J1月間MVP 湘南・富居大樹が明かす安定感あるパフォーマンスの秘訣「秋元さんからたくさんのことを学んだ」

舞野隼大

今季はリーグ戦8試合出場ながら、湘南のシーズン終盤の反撃に大きく貢献。現在は負傷からの復活を目指す 【(C)J.LEAGUE】

 10月度の「2023明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に、湘南ベルマーレのGK富居大樹が選出された。9月30日のセレッソ大阪戦、10月21日の京都サンガF.C.戦、28日のヴィッセル神戸戦で許したゴールは、PKによる1失点のみ。韓国代表のソン・ボムグンらと出場機会を分け合うなかでも、ピッチに立てば常に安心感を与える富居が心がけていることとは?

あの瞬間、すべてが見えていた

――10月度の明治安田生命J1リーグKONAMI月間MVP受賞、おめでとうございます。率直な感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。うれしいのと、驚きの気持ちがあります。当然、僕だけの力では成し得なかった賞で、湘南ベルマーレに携わってくれている人たちのおかげで選出されたと思っています。この賞を機に残りの試合も頑張りたいと思っていましたけど、残念ながら怪我をしてしまいました。それでも、しっかり評価していただいて、この賞をいただけたことは光栄に思います。

――こういった賞は今までに受賞した経験はありますか?

 コンスタントに試合に出る経験がなかなかなかったですし、初めてのことです。

――10月のリーグ戦で印象に残っているご自身のプレーを教えてください。

 (9月30日のセレッソ大阪戦も含め)2勝1分と負けることがなく、チームとしても個人としてもすごく充実した試合ができていました。プレーで言うと、ヴィッセル神戸戦(10月28日の第31節/△1-1)の佐々木(大樹)選手のシュートを止めたシーンです。武藤(嘉紀)選手から佐々木選手へクロスが上がってくる時に周りの状況がすごく見えたので、一歩、二歩先を読めたプレーでした。

 武藤選手がボールを持っていた時に大迫(勇也)選手がニアへ走ってきているのも見えていましたけど、そこには大岩(一貴)選手がマークについてくれていたのが見えました。ファーサイドへ走る佐々木選手に対してはうちの選手が遅れているのがわかっていて、武藤選手はクロスをファーに上げるかなという予測して、ヘディングを打たれる前にシュートコースにポジションを移せていたことが止められた要因だと思います。

――神戸戦では、82分にジェアン・パトリッキとの1対1を防いだ場面も印象深いです。

 あのシーンはうちのディフェンスに相手のパスが当たって、イレギュラーな感じで抜けてきた形からでした。ボールがちょっとバウンドしていたので「ループシュートを打たれるかもしれない」と一瞬、前に出て距離を詰めるのをやめたんです。

 でも、芝目でボールの弾み方が一度変わって、「パトリッキ選手の前に流れるだろう」と予測していたボールが真上に上がって、懐に入っていった感じがあったので、その間に相手との間合いを詰められました。あの一瞬でそれだけ見えたのは、準備がよかったからだと思います。びっくしりはしましたけど、重心の状態や間合いもよかったので、落ち着いて対応できました。

「大岩選手は僕よりもうまいんじゃないか(笑)」

神戸戦の終了間際に無念の負傷。自身に代わってゴールを守った大岩に感謝する 【YOJI-GEN】

――富居選手のプレーは、安定感が常にある印象です。ピッチ上では、どんなことを心がけていますか?

 相手の状況や味方の立ち位置をよく見ていて、「味方がここでシュートコースを切ってくれているから、シュートはここにしか飛んでこないだろうな」と予測することが自分の強みだと思っています。それがうまくハマっていると思いますし、日頃の練習からいいトレーニングができていて、その積み重ねが試合に出ていると思います。

――神戸戦の90分にCKを処理した際に負傷してしまいましたが、すぐに立ち上がってゴールを守る姿にGKとしての気迫を感じました。

 パンチングした瞬間に背中から「ぶちっ」という音がして、その瞬間に「やばいな」と思ったんですけど、神戸の選手がボールを持っていたので「戻らなきゃ」という気持ちしかなかったです。正直、痛すぎました。映像を見たら腰に手を当てながらプレーしていましたけど、無意識だったというか、あまりその時のことは記憶にないです。

――富居選手が負傷したあと、交代枠をすべて使い切っていたためフィールドプレーヤーの大岩一貴選手がGKを務めていました。どんな心境で見守っていましたか?

 (治療していたため)大岩選手がGKをやっていると知ったのは、試合が終わって映像を見た時でした。申し訳ない気持ちと、最後にクロスをキャッチしにいったシーンは「僕よりうまいんじゃないか」と思うぐらいのプレーでした(笑)。ロッカールームにいても、すごい歓声が上がってきたのが聞こえたので「点を取ったのかな」と思ったんですけど、後から聞いたら大岩選手がキャッチしたという。

――その後は大岩選手となにか話しましたか?

 神戸戦が終わってからしばらくグラウンドへ行けてなくて、(取材時の)今日、初めて会ったんですけど「すごかったね」と伝えました。フィールドの選手がああやってGKを務めるのは本当に難しいことだと思いますし、一生に一度あるかどうかだと思います。大岩選手はキャプテンでもあるし、責任感も強いので、そういう選手がああいうふうにやってくれたからこそ勝ち点1を取れたと思います。僕としては最後までピッチに立っていなければいけなかったですけど、すごく感謝しています。

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著者プロフィール

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年に神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当。(株)ウニベルサーレ所属。

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