西浦颯大『もう一回野球させてください神様』

松葉杖姿で球場入りも「めちゃくちゃ楽しかった」引退試合 その後に西浦颯大が語った“将来の夢”

西浦颯大

2021年9月28日のウエスタンリーグ・広島戦が西浦颯大の引退試合となった 【写真は共同】

小学6年生でソフトバンクジュニアに選出されるなどセンス抜群の野球少年だった西浦颯大。
中学、高校と輝かしい経歴を歩み、オリックスではあのイチロー以来、10代でホームランを記録するなど華々しい野球人生を歩んでいた。

そんな“野球に愛された男”に突然の病魔が襲い掛かる……
国の指定難病「特発性大腿骨頭壊死症」を患い、医師から告げられたのは「復帰は8割強、無理」という非情通告……
懸命にリハビリに励むも、復帰は叶わず、22歳の若さで球界を去ることに……

引退を決めた後輩に、山本由伸、宗佑磨がヒーローインタビューで投げ掛けた言葉とは? 
中嶋聡監督が取った意外な行動とは? そして西浦が引退試合で許された「たった1球の物語」とは――?

西浦颯大著『もう一回野球させてください神様』から、一部抜粋して公開します。

引退発表後の松葉杖姿

 2021年9月28日、僕がユニフォームを着る最後の日がやってきました。舞洲でのウエスタン・リーグの広島東洋カープ戦が、僕の引退試合でした。

 9月24日に引退が発表されると同時に、28日に引退試合を行うことも発表されました。友達から「もう完売してんで!」と連絡が来て、びっくりしました。僕はそんなたいした選手じゃないのに。本当にファンの方々には感謝しかありません。

 当日は青濤館で背番号「00」のユニフォームに着替え、併設されているオセアンバファローズスタジアム舞洲(現・杉本商事バファローズスタジアム舞洲)へと歩いていきました。

 球場では多くの報道陣が待ち構えてくれていましたが、松葉杖をつきながら歩いてくる僕の姿を見て驚いたそうです。
 短い距離なら松葉杖なしで歩くこともできたのですが、長い距離を歩く時は、股関節の骨が滑る恐れがあるので、松葉杖をつくようにしていました。

 引退試合で最終回の守備につくということは発表されていたので、最後にスーパーキャッチや、レーザービームが見られる奇跡を、期待してくれていた人もいたようです。

 その1ヶ月ほど前に、ティーバッティングをする映像をTwitterにアップしていましたから、かなり回復しているという誤解を与えてしまっていたこともあったかもしれません。
 でも、松葉杖をつきながら球場にやってきた僕の姿を見た人は、奇跡を見られる可能性はゼロなのだと、その時、察したようです。

「めちゃくちゃ楽しかった」最後の試合

 球場に着いたら、首脳陣、選手、スタッフに「4年間、ありがとうございました」と挨拶しました。

 印象に残っているのは、外野守備・走塁コーチだった佐竹学さんの言葉です。
「なんか、お前ならやっていけそうな気がする。野球じゃなくても、お前ならいけるよ。頑張れ」
 佐竹さんにはずっと怒られてばかりでした。あの人はなかなか人を褒めない。僕がダイビングキャッチをしても、「お前、今のは飛ばなくていいだろ。足で捕りにいけ」って(苦笑)。でもこの日だけは、優しかったです。

 そして、最後の試合が始まりました。最終回まではベンチで、いつもやっていたように過ごしました。攻守交代の際にはベンチ前に出て、守備位置から帰ってくるチームメイトを迎えました。

 めちゃくちゃ楽しかったですね、ベンチにいただけなのに。

 でもイニング間にベンチ前に出て、ボールを受け取るのが怖いと感じました。内野手がキャッチボールしていたボールを、投げてもらって受け取るだけなんですが、ちょっとグラブを持っていかれましたから(苦笑)。
 
 10ヶ月間、野球をしていなかったら、こんなに変わるんだ、と。心はついていっているんですけど、体がついていかなかったですね。

 そして9回表がやってきました。

「佐野如一に代わりまして、5番に西浦が入りセンター」

 僕の名前がアナウンスされると、スタンドのお客さんやベンチのチームメイトが、大きな拍手で僕をグラウンドに送り出してくれました。僕のタオルを掲げてくれているファンの方もたくさんいました。

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