今季は5人がJ内定 地方から13年連続でJリーガーを生む仙台大の育成方針とは?
ベルギー1部に移籍した松尾(右)ら、仙台大は近年Jリーグに多くの選手を輩出する 【Photo by Isosport/MB Media/Getty Images】
仙台大のJリーガー輩出は、今年で13年連続だ。20年に卒業したMF松尾佑介は、在学中から特別指定選手として横浜FCで出場機会を獲得。浦和レッズを経て、今年1月にベルギー1部のウェステルローへ移籍と飛躍している。プロ選手輩出が続いている背景には、2014年からJリーグが3部(J3)まで拡張したことや、海外進出を含めて移籍が活発化し、Jクラブの若手需要が高まったことも関係しているが、それは他大学も同じ。地方のハンデを抱える仙台大は、いかにして選手育成で評価を得るようになったのか。
選手獲得には、今も苦悩
仙台加入内定のDF石尾は、JFAアカデミー福島U-18出身。周囲の評価を大きく覆してプロ入りを果たした成長株だ 【写真提供:全日本大学サッカー連盟/飯嶋玲子】
関東に劣る環境を逆利用。加点主義評価で個性を伸ばす
リスクを負ってもトライを評価。それは、強豪ひしめく関東リーグでは、多くのチームが成績との兼ね合いで苦しんでいる部分でもある。強化指定の部活動に成績を求めない学校はない。どれだけリスクを負えるか、さじ加減が難しい。吉井総監督は、関東との比較から個性と特長を考えたという。
「向こうは、ハイレベルでハイテンポのプレーができなければ生き残れない。うちにも必要だが、同じことをやるのは難しい。うちにはトライするための余裕がある。その違いが特長と考えた」(吉井総監督)
関東に比べれば競争力を欠く東北大学リーグの実情を逆手に取った考えだ。多少のリスクを負っても東北リーグで16年連続優勝。全国大会に出場し続け、伸び伸びと育った選手がチームをけん引し、プロにも進む。育成重視の方針は、地方のハンデをアドバンテージに変える戦略でもあった。
高校世代の指導者が評価、隠れた好素材が続々
水戸に加入内定のFW得能は、青森山田高出身 【写真提供:全日本大学サッカー連盟/飯嶋玲子】
ほかにも、隠れた逸材を送ってくれる指導者が出て来た。青森山田高校の正木昌宣監督は、仙台大OB。ヘッドコーチ時代から、関東の強豪大で思うような評価を得られない好選手を推薦。その中からMF嵯峨理久(J2いわき)らがプロに進んでいる。GK井岡海都(鳥取)は、市立船橋高校でインターハイ優勝メンバーになっているが、まだ先発に定着せず3番手だった春に、伊藤竜一GKコーチ(現、熊本GKコーチ)から推薦があって獲得した選手だった。少しずつ「育てれば伸びる」選手が来る状況が整いつつある。