古賀紗理那が振り返る五輪予選 各試合の局面で感じていたこととは

田中夕子

自信を持って五輪予選に臨めていたと振り返った 【写真:田口有史】

 9月24日に終了したバレーボール女子の五輪予選。日本は5勝2敗の3位で、今大会での五輪出場を決めることはできなかったが、開幕から失セット0の5連勝、上位チームとも好勝負をみせ、今季の前半からは明らかに進化した戦いぶりを示した。大会後、キャプテン、エースとして、チームをリードした古賀紗理那に五輪予選について振り返ってもらった。

――五輪予選(OQT)について。希望もあった、と振り返りましたがどんな大会でしたか?

 チームとして成長した、自分たちがやったことが試合で出ると思った大会でした。でも最後の2戦はメンタルなのか隙なのか。先にリードしている展開が多くありながらとりきれていないのは日本の弱さで自分の弱さなのかな、と思いました。

――ネーションズリーグ(VNL)の結果から、あれほどの観客で、あそこまで盛り上がると思わなかった、という声もありました。OQTまでの期間でなぜこれほど変わったのでしょうか?

 チームの視点で言うと、薩摩川内合宿が終わって東京で合宿が始まって、監督からも「ギアを上げよう」と言われ、実際に練習内容もめちゃくちゃきつかったんです。ゲーム形式でとにかく1週間みっちり練習して、1日のオフでは疲れが取れないぐらい疲れるけれど、オフの翌日にまた練習する。そのおかげで身体はタフになったし、きつい中で決めた得点が自信になりました。練習量だけでなく、こうやって決める、という形ができて、自分たちも「成長している」という実感があったので、自信を持って大会に入ることができました。

――古賀選手もキャプテンとして取り組まれたことも多かったのでは?

 働きかけはかなりしたつもりです。コートに入ったら自分の役割を理解しよう、と。誰が入るかによって自分の役割も変わるので、それを考えてプレーしようというのはずっと言ってきました。あとは当たり前のことなんですけど、誰かが何かを発したら必ず反応しよう、というのも言いましたね。私だけではなく、各ポジションでミーティングを自主的にするようになったのも今までとは違いました。

――大会前は男子が盛り上がって、女子は、と比べられることも多かった。率直にどう思っていましたか?

 全然気にならなかったです。男子のほうが個々の意識も高いし、今のはディグ、これはブロック、と役割分担がちゃんとできているので、ブロックディフェンスもはめやすそうだなとか、ハイセットの精度の高さは私たちもこれぐらいのレベルでやらないといけないよね、と林(琴奈)や石川(真佑)、関(菜々巳)や井上(愛里沙)さんとよく話していました。
――実際にOQT開幕を迎える前、不安はありましたか?

 楽しみしかありませんでした。めちゃくちゃ練習したし、納得できる練習をしてきたので個人的にもすごく楽しみでした。メンタルの専門家の方も合宿に来て下さって「ここまで来たら、できないことは切り捨てよう、プラスを足そう」「勝ちたいじゃなく勝つ、と決定事項を発して断言しよう」と言われたことも腑に落ちましたね。選手同士でも「絶対勝つよ」とチーム内で常に発するように意識していました。

――開幕5連勝、しかも失セット0。想定通りでしたか? それとも想像以上だった?

 VNLまでは、ここが勝負所だから、ここをとれば絶対にセットをとれると思うところをそれぞれが理解できていないと感じることも多かったんです。でもOQTではスタッフからもいろいろなデータやポイントを出してもらって「ここを抜けたら突き抜けられる」と選手みんなが勝負所を理解して、意識できていたのでサイドアウトも我慢しよう、1回で切れなくてもブロックディフェンスではめていこう、と考えてプレーしていたので安定感がありました。だからどれだけ競り合っていてもとりきれる、という自信がありました。その結果、失セット0はすごいことだし、自分たちでできたことだから「絶対自信にしていこうね」という話はずっとしていました。

――最後の2試合、トルコ、ブラジルに対しては?

 トルコ戦はカラクルトとバルガスを抑える対策練習をずっとしてきました。結果的にバルガス選手には半分ぐらい決められたけれどシャットもできたし、抑えるところは抑えられた。でもアウトサイドの7番(ハンデ・バラディン)の選手にかなりの打数を決められた。

 ブラジル戦も同じで、ガビの攻撃対策はめちゃくちゃやってきたけれど、試合では17番(ジュリア・ベーグマン)の選手に決められたのが反省点でした。ランキング上位のチームに対して、抑えたいところは抑えたけれど、他の選手に決められることが多かった。そこは日本としての課題でもあるし、トルコもブラジルもここが勝負、となった時の勢いが日本とは違った。学びにも反省にもなりました。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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