テーブス海が語るW杯落選と新天地・A東京 「4度目の正直」で目指すパリ五輪

大島和人

テーブス海は今季からA東京に加入している 【©ALVARK TOKYO】

 テーブス海はアルバルク東京の新戦力の中でも、特に「気になる」存在だ。父BTはカナダ出身の指導者で、弟の流河も将来を有望視される選手というバスケット一家に育った彼は、滋賀レイクスからの移籍で今季からチームへ加わっている。188センチ・85キロの体格を持つ25歳のポイントガード(PG)で、高速ドライブやアグレッシブなプレーはおなじみだ。
 一方で彼はこのオフに挫折を味わっている。日本代表はFIBAバスケットボール・ワールドカップ(W杯)で3勝2敗を挙げてアジア最上位に入り、パリオリンピック出場権を得た。ただ25歳の司令塔は代表候補入りを有力視されつつ、最終段階でチームから離れ、沖縄アリーナのコートに立てなかった。彼にとっては悔しさを抱きつつ、代表復帰を目指すシーズンでもある。今回はそんなテーブス選手に話を聞いた。

A東京と指揮官の印象は?

――アルバルクに来た印象はいかがですか?

 バスケットの環境がめちゃくちゃしっかりしているチームですね。スタッフも多いので、選手1人ひとりのリバウンド、ワークアウトに全て対応してくれます。オフコートはチーム全員のファミリー感が強くて、まとまった感じです。

――Bリーグの中でもかなりいい施設が揃っていますし、「練習したければいくらでもできる」環境ですね。

 いや、本当にそうです。全て整っていますし、練習後のリカバリーもお風呂やアイスバスがあって、シャワーもロッカールーム全てについています。プロのアスリートからしたら本当にありがたいです。

――改めてアルバルク入りの理由を教えてもらえますか?

 自分は宇都宮ブレックスのときに一度(2021-22シーズンのチャンピオンシップで)優勝を経験させていただきました。そこから滋賀レイクスに行って、違うチーム状況を経験しました。PGとしてチームを優勝まで導くのがキャリアの目標ですし、自分のステップアップにとってもアルバルクが合っているのかなと思いました。

――デイニアス・アドマイティスヘッドコーチ(HC)のバスケットについては、どういう印象ですか?

 ヨーロッパの中にも色々あるんですけど、やっぱり「ヨーロッパ風のバスケット」ですね。本当にスマートなスタイルです。オフェンスは特にミスマッチを狙って、どちらかというと時間をかけて、一番攻めやすいところを、共通認識を持って攻めるタイプのバスケットでした。

――テーブス選手はスピードがあって、アグレッシブさも売りだと思います。しかしPGとしてキャリアを積んでいくなら、アドマイティスHCのスタイルから学ぶところがありそうですね。

 まさにその通りです。宇都宮のときは常にゲームコントロールを考えながらやっていました。滋賀のときは真逆で、もう常にアタックすることだけ考えてやっていました。今回はそのバランスを意識したいと思っています。
 HCからはもちろん、PGとしてゲームコントロール、セットプレーのコールと色々なことを求められます。ただセットプレーの途中でも、自分がアタックできると思えば、どんどん行ってほしいとは言ってくれました。

W杯をどう見たのか?

W杯から喜びを学びを得ていた 【スポーツナビ】

――仲がいい、オフコートでよく一緒になる選手は誰ですか?

 本当にみんな仲が良いんですけど、やはり以前から知っているライアン(・ロシター)ですね。セバスチャン(・サイズ)も前から仲が良いですし、吉井(裕鷹)は代表でずっと一緒にやっていました。この3人は特にオフコートで絡むことが多いです。
 みんな知っていたので、めちゃくちゃ入り込みやすいチームです。H(岡本飛竜)もそうですし、周ちゃん(安藤周人)も知っていたし、(平岩)玄も知っていたし……。「自分の仲がいい選手のチーム」に入った感じです(笑)

――先日のW杯は代表入りを期待されていて、メディアも「メンバーに入るのでは?」と予想していた中で、出場がかないませんでした。そこは今どう受け止めていますか。

 いやもう、まだすごく悔しいです。悔しさをモチベーションに変えて今できることに向き合って、Bリーグで結果を出して、常に成長し続けたいです。次のパリオリンピックも、もちろん代表入りを目指して頑張ります。

――日本戦はどのような気持ちでご覧になって、どういう感想をもちましたか?

 最初の方はもう悔しくて、なんか「あんまり見たくない」と思ったのですが……(苦笑)でもやっぱりW杯ですし、自分も代表チームの一員だと思っているので、応援したいなと考えて見ました。結局はもう夢中になって、めちゃくちゃ感動しました!
 皆さんが1年半、2年と本当にどれくらい頑張ってきたかが分かっているので、ああいう結果で終われて本当に嬉しかったです。フィンランド戦に勝ったときは、すぐ吉井に電話しました。吉井と西田(優大)、川真田(紘也)の4人でよくつるんでいたんですよ。

――川真田選手も滋賀で一緒でしたね。 

そうです、代表のときもずっと4人で一緒にいることが多かったので、すぐテレビ電話を入れて「おめでとう」と伝えました。

――吉井選手にW杯のことを聞いたら淡々としていましたが、試合直後はやっぱり喜んでいたんですか?

 多分、あいつ格好付けているだけです(笑)。めちゃくちゃ嬉しそうにしていました。

――他のチームの試合もご覧になりました?

 見ていましたね。自分はドイツが優勝する前から結構好きで、もうめちゃくちゃ強いと思っていたので、注目していました。あとスロベニアも見ていました。

――どちらも素晴らしいガードがいるチームですね? 

 シュルーダー選手(ドイツ代表)も、ドンチッチ選手(スロベニア代表)も、めちゃくちゃ参考にしていたので、そういうところです。

――シュルーダー選手はサイズ的にテーブス選手と同じくらいですけど、お手本になる部分があるのではないですか?

 身体能力の差は正直かなりあるんですけど、彼もスピードがあって、ドライブがメインの選手ですよね。3ポイントも狙いながら、どういったタイミングでペイントアタックを狙っているのかとか、逆にこういうときはちょっと引いてゲームをコントロールするのかとか、そこを見ていました。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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