今季は5人がJ内定 地方から13年連続でJリーガーを生む仙台大の育成方針とは?

平野貴也

スタッフも「組織・環境」の整備・強化に挑戦

 多くのJリーガーを送り出す地方大学としての地位を確立しつつある仙台大だが、特長がもう一つある。進化し続ける環境整備だ。吉井総監督は、体育大学であることの特長を生かし、学内のトレーナーが筋力強化の指導を依頼。週休2日制も採用。選手に休養を与えるためだけでなく、活動資金に悩まされる学生がアルバイトをする時間を生み出すためでもあった。とにかく新しいものに飛びつき、常に刺激を探している。

 ピッチ内では、戦術面も、ボールを大事にする方針は変えないが、5レーンなど欧州の最新トレンドを積極的に採り入れている。AIカメラを導入して、選手が自身のプレーを見直せる環境を整備。年数回のAI分析結果のシェアも行っている。コンディション管理も専用アプリを活用。データ分析を半年単位で選手へフィードバック。第3者の評価を得ることで、睡眠時間が他チームよりも優れていることに気付いたという。

 19年の天皇杯出場時には、クラウドファンディングを実施。昨年10月には部活動・教育機関によるトークン発行を日本で初めて行うなど、他に先駆けた挑戦を多く行っている。部活動の地域移行への貢献なども進めている。

「毎年、必ず何か新しいものを採り入れて、これに挑戦しながらやってほしいとスタッフにも伝えています。苦労するし、失敗するかもしれないけど、まずやってみる。監督が失敗すれば、みんなも失敗しやすい(笑)。指導者も、選手も、その経験が次の進路で生きる。どんどんトライして新しいことをやっていかないと、地方で人は集まらないし、維持もできない」(吉井総監督)

 現在は「持続可能(SDGs)でハピネス関係度(心理的安全性)の高いチーム作り」が、名刺の表に記されているチームビジョンだ。苦戦中のプロジェクトもあると明かして苦笑いを浮かべた吉井総監督だったが、新しいものを探して積極的に挑戦する姿勢を崩すつもりはない。大手商社を辞めてサッカーに生きることを決めたきっかけは、読書を通じて知った「死ぬときに後悔するのは、やって失敗したことではなく、やらなかったことだ」という言葉。常に新しい挑戦を求め続ける組織・環境が、選手躍進の背景になっている。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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