吉井裕鷹(A東京)が振り返るワールドカップ「ファンの歓声があれだけ選手を後押ししてくれるんだと初めて実感」
勝利に貢献した吉井裕鷹にワールドカップを振り返ってもらった 【(c) fiba.basketball】
男子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチ(以下HC)が、日本、フィリピン、インドネシア共催の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023(以下ワールドカップ)」の出場にあたり掲げた目標だ。
目標達成のため、ホーバスHCは2カ月以上にも及ぶ強化合宿を行い選手を徹底的に鍛え上げた。さらにワールドカップに出場できるロスター12名に残るためのサバイバルを施し、それを経験した選手たちはメンタル面でもタフになっていった。
その成果が現れたのが2試合目のフィンランド戦。男子日本代表としてヨーロッパのチームにワールドカップ、オリンピックを通じて初勝利を挙げると、ベネズエラ、カーボベルデにも勝利して、アジア1位の座を獲得。会場となった沖縄アリーナは歓喜の瞬間に包まれた。
バスケットボールのファンだけでなく、日本中を熱狂させた男子日本代表。今回は海外の選手にも負けないフィジカルなプレーを武器にチームに貢献した吉井裕鷹(アルバルク東京)に大会を振り返ってもらった。
「自分が準備してきた役割をとにかくやりきるだけ」
「沖縄から帰ってきて、すぐに合流しました。新加入した選手たちとコミュニケーションを取って、新シーズンに向けた準備をしています」
――改めてワールドカップについて振り返ってください。初めてのワールドカップ、その初戦のドイツ戦で初めてワールドカップに出場した時の気持ちを教えてください。
「自分が準備してきた役割をとにかくやりきるだけと思っていました。緊張というよりも日本代表の中でやらなきゃいけないことを徹底しようという気持ちのほうが強かったと思います」
――今回多くの選手が厳しい合宿をずっと続けてきて、自分たちが世界で一番練習してきたんだっていう自信を持って大会に臨んだと聞いています。練習での成果が発揮できたと感じましたか?
「発揮できた部分もありますし、発揮しきれなかった部分もありましたね」
初出場のワールドカップで吉井は思い切りのいいプレーで存在感を示した 【(C) fiba.basketball】
「トムさんのバスケがそういうスタイルだと思います」
――チャイニーズ・タイペイとの親善試合から始まり、韓国遠征、太田でのニュージーランド戦、そして有明アリーナではアンゴラ、フランス、スロベニアと戦いました。手応えを感じながら沖縄に入れたのではありませんか?
「渡邊(雄太)さんがアンゴラ戦をケガしてしまい、その後の2試合に欠場したことで、難しいところもあったのですが、ある程度チームとして確立できた状態でワールドカップに臨めたのかなと思います」
――初戦のドイツ戦は敗れたとはいえ、スコア的には後半は勝っていました。粘れた内容でした。それがあったからフィンランド戦にいい状況で臨めたのでしょうか?
「いつもと変わらず、いつもと同じバスケをしようと考えていました」
――何か特別な準備をしたのですか?
「フィンランド戦に限らず毎試合特別な準備をしていました。これは大会を通してスタンダードになっていったと思います」
――日本バスケットボール協会がYouTubeチャンネルにアップしている【INSIDE AKATSUKI】の中に『チーム雑草魂』がフィーチャーされていました。吉井選手をはじめ、川真田(紘也)選手、西田(雄大)選手、井上(宗一朗)選手がベンチで盛り上げようとしていますかが、これは自然発生したものですか?
「ある程度役割分担みたいなものが、誰かが言わずともチームで出来ていました。それをトムさんがテレビで指摘してくれましたけど、僕自身そういった役割も大事だとクラブ(A東京)に入って教わったので。『そういった考え方もある』と思っています
主力、控えの区別なく、ベンチからのサポートがあつかったのも今大会の特徴 【(C)バスケットボールキング/伊藤大允】
「当然プレーも含めて全部が全部できたら、チームを支えることになるのですけど、できないところを無理に気取ってやろうとしすぎず、自分のできるところをやるということですね」
――順位決定戦の初戦、ベネズエラ戦はビハインドを追う展開になりました。
「ベネズエラがかなりバスケットをしていたのもあり厳しい戦いになりました。負けてもおかしくない試合だったと思います。あの試合は本当に比江島(慎)さん頼みでしたね。本当に頼りになる先輩です。」
――最終戦のカーボベルデ戦は唯一リードして第4クォーターを迎えました。ただ、最終クォーターに入って全く点が入らない状況になり、ジリジリとカーボベルデに追い上げられる展開に。その状況の中、残り20秒にジョシュ・ホーキンソン選手がコーナーから3Pシュートを決めました。アシストしたのは吉井選手でしたが、どのようなことを考えていたのですか?
「(ホーキンソンが)待っているのはわかっていたので、そこにパスするだけでしたね」
――この試合に勝利して、パリ2024オリンピック出場権を獲得しました。その時の気持ちは?
「本当にうれしかったですね。歴史的な一日に関われたことは本当に幸せだと思います」
――試合終わった後の沖縄アリーナの歓声やファンの皆さんの大合唱も印象的でした。
「そうですね。今はそれをかき消すぐらい、今アルバルクで日々切磋琢磨しています」
日本一丸となってパリ2024オリンピック出場を決めた男子日本代表 【(C)バスケットボールキング/伊藤大允】
代表活動で学んだのはファンの後押しとスカウティングの重要性
「いやどうなんですかね。成長したとは思わないですけど、しっかりやり切れれば勝てる試合もあるということを学べたことは成長と言えるかもしれませんね」
――手応えのあるプレーはありましたか?
「プレーによって通ずる部分もありました」
――大会を通じて何か思い出に残っているプレーなどありますか。
「全部じゃないですかね」
――思い出に残っている瞬間は?
「パリ2024オリンピック出場を決めた瞬間です」
――そのとき吉井選手どこにいましたか?
「勝利した瞬間はコートで手挙げてジョシュ(ホーキンソン)と抱き合っていました」
カーボベルデ戦の勝利の瞬間、吉井はホーキンソンと抱き合い、健闘を称え合った 【(C)バスケットボールキング/伊藤大允】
「日本のチームとして、ある程度のところまで戦えるなと感じました」
――体を張ったディフェンスによる吉井選手の貢献は大きかったと思います。
「まあそういった場面はかなりありましたね。状況によっては『止められる』という手応えもありました」
――ワールドカップの予選を含めて、今回の代表活動の中で何を学びましたか?
「ファンの皆さんの歓声が本当に力になるっていうということですね」
――沖縄アリーナの歓声はアルバルク東京の一員として琉球ゴールデンキングスと戦ったときとは違うものだったと思います。
「本当にすごかったです。ファンの皆さんの歓声があれだけチームの後押しをするんだって初めて実感しました」
沖縄アリーナに駆けつけたファンの声援が日本代表を後押しした 【(C)バスケットボールキング/伊藤大允】
「スカウティングの大事さを学びました」
――ホーバスHCは「みんなを信じる」とずっといい続けていました。吉井選手はその言葉をどのように受け止めていましたか?
「もう言葉のままです」
――あとは自分たちがやるだけという感じですか?
「それ以上のことはできないので、もう信じるしかないです」
パリ2024オリンピックに向けてステップアップできるシーズンに
「これまでやってきたことを常に正確に遂行し続けたうえで、自分としてももうちょっと何か…、まだその何かを見つけられてはいないのですが、何かステップアップできるところがあれば、それを目指したいと思っています」
――デイニアス・アドマイティスHCの体制が2シーズン目を迎えます。今シーズンは多くのポイントガードが加入したり、外国籍選手が2人替わったりとロスターが大きく変化しました。
「本当に今年のチームは優勝が狙えると思っています」
――新しい選手とのコミュニケーションはどうですか?
「コミュニケーションの部分はこれからのところが多いのですが、練習中でも伝えたいことは積極的に伝えています」
――プレーとしての変化はどうですか?
「昨シーズン、 コーチたちが遂行してほしいと言われていたにも関わらずできなかった部分のところを、今回の補強によってできるようになっていくと思います」
――Bリーグの開幕を楽しみにしているファン・ブースターがいます。メッセージをいただけますか。
「夏のワールドカップで楽しんでくださった方たちもBリーグを見ていただければ、それと同じぐらい熱狂的に応援できる環境だと思います。初めてバスケットを見る方も好きになるチームを見つけていただいて、ぜひ会場に足を運んでください。その会場ごとに違う楽しさがあります。それを提供するのは選手の頑張りです。日本のバスケ界をより盛り上げるために頑張りますので、ぜひ会場で応援をよろしくお願いします」
クラブに合流した吉井は早くもプレシーズンマッチに出場 【(C) ALVARK TOKYO】
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