インターハイ準Vチーム敗退の春高バレー京都府予選 U18アジア選手権MVPのエース尾藤が敗戦後に感じたこと
大観衆が見守った「東山vs.洛南」伝統の一戦
春高バレー京都予選は大熱戦の末、洛南が代表校に決定した 【写真:田中夕子】
入学時は無観客だった代表決定戦も、大勢の観客が見守り、声出し応援の中で思い切り戦える。洛南の先取点から始まった試合で、自らスパイク、ブロックで連続得点を挙げるとガッツポーズをして跳び上がりながら満面の笑みを浮かべる。尾藤の姿は、最高の場所で戦える喜びに満ち溢れていた。
その後もサービスエースやバックアタック、好調さを見せつけるように得点をたたき出すも、洛南も2年生エースの中上烈、対角に入る草野叶嶺の2本柱に加え、サウスポーの岸岡脩人が要所でスパイクを決め、18対18と両者一歩も譲らぬまま終盤を迎える中、抜け出したのは洛南だ。尾藤のスパイクがサイドラインを割り、18対19と先行され、中上のサーブから連続バックアタックで18対21、点差を広げた洛南がそのまま第1セットを先取する。
しかし第2セットは出だしから花村のサーブが走り7対0と先行した東山が奪取。第3セットを洛南が取り、第4セットは東山。まさに白熱した、1点、1本を獲り合う大接戦を繰り広げる。そして迎えた最終セット。3対0と東山が先行したが、洛南は中上にボールを集め、2枚、3枚ブロックももろともせずに打ち抜く。真っ向勝負とばかりに尾藤も同じく2枚、3枚ブロックの中得点を叩き出したが、最後は渾身の力で放ったバックアタックが3枚ブロックに止められ、7対15で洛南が大熱戦を制し、5年ぶりの春高出場を決めた。
足を攣る選手が多く出た中でもつかみ取った勝利に、全身で喜びを表す洛南の選手たちに対し、両膝に手をつき、顔を覆い、泣き崩れる東山の選手たち。その中で尾藤は、姿勢を崩すことなく、前を向いていた。
「まだ、実感がないんです」
試合後の取材にも、嫌な顔も涙を見せることもなく冷静に振り返りながら、悔しさを口にした。
「特に最後のセットは『自分に持ってきてほしい』と言いました。チームみんながそれに応えてくれて、集めてもらう中で自分が決めきれなかった。エースとしての役割を果たせず負けてしまったのは申し訳ないし、すごく悔しいです」
接戦の末に勝利を逃した。しかも高校最後の大会が終わってしまった。悔しさが先行するのは当たり前で、自分へのふがいなさも込み上げる。だが、同じぐらい、尾藤は喜びも感じていた。
「春高の(京都)決勝で洛南と、伝統の一戦ができたのは初めてで、試合前も試合中もずっと高揚していました。応援席を見たら、本当にたくさんの人たちがいて、この3年間を振り返ればいろんな人たちに支えてもらって、勝つことで恩返ししたかったけど、それができないのはすごく悔しいです。だけど、それでも最後、『持ってきて』と言った1本を自分に持ってきてくれて、託してくれたのは嬉しかった。今は心残りしかないですけど、でもあの1本を持ってきてくれたことだけは、少し、自分にとっては喜びでもあって。今までは勝って来たから、勝つ側の立場しかわからなかったけど、ここで負けて、今まで洛南がどれだけ悔しかったかもよくわかりました。この負けから、これからの自分につなげていきたいです」
世代を代表するエースの3年間が終わった。これからは、託された最後の1本を決められるエースになるための戦いが始まる。