がカープの選手と接点があると聞いて、僕らもバスケットボールのエベッサなど、他競技との交流をスタートさせたいと思いましたし、大事だと思います。

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大河 最初にBリーグができた時、バレー関係者の方々からは「バスケができたおかげで体育館が取りづらくなった」と言われたんです。でもね、プロ野球には年間2600万人ぐらい観客が来ます。JリーグもJ1からJ3まで合わせて1000試合で1100万人ぐらい。Bリーグも昨年は330~340万人ほどでしたが、Vリーグは50万人。プロ野球とJリーグを見る2600万人と1100万人がバレーボール、バスケットボールというアリーナスポーツを見に来させるような環境づくりをすればいいと思うんです。

人が増えれば当然、行政も「アリーナが必要だよね」と考えて動き出す。バスケットボールとバレーボールはライバルではなく、同じ室内競技同士、交流してファンを開拓すべきだと思いますね。

先ほど大宅選手がお話しされた個人スポンサーに関しても、サッカーの浦和レッズは看板やユニフォームで100~200社のスポンサーがあり、開幕前にキックオフパーティーをするのですが、その時に若手選手も自分のクラブにどういうスポンサーがいて、どんな会社かと覚えなさい、と。スポンサー企業からすれば、選手から「〇〇株式会社の〇さんお世話になります」と言われるだけで虜になる可能性があるし、チーム以外にも個人スポンサーになる可能性もあります。

お金を払う方からすれば、サントリーさんという大企業が母体であれば、「それほど大きな会社にどうしてお金を払わなければならないんだ」と考えますよね。パナソニックも同じです。でもそれが「ガンバ大阪というサッカーのクラブならば応援します」とスポンサーになることもある。

それがプロかアマかの違いであり、Vリーグももっと多くの人に認められ、盛んになるのではないか、と思うのですが、お2人から、もっとここを改善したほうがいいと思うところはありますか。

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大宅 知名度を上げるという意味で言えば、やっぱりもっとメディアに露出していくのが一番早いのではないかと思っています。

たとえば日本代表でも、ネーションズリーグであれだけ結果を出しても地上波では放送されていなかったので、Vリーグに落とし込めない。ツイッターでトレンドに入ったり、見ていた方の数は多いと思うのですが、そこからどれだけVリーグに根付くかは保証できないのが現状です。

Vリーグを見たいと思っても、V.TVやGAORA、自分で探していかないと見方すらわからないので、そこをどうにかできないのかな、という思いはあります。もちろん全試合を取り上げてもらうのは難しいと思いますが、せめてファイナルだけでも放映してもらえれば、もっとお客さんが増えるのではないか、という思いはあります。

藤中 僕も同じです。V.TVでしか見られない状況では、そもそもVリーグを知らない、バレーボールのリーグがあることすら知らない人がわざわざ登録して見ることはまずありません。テレビで見て、知ってもらうのが一番効果は大きいですよね。

僕も以前、バスケットボールはそれほど詳しくないけれどテレビをつけたらファイナルが中継されていたので、見てみよう、と思って見たら面白かった、という経験があります。行きついた先に見る策があるのではなく、フラっとテレビをつけたらやっていたから見てみよう、というのが理想的ですよね。

選手の立場としては、観客数も寂しさを感じることがあります。まずは多くの方に知っていただくことが観客数、バレー人気に直結するものと思いますし、昨シーズンの東京グレートベアーズさんの有明アリーナでの試合は過去最高の集客をされた。しかもその試合で勝ったことで、バレーボールは面白い、と感じて下さった方もたくさんいたはずで、その効果が大きいな、と思います。

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大河 観客数ももちろんですが、試合開始前の演出も非常に工夫していて、ワクワクドキドキするもので、藤中さんがおっしゃる通り、試合自体もフルセットの熱戦で大変満足するものでした。

お2人がおっしゃるように、テレビの効果は未だありますし、何より満員で熱気に包まれる決勝のほうが注目するし、価値も上がりますよね。どれだけ収入を稼ぐか、プロでもアマでもどちらでもいいですが、集客にはこだわりを持ってほしい。スカスカの会場で行われる試合を、テレビがコンテンツとして取り上げるかというと正直難しい。1人でも多くの方に来てもらうためにはホーム&アウェイでチームを応援してもらう文化をつくることが大事だし、ホームアリーナが大切です。

実際にバスケットボールの琉球ゴールデンキングスは1万人のアリーナができて、集客は倍になりました。こういうチームが出てくるとBリーグ全体が「うちも負けないぞ」と刺激になりますし、バレーボールも同様のことはできるはず。サントリーサンバーズさんには非常に期待しています。

大宅 いろいろな取り組みができるといいですよね。昨シーズンの東京グレートベアーズの試合ではユーチューバーも参加していて、面白そうだな、と思いました。2セット目と3セット目の間にライブをしたり、まだまだできることはあるんじゃないかな、と思います。

大河 バスケットボールでは親子でドリブルリレーをしたり、フリースロー大会もしています。

大宅 コートに降りて来られるというのはいいですね。

大河 何が正解というのはないけれど、いろんな競技を見て参考にしていけるといいですね。見に来る方々はスポーツに限らず、映画や他の娯楽がたくさんある中で「バレーボールを見よう」と選択してくれているのだから、楽しんでいただくのは大前提。見に来た立場としては、高いお金を払っていい席にいるのに、社員の方が座っていたり、関係者席に向けてだけ選手が手を振っていたら興ざめするし、ファンは増えないですよね。

もっと1人1人ができることがあるはずです。観客が増えて、グッズも売れて、人気チームになればそれだけ選手の年俸も上がるはずです。それが事業化のメリットであり、成功例を見ることで「自分たちもチケットやグッズをたくさん売っていこう」と考えられるようになれば成功だと僕は思っています。

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大河 私ばかり話してしまいましたが(笑)、少しは理解していただけましたか?

大宅 はい。かなりいろいろなことがわかりました。

藤中 今日直接お話をうかがえただけでも知らないことが多いというのをわかったので、お話をうかがえてよかったです。今年のリーグからマインドが自分の中でもちょっと変わったかなと。

大河 選手のほうから「もっとお客さんを入れるために何をしますか」と訴えかけていくようになれば変わっていくかもしれないですね。

大宅 今まで通りではたとえリーグが変わっても一緒だと思うので、選手側も何か変えていかないと、と思いました。

大河 それが今日お話しできた中で一番大事なことだと思うし、事務局の中でも言っているんです。毎年同じことをしているだけでは、価値は10%ずつ減っていく。だから絶対に変わろう、と。その気持ちがどれだけバレーボールの関係者の中で大きくなるか。ポテンシャルは十分だから。

大宅さんも大阪を歩くと人が集まりすぎて危ないというぐらい有名人になってほしいですね(笑)

大宅 なりたいです(笑)。歩いても歩いても、なかなか声をかけられないので(笑)

大河 人間は見られれば見られるほどオーラが出ますからね。まずは自分たちからどうやって変わって行けるか。そしてたくさんの人に見に来てもらうこと。そこが軸ですね。スポーツの価値はたくさんの人に見て感動してもらうことですから、見に来ていただけなければ伝わらない。

選手の皆さんにもREBORNを正しく理解していただいて、自分たちも成長できて大きくなれるように引っ張って行ってもらう。そんな風になってくれると僕としては嬉しいです。

藤中 このような機会も新鮮で勉強になりました。ありがとうございました。

大河 こちらこそありがとうございました。また引き続きこういう機会を持たせて下さい。変わりましょう。変わっていきましょう。

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