藤嶋健人、石川昂弥、関根大気…今年のプロ野球は東邦OBが大活躍!

尾関雄一朗
 プロ野球ペナントレースはいよいよ終盤戦。ここまで印象に残ったことの一つに、東邦高OBたちの活躍を挙げたい。東邦高から高卒で直接プロ入りした選手は、現役で3人いる。地元・中日の藤嶋健人と石川昂弥、さらにDeNAの関根大気だ。所属チームにおいて今年、彼らの働きぶりや存在がポイントとなった。高校当時の取材やプレーぶりをもとに、今年の活躍を味わい返してみたい(成績は全て8月27日現在)。

連続無失点リリーフの藤嶋健人

高校1年夏の愛知大会で優勝投手となり、歓喜の輪の中心で両手をあげる藤嶋健人。甲子園でも勝利を挙げた 【写真:尾関雄一朗】

 藤嶋は今季、ここまで43試合に登板している。清水達也と並びチーム最多だ。特筆すべきは、7月1日のDeNA戦から22試合連続で無失点投球を続けていることだ。安定感を増し、チームの台所を支えている。

 高校時代から、玄人受けする“武器”があった。不利なボールカウントになっても、変化球でストライクを取り、カウントを立て直せることだ。当時はカットボール、今ならスプリットなどがその球種。高校生の速球派の場合、制球に苦しむ投手も少なくない中、藤嶋は卓越した投球センスを備えていた。

 高校当時、投手としてはズバ抜けたものに欠けるという見方ゆえ、高校通算49本塁打の打撃を推す声もあった。しかし、こうしたマウンドさばきを見た中日サイドは「打者に立ち向かっていくタイプだけどクレバーさがある。ピンチでの投球が光る」(中田宗男スカウト部長=当時)と、一貫して投手として評価していた。

中日ブルペン陣を支える藤嶋。高校時代から今の活躍に通じるものを見せていた 【写真は共同】

 大事な場面での強さや、調子に左右されない点も、今の活躍に通じる。高校1年夏からエース格としてチームを甲子園に導き、3年春夏も甲子園に出た。最後の夏は状態が悪く、球速は落ち込んだが、前述の投球センスや、クイックモーション、フィールディングの良さなど“投げる以前”の部分がしっかりしていたから、大きく揺らぐことはなかった。

 陽性のオーラを放つ藤嶋。その存在は、東邦の部の雰囲気も変えたという。以前、小嶋裕人部長(当時)を取材した際、「藤嶋の学年ぐらいから、キツイ練習でも笑顔で、自分たちからやるように変わっていった感じがある」と聞いた。3年夏の甲子園での大逆転劇(八戸学院光星戦)も、ムードの良さが影響したのだろうか。

 負けが込む中日にあって、藤嶋の力投は我々ファンにも元気を与えてくれている気がする。

スターへの階段上る石川昂弥

高校1年秋の東海大会準決勝。1点ビハインドの9回表二死一塁で逆転弾を放った石川昂弥。翌春のセンバツ出場を引き寄せた 【写真:尾関雄一朗】

 最下位に甘んじる今季の中日で、希望を感じさせる「4番・石川昂弥」。プロ4年目の若き大砲は今季、ここまで68試合でスタメンで4番を張った。出場92試合で12本塁打を放ち、チームの看板選手としての階段を上っている。

 石川も藤嶋と同様、高校時代はチームの将来を担う者と期待された。「最初にプレーを見て、東邦を一つ上のステージに上げてくれる男だと思った」(森田泰弘監督=当時)。その期待に応え、高校3年春のセンバツではエース兼主軸打者として優勝の原動力となった。

 勝負所で打つ、星の強さが印象的だった。センバツ決勝での2本塁打で全国区となった一方、地元の高校野球ファンに衝撃を与えたのが高校1年秋。翌春のセンバツにつながる秋季東海大会準決勝で、9回表二死の土壇場で右中間へ逆転弾を放った。「右へのホームランは初めて。高校でバッティングの状態が上がらない中、ようやく自分のバッティングができてきました」(石川/当時の談話より)。

高校時代から風格十分だった石川。4年目の今季は自身初の2ケタ本塁打をマークしている 【写真は共同】

 今年、中日は柳裕也がノーヒット投球のまま9回でマウンドを降り、その後10回表に勝ち越される試合があった(8月13日)。10回裏に石川が起死回生の同点弾を放ったのだが、ああいう場面で一振りで試合の流れを変えてしまう魅力が、石川には宿る。

 高校時代から風格十分で“大物感”があった。取材などでも堂々としていて、媚びるような感じがまったくなかった。頼もしい限りである。

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著者プロフィール

1984年生まれ、岐阜県出身。名古屋大を卒業後、新聞社記者を経て現在は東海地区の高校、大学、社会人野球をくまなく取材するスポーツライター。年間170試合ほどを球場で観戦・取材し、各種アマチュア野球雑誌や中日新聞ウェブサイトなどで記事を発表している。「隠し玉」的存在のドラフト候補の発掘も得意で、プロ球団スカウトとも交流が深い。

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