連載:欧州サッカー23-24シーズンの論点は?

“欧州サッカーマニア”林陵平が推す注目若手7人 トップ3を占めたのは赤丸急上昇中のプレミア勢

吉田治良

チームメイトの三笘もその才能を高く評価するブライトンのストライカー、ファーガソン。林氏も「まだ18歳というのが信じられない」と、完成度の高さに舌を巻く 【写真:ロイター/アフロ】

 今シーズンの欧州リーグで必見の若手タレントは誰か? ここでは“欧州サッカーマニア”として知られる元Jリーガーで解説者の林陵平氏に、今から目をつけておいて損はないスター候補生7人を厳選し、注目度順にランク付けしてもらった。通もうなるマニアックな顔ぶれが並ぶ中、上位を占めたのはプレミアリーグの逸材たちだった。

7位:ポントゥス・アルムクビスト(FW/24歳/レッチェ)

ラツィオとのセリエA開幕戦で、終了間際に同点ゴールを挙げるなどインパクトを残したレッチェのアルムクビスト。そのドリブルはロッベンを彷彿とさせる 【Photo by Maurizio Lagana/Getty Images】

 最初に紹介したいのが、レッチェのスウェーデン人ウインガー、アルムクビストです。今シーズン、ロシアのロストフからレンタルで移籍してきた(昨シーズンはポーランドのポゴニ・シュチェチンでプレー)選手で、先日、鎌田大地選手が加入したラツィオとのセリエA開幕戦を見て、めちゃくちゃいい選手だなって思ったんです。

 レフティで4-3-3の右サイドを担当している、いわゆる逆足のウイングなんですが、一番の魅力はカットインからのパンチの効いた左足フィニッシュ。タイプ的にはかつてのアリエン・ロッベンに近いですね。ドリブルも多彩で、タッチが繊細だから、トップスピードでもボールが足元から離れない。

 現代サッカーではウイングがどれだけ仕掛けられるか、いかに1対1で優位性を出せるかがとても重要。ガチガチに守備を固められたときに、マーカーを個の力で剥がせるドリブラーの存在ってすごく大きいんです。その意味で、縦にも中にも強気に仕掛けていくアルムクビストは、とても興味深いタレントでしょう。ボールを持ったら何かをやってくれるんじゃないかって、ワクワク感を与えてくれる選手ですね。

 ラツィオ戦ではゴールを決めた後にバク宙パフォーマンスを披露していたように、身体能力も抜群。それにブロンドのイケメンでもあるので、女性ファンにもぜひチェックしてもらいたいですね(笑)。

6位:ジョルジ・ママルダシュビリ(GK/22歳/バレンシア)

2メートル近い長身ながら、反応スピードがとてつもなく速いママルダシュビリ。林氏が評価するのは、キャッチングやパンチングといった基本技術の高さだ 【Photo by Fran Santiago/Getty Images】

 ジョージア代表の若手と言えば、ナポリのアタッカー、フビチャ・クバラツヘリア(22歳)が有名ですが、バレンシアでデビュー3年目のゴールキーパー(GK)、ママルダシュビリも注目すべきタレントですね。

 2メートル近い長身なんですが(199センチ)、とにかく俊敏。反応スピードがとてつもなく速くて、シュートストップの能力がとても高い。長い手足を利して、際どいコースに飛んだシュートも難なく弾き出してしまうんです。

 現代サッカーでは足元の技術もGKには要求されます。もちろんママルダシュビリもビルドアップのセンスを備えていて、さらに左利きという点もアピールポイントでしょう。ただ、GKはいかに相手のシュートを確実に止められるかが、なによりも大切。キャッチング、パンチング、ハイボールへの対応といった基礎技術が高く、これといった穴が見当たらないママルダシュビリは、間違いなく数年後にはビッグクラブに引き抜かれているでしょう。

 加えて、22歳という若さながら、メンタル面もしっかりしている。シュートを打たれると、チームメイトに文句を言うGKは少なくありませんが、彼の場合はゴールマウスにどっしりと構えていて、ピンチにも感情をあらわにすることが滅多にないんです。そういったところにも器の大きさを感じます。

5位:ラヤン・シェルキ(FW/20歳/リヨン)

リヨンのシェルキは、現代サッカーでは希少となったクラシカルなトップ下タイプ。左右両足から質の高いスルーパスを供給し、決定機をクリエイトする 【Photo by Marcio Machado/Eurasia Sport Images/Getty Images】

 16歳でリヨンのトップチームにデビューした逸材です。一時伸び悩んでいた時期もあったシェルキですが、昨シーズンのリーグアンで4得点・6アシストを記録するなど、メキメキと頭角を現しています。

 いわゆるファンタジスタ系で、プレー選択のアイデアが独創的。しかも両利きで、左右の足をそん色のないレベルで使いこなせる点は、大きな長所でしょう。基本的にはトップ下ですが、左右のウイングなど、攻撃的なポジションならどこでもできます。

 ボールコントロールが巧みで、フェイントを駆使したドリブルも持ち味ですが、一番見てほしいのは高精度のスルーパスですね。華麗なラストパスで、元フランス代表のストライカー、アレクサンドル・ラカゼットらに決定機を提供します。

 メンタル面の浮き沈みが激しく、運動量も不足しているので、時々守備をサボったりもしますが、それもまたファンタジスタらしい(笑)。まだ20歳ですから、これから課題を克服していけば、きっと多くのクラブからオファーが届くでしょう。

 現代サッカーでは希少となった、クラシカルなトップ下タイプ。彼にボールが渡ると、何かが起こりそうな期待感がありますし、実際にワンプレーで大きな違いを作り出してしまう。欲を言えばもう少しゴール数を増やしたいところですが、とくにオールドファンにはたまらない魅力を持ったタレントだと思いますよ。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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