鍵山が完成度の高い演技でNHK杯を制す 2位の宇野も絶賛する、復帰の過程で磨いた表現力

沢田聡子

ショートではクールな滑りをみせた鍵山 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

レジェンドスケーター・コストナー氏が鍵山のコーチに

 グランプリシリーズ第6戦・NHK杯(11月24~26日 大阪府門真市・東和薬品ラクタブドーム)の男子シングルでは、鍵山優真が宇野昌磨とのハイレベルな競り合いを制して優勝した。数種類の4回転ジャンプを跳ぶ技術面はさることながら、表現面でも見応え充分の試合となった。

 昨季は左足首の怪我によりグランプリシリーズを欠場した鍵山は、復帰までの日々で表現力に磨きをかけてきた。今春のイタリア合宿では、プログラムの振付を担当するローリー・ニコル氏、今季からコーチとなった2014年ソチ五輪銅メダリストのカロリーナ・コストナー氏にきめ細かい指導を受けた。加えてバレエ指導者から体の使い方を学び、オペラも鑑賞するなど、芸術性を高めるためのさまざまな取り組みをしている。2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪が行われるイタリアで、多くのことを吸収してきた。

 現役時代のコストナー氏は美しいスケーティングと繊細な表現力を持ち、スケーター達が憧れとして名前を挙げるような存在だった。もとよりスケーティングの上手さには定評がある鍵山は、コストナーコーチから緩急のつけ方を学んだという。NHK杯にもコストナーコーチを帯同しており、優しい笑顔で鍵山に付き添う姿がみられた。

 鍵山のショートプログラム『Believer 』(シェイ=リーン・ボーン氏振付)は、痛みが信念をもたらしたと歌う、現在の鍵山にぴったりの内容だ。NHK杯の男子ショート、鍵山は4回転サルコウを3.74という高い加点がつく出来栄えで決めたのを皮切りに、4回転トウループ+3回転トウループ、トリプルアクセルも成功させる。スピン・ステップではすべてレベル4を獲得し、演技構成点3項目でも9点台の評価を得た。何より、プログラム終盤に向けてむしろ加速していくようなスケーティングと、めりはりのついたシャープな動きが鮮烈な印象を残した。今季世界最高となる105.51というハイスコアも当然と思える、圧巻のショートだった。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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