A東京のエースキラー・小酒部泰暉 「98年トリオ」としてチームをどう見る?

大島和人

小酒部がA東京に加入して早くも5シーズン目となる 【©ALVARK TOKYO】

 魅力的な選手が多いアルバルク東京の中でも、小酒部泰暉はキーマンのひとりだ。山北高時代は無名だったが、神奈川大でブレーク。大学3年のシーズンを終えた2019年12月に、特別指定選手としてアルバルクへ加入した187センチ・88キロのシューティングガードだ。プロ契約後もB1で着実な成長を見せ、運動能力の高さを生かしたタフな守備で「数字以上の貢献度」を発揮している。

 2023-24シーズンのアルバルクは吉井裕鷹、テーブス海、小酒部の「98年トリオ」の活躍が、5シーズンぶりのチャンピオンシップ(CS)制覇に向けた条件になるだろう。今回のインタビューは小酒部に昨季と今季、チームメイト、そしてワールドカップについてじっくり語ってもらっている。

昨季の手応えと、新しい取り組み

――小酒部選手にとって、2022-23シーズンはどのようなシーズンでしたか?

 新しいヘッドコーチに変わって、チームも個人も最初は「自分たちのやるべきこと」を見つけることに苦しんでいました。でも試合を重ねるにつれ、チームメイトとコミュニケーションを取り合って、自分たちのやりたいことができるようになっていきました。CSまでの道のりもそんなに苦ではなかったし、CSは(クォーターファイナルの)島根スサノオマジック戦が一番印象に残っています。その前のシーズンはゲーム3で負けてしまっていた相手に、同じゲーム3で勝ち切れました。最後(セミファイナルで)千葉ジェッツにやられてしまいましたけど、島根戦を勝ち抜いたことは大きい収穫です。

――主力選手の怪我など不運もありましたが、手応えはあるシーズンだったのですね。

 そうですね。自分はまだ優勝を勝ち取ってなくて、1シーズン目は(東地区首位だったにもかかわらず)CSが新型コロナウイルスの影響で無くなりました。2シーズン目は(クォーターファイナルで)島根に負けて、2022-23シーズンは島根に勝って、徐々に上がっている感じです。次こそは優勝をつかみ取りたいです。

――今シーズンの上積み、「ここが新しい」という部分はありますか。

 システムはそんなには変わってないですけど、個々の能力は本当に上がっていると思います。去年の課題である外のスポットアップのシュート率は、チームが必要としている要素です。そこは練習を重ねていて、まだシーズンは始まってないですけど、いいものになるかなと実感しています。

――ご自身もシューターなど、オフェンスの役割をもっとやっていく意欲もお持ちですか?

 そうですね。もちろん得点に絡む部分も頑張っていきたいです。ディフェンスも引き続き頑張っていかなければいけない部分です。

若手が「やらねば」という思いも

小酒部は吉井裕鷹、テーブス海と同学年 【©ALVARK TOKYO】

――2シーズン目となるデイニアス・アドマイティスヘッドコーチ(HC)の特徴、方向性はどうお感じですか?

 オンコートもオフコートも、ファミリー感が強いです。バスケの部分では熱くなったりもしますけど接しやすく、コミュニケーションを取りやすいコーチです。選手との距離も近いし、信頼関係を早く築きやすいですね。

――相手の分析が細かい、対策が緻密という感想を他の選手から聞いたことがあります。

 ルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチのときもそうですけど、決まりごとは多いし、相手に対するディフェンスで「癖」に関する指摘を多くします。細かいというか、相手の特徴をよくスカウティングしていると思います。

――今シーズンは田中大貴選手がサンロッカーズ渋谷に移籍した一方で、テーブス海選手や橋本竜馬選手、福澤晃平選手の3選手も加わり、バックコート陣は大きく入れ替わりました。新たな強み、変化についてはどう考えていますか?

 (テーブス)海は身体も強いですし、やはり背丈があるので、そこでアドバンテージは多く取れると思います。あとB1は外国籍のポイントガードが多いですけど、海がしっかり守ってくれるはずです。今季のメンバーは特に外(からのシュート)も入るので、チームとして、一つステップアップしたかなと感じます。

――橋本選手はベテランですし、熱血漢のイメージもありますけど、アドバイスを受ける場面もあるのではないですか?

 もちろん熱さもありますし、出てないときも自分に「こうしたら良い」「強い気持ちを持ってやれ」とアドバイスをしてくれて、励みになっています。

――アルバルクには同い年の選手が3人います。テーブス選手が新たに加わって、吉井裕鷹選手はワールドカップで大活躍してチームに戻ってきました。刺激になる部分はあると思いますが、ライバル的な意識はお感じですか?

 ライバル関係はあまり……ないですかね。ポジションも被っていないですし。でも若手がチームを鼓舞しなればいけないというか、自分たちのやるべきことをやらねば……と思っています。吉井もワールドカップで上がってきていますし、そこは自分の活力になっている感じです。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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