県準々決勝で敗れセンバツは絶望的に もっと見たかった東邦の“新チーム”

尾関雄一朗
 今年春のセンバツ甲子園でベスト16入りした東邦高校(愛知)。しかし秋の新チームは愛知県大会準々決勝で敗れ、2年連続でのセンバツ出場は絶望的となった。敗れた豊川高校戦は序盤に3失点して後手にまわり、打線は好機でタイムリーが出なかった。長い“冬”に突入するが、チームは攻守に魅力があり、春の公式戦での躍動を楽しみに待ちたい。

12残塁響き敗退「力不足です」

秋季愛知県大会の準々決勝で敗れ、試合後うつむき加減でベンチに戻る東邦ナイン。来年春のセンバツ出場は絶望的となった 【写真:尾関雄一朗】

 この秋の愛知県大会で、東邦は準々決勝で敗退した。甲子園出場歴のある有力私学・豊川に対し、1対3で競り負けた。来年春のセンバツ甲子園に出場するためには、愛知県大会で3位以内に入り、その後の東海大会で好成績を収めることがほぼ必須の条件。2年連続での春の聖地は絶望的となった。

「力不足です」。試合後、東邦の山田祐輔監督は開口一番にそう言い、「完敗でした」と潔かった。一見さばさばとした様子で、豊川の戦いぶりをまず称えていたが、押し殺す悔しさは相当のはずだ。

「相手の守備がうまかったですね。特に二遊間にしっかり守られました。相手の守備ミスなどをきっかけに点を取っていきたいところですが、そういう展開になりませんでした。相手ピッチャーも粘り強く、あと一本が出ませんでした」(山田監督)

 攻撃は毎回のように得点圏に走者を進めながら、6回表に遊撃ゴロで挙げた1点のみにとどまった。すっきりとしたタイムリーが一向に出ない。2点ビハインドを追う最終回も1死二、三塁の同点機をつくったが、3番・大島善也、4番・高柳大治が内野ゴロに倒れ、無得点で万事休した。残塁は12個を数えた。

 高柳は凡退した最後の打席を振り返り、唇を噛む。

「相手ピッチャーの内角攻めの傾向は聞いていて、狙っていた内角のストレートがきましたが、うまくとらえきれず、その前の打席と同じようなショートゴロになってしまいました。チャンスに強いバッターになるために、自分を鍛えていかないといけません」

相手の攻勢ムードの前に初回4四球

準々決勝の2回裏、豊川の強打者・モイセエフに三塁打が出て、一塁走者・高橋賢がホームイン。東邦は3点目を失った 【写真:尾関雄一朗】

 ディフェンス面では、初回から劣勢にまわった。先発の杉浦成海がこの回だけで4四球を与え、押し出しで2点を献上。捕手の高柳は「杉浦は初回に慌てるようなタイプではないのですが……。初回を軽く入りすぎたというか、試合の入りをケアできなかった自分の準備不足です」と自らを責めた。

「初回は精神的な弱さが露呈したし、準備の面でも十分でないところがありました。接戦で投げ切るメンタルや、勝負に向かう姿勢がまだまだ足りない。ここぞの場面で『やってやろう』という気迫が出ず、雰囲気にのまれていました」と山田監督は厳しく指摘する。

 対照的に、豊川ナインは終始、気持ちで上回っているように見えた。序盤から豊川優位の展開でそう映っただけかもしれないし、精神論を強調するつもりもないが、雰囲気の良さは目立っていた。

 実は豊川はこの試合の前まで、県大会の東邦戦で7連敗(2013年秋から22年秋)していた。それに終止符を打った形だ。「試合前から『東邦だけに勝ってないぞ、どうするんだ』とナインに話していました。選手たちが気持ちを前面に出してくれました」とは豊川の長谷川裕記監督。押せ押せムードで攻撃し、投手はピンチでも臆することなく腕を振った。

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著者プロフィール

1984年生まれ、岐阜県出身。名古屋大を卒業後、新聞社記者を経て現在は東海地区の高校、大学、社会人野球をくまなく取材するスポーツライター。年間170試合ほどを球場で観戦・取材し、各種アマチュア野球雑誌や中日新聞ウェブサイトなどで記事を発表している。「隠し玉」的存在のドラフト候補の発掘も得意で、プロ球団スカウトとも交流が深い。

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