Vリーグ・大河バイスチェアマンが語るバレー改革 「世界一のリーグ」に向けた現状と課題

大島和人

欠かせないデジタルへの投資

アリーナ、デジタルとリーグとチームが乗り越えるべき課題は多い 【VLAP-2023-002 ©JVL】

――アリーナと同様にVリーグが欠いている大きな要素はデータベースマーケティング、チケットシステムですよね?

 Vリーグはどのようなお客が、どういう試合に来ているかというデータ自体がない。それは新リーグの開幕までに変えます。

――ただスケジュールが極めてシビアです。

 もうギリギリ……。だから近々の理事会で決議を採って推進します。速やかにファンクラブのデータ、EC(通販)サイトを利用した方のデータをつなげます。まずこれが無いと、前に進めませんから。

――システム投資はコストもかかります。

 協賛してもらいながら、つまりお金をいただきながら、システムを作ってもらう割と高めのハードルを今交渉しています。簡単に言うと「チケッティングパートナー」となるのですが、そこは8割くらい見えてきたかな。チケットシステム、マーケティングデータベース、統合IDが揃って、アリーナがしっかり変われば、運営法人がすべて独立しなくてもリーグは大きく変わると思います。一方で運営法人の問題も極めて重要です。

 ノウハウを持つ人材、協力してくれる会社を紹介してほしいという動きが、バレーボール界でも始まっています。ただ運営法人がないから、どんな優れた人材も業務委託でしか採用ができないんです。スポーツのことだけをやっている人材を正社員では採用しにくいですよね。バレーボールを事業とする会社が独立したら、報酬体系も含めて、柔軟に採用できるようになる。そこも実は大切なポイントです。

人材確保をどうする?

――リーグ組織の拡大は考えていますか?

 ここからもう少し増やしたいと思っています。広報にしても、マーケティングにしても、それをチームに教える仕組みがないですね。チケットシステムを入れても、それを使いこなせるように持っていく人がいない。あと他に発注できる作業的なものを内製化しているケースが多くて、人をそこに割かざるを得ない部分もあります

――大河さんご自身も、びわこ成蹊スポーツ大学の学長ですし、業務や意思決定を専任で回せる立場ではありません。

 実務のトップをおまかせする事務総長は入れなければいけないと思っています。ただ、事務総長はそれなりにリーグを背負う立場だから、40代50代になるケースが多いですよね。今の環境を捨てて、ここに勝負を懸ける気持ちがある人がなかなか見つからないんです。そのくらいの年齢の人は子どもに一番金がかかる時期ですし(苦笑)。私もバスケットに移ったときは「Bリーグが上手くいかなかったら、どうなるかな」とか、本当に思いましたからね。でもやってみようという人を、見つけてこなければいけません。

 そもそも今まではVリーグにお金がないから、トップの報酬を払えなかったわけです。国分(裕之)チェアマンも私も要するにボランティアです。チェアマンをそうすることが無理なら、事務総長でもいいので、常勤で有給の人材がいるようになる……。それもSVリーグが成功するためのポイントです。

――まだ超えるべき「ネット」「ブロック」はありますが、SVリーグ発足はバレーボール界にとって大切なステップです。最後に大河バイスチェアマンの「夢」を聞かせてください。

 私の夢はSVリーグを世界で一番のプロリーグにすることです。サッカーもバスケットも野球も、日本のリーグが世界のトップになるのはまず難しいですよね? バレーボールもイタリアのセリエAがありますけど、年俸はそこまで高いわけではない。日本がそこを超える可能性は十分にあるでしょう。世界の良い選手、良い指導者が一番に選んでくれる環境を日本に作り出すことが一つのゴールです。競技力、ガバナンス力、事業力の三つで世界におけるトップのリーグになることが究極の目的です。「2030年、世界最高峰のリーグ」という目標はぶらさずにやっていきますし、やれると思います。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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