インターハイ準Vチーム敗退の春高バレー京都府予選 U18アジア選手権MVPのエース尾藤が敗戦後に感じたこと

田中夕子

22年のU18アジア選手権でMVPを獲得するなど世代を代表する注目の選手、尾藤大輝 (写真は23年の春高) 【写真は共同】

 間もなく暦は12月。今年も残すところひと月あまり。プロ野球やJリーグで次々に年間王者が決まる中、本大会に向け、熱を帯びているのが春高バレーだ。

 1月4日に開幕する年明けの本番に向け、各都道府県予選が進み、11月23日には男女全104校が出揃った。12月には本大会の抽選も行われ、機運が高まっていく。カテゴリーの違いはあれど、男子日本代表が五輪出場を決めたこともあり、幅広い層からバレーボールの話題が上がることも増えてきた中、一度ではなく数回、同じことを聞かれた。

「今年は東山、出ないんですね。尾藤選手を見てみたかったなぁ」

 京都代表として出場した昨年の春高はベスト4。今夏のインターハイも準優勝した。その東山でエースとして1年時から活躍してきたのがアウトサイドヒッターの尾藤大輝だ。22年にはU18アジア選手権にも出場し、日本は3連覇を達成。尾藤はMVPを受賞し、アジア各国のバレーボールファンからも多くの注目を集めた。

 攻撃力が最大の武器であり、昨年の春高でも、2年生エースとして準決勝は鎮西の大エース、舛本颯真(中央大1年)と打ち合った。フルセットの攻防の末に鎮西が勝利したのだが、敗れた悔しさだけでなく、尾藤にとっては苦い記憶とともに強く残る試合となった。

 ほぼ大半のトスが集まる中でも「勝たせるのはエースだ」とばかりに、舛本は膝の状態が決して万全ではない中で勝負所を確実に決めきった。だが自分はどうか。堂々のエース勝負を繰り広げていたにも関わらず、尾藤が口にしたのは後悔と反省だった。

「大事なところで自分はミスが多かったんです。特に終盤やフルセット、ここは確実に獲りたい、獲ってほしい、というところで決めきれず、ミスが出た。ああいうプレーをしていたらチームから信頼されるはずがないし、託してもらえないと思うので。まだまだ自分がエースだ、と胸を張れる選手になれていないので、(高校最後の1年は)もっと頑張らなきゃダメだと思っています」

 高校生代表として出場した5月の黒鷲旗。昨年のチームを引っ張ったリベロの池田幸紀(関西大1年)、セッターの當間理人(東海大1年)、日本代表にも選出されている麻野堅斗(早稲田大1年)が抜け、最上級生のエースとして主将の花村知哉と共に引っ張っていく、と決意を述べていた。特に、セッターの太田渉稀は後輩(2年)で、高校での試合経験も少ない。エースとしては「ここで自分にトスが欲しい」と思う場面もあり、尾藤としては「もっと上げてほしい、と思うこともある」と述べてはいたが、セッターにはセッターのプランもある。

「組み立ては渉稀の中でいろんなことを考えていると思うので、自分はここぞ、というところでトスを持ってきてもらえる存在になりたいです」

 インターハイ準優勝も堂々たる結果ではあるが、目指すのはその上。最後の春高は、尾藤にとってまさに、エースたる姿を見せるべき舞台だった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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