大竹耕太郎「阪神でうれしかった」 現役ドラフト舞台裏から飛躍の1年を振り返る

小西亮(Full-Count)

12月8日にスポーツナビのYouTubeで生配信された「袴田彩会の野球を語らナイト!」に、阪神・大竹耕太郎投手がゲスト出演。昨年の現役ドラフト当日のエピソードや今シーズンの振り返りなど、配信前にも話を聞いた 【撮影:和田八束】

 誰もが手探りだった新制度に、ひとつの正解を示した。昨オフに初めて実施された現役ドラフトで、ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手。2022年までの5年間で通算10勝だった左腕は、新天地で12勝2敗、防御率2.26と輝きを放った。18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一に貢献。周囲は「覚醒」や「ブレーク」の象徴として見るが、自身は「能力としては何も変わっていない」と言い切る。プロ人生の転換点となった1年を振り返ってもらった。

移籍を確信後「料理の味の記憶ない」

昨年の現役ドラフトの舞台裏を笑顔で振り返る大竹耕太郎。この2日後には年俸大幅アップで契約更改を行い、結婚も発表。昨オフから一転、充実したオフシーズンを過ごしている 【撮影:和田八束】

――本日(12月8日)、第2回の現役ドラフトが開催されました。1年前にご自身が指名された日のことはよく覚えていますか?

 その時は東京にいたんです。電話がかかってきたのは、昼過ぎの(午後)2時か2時半くらいだったと思います。実はちょうど、ヤクルトの石川(雅規)さんと何人かでランチをしていたので、そのことを(ソフトバンクの球団関係者に)伝えたら「じゃあ終わったらかけ直して」と言われて。

――すごいタイミングでの着電でしたね。しかも電話の内容を最初は聞かなかったんですね。

 でも、察するじゃないですか。その日に現役ドラフトをやっていることは知っていたので。そこから料理の味の記憶が全然ないです(苦笑)。

――石川投手の反応は?

 石川さんとはその日が初対面でした。高校時代(熊本・済々黌高)にバッテリーを組んでいた先輩がテレビ局でヤクルト担当をしていた縁で、会わせていただいて。ご飯を食べているときも「普通に投げたら絶対10勝くらいできるのになぁ」って言っていただいていました。僕も「きょう現役ドラフトなので、選ばれそうなんですよね」という話はしていて、電話がかかってきて「うわっ、きた!」みたいな…。みんなで「どこかなー?」って話をしていました。

――ランチ後に阪神移籍を知ったと?

 ホテルの部屋に戻って、(ビデオ通話の)画面越しで伝えられました。覚悟はできていたので、自分の中ではあとはどこの球団になるかというだけでしたかね。表現の仕方が難しいのですが、阪神でうれしかった。岡田(彰布)監督は大学(早稲田大)の先輩でもありますし、阪神には伊藤将司とか左の技巧派ピッチャーもいるので、自分にもチャンスがあるんだなと思いました。

――そもそも現役ドラフトで指名されることは予想していましたか?

 僕だけ秋のキャンプで(宮崎組に)選ばれていなかったので。ここ2年間、結果も出ていなかったですし、現役ドラフトかトレードなのかなとは思っていました。(ソフトバンク球団から)察してくれというような雰囲気もありましたね。契約更改の場で「(現役ドラフトの)候補には入っているよ」と。

一気に飛躍も「博打に成功した感はない」

今シーズンの活躍について、環境や精神面での変化も大きかったと大竹耕太郎は振り返る 【写真は共同】

――結果的に、阪神移籍が飛躍のきっかけになりました。

 でも、覚醒したわけじゃないので。博打に成功した感はないですかね。急に良くなることはないと僕は思っていて、能力としては何も変わっていない。昨年、一昨年とホークスの和田(毅)さんの自主トレに行かせていただいて、そこで学んだことが徐々に形になってきた部分があります。

――学んだ点というのは?

 どういう真っ直ぐだと打たれにくいとか、真っ直ぐの重要性を学んでいく中で、球の質が変わっていったかなと。(今季も)カウントが悪い中でもしっかりとファウルが取れた。徐々に(球質は)変わっているし、まだ良くなると思っています。

――コツコツと築いてきた中で、環境の変化がうまくマッチしたイメージですか?

 ベースはしっかり準備してきたというのがあります。そこに加えて、ホークスは球が速いことに重きが置かれていましたけど、阪神は四球を出さないことや、低めに投げることを重視するチームカラー。そのニーズに応えたという感じですかね。居心地の良さは感じました。(成績が上向いたのは)ベース7割、環境要因3割くらいですかね。

――環境が変わることで、精神的な変化はありましたか?

 気持ちの面はすごく変わりました。今までは2軍でやっているピッチングを1軍でできないというハードルが自分の中ではすごく高かったのですが、西(勇輝)さんから1年間ローテを回ることはこういうことだよと教えてもらったのは大きかったです。技術や体力じゃなくてどういう心持ちで登板するか。メンタル面のアドバイスをしてもらえるいい出会いがありました。

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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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