敗戦直後から始動した東邦の新チーム 2つの「0-2」から巻き返す“秋の始まり”
山田祐輔監督の話を聞く新チームの東邦ナイン。来年春のセンバツ甲子園を目指す戦いが始まっている 【尾関雄一朗】
早すぎた夏の終わり
流れは来なかった。両チーム無得点のまま迎えた試合終盤。東邦は8回表、9回表にタイムリーヒットで1点ずつ失った。絶体絶命の9回裏の攻撃では、二死一、二塁のチャンスを作り、1番・中村騎士がレフト前ヒットを放った。しかし一塁走者が二塁ベース過ぎでタッチアウトになり、ゲームセットとなった。
攻撃に精彩を欠いた。フライでのアウトは15個を数えた。
「相手のピッチャーがしっかりインコースを使って投げてくる中、バッター陣が修正しきれず、苦戦するパターンにはまりました。『いい打球を打ちたい』『こういう打撃がしたい』という気持ちが強すぎて、イメージに合わない球を見逃し、消極的になっていた面もあります。積極的に振りにいっていたら、もっとチャンスはあったかもしれません」
監督就任後、3度目の夏(※コロナ禍で途中辞退した独自大会を除く)を終えた山田祐輔監督はそう振り返り、唇を噛む。
「もう少し可能性のある攻撃ができたのではないかと、私自身も反省しています。ベンチの中には『どうにかなるだろう』という雰囲気が漂っていました。チームはこれまでの公式戦で、打順の2巡目、3巡目で得点するスタイルを築いてきました。ただ星城戦は、工夫のないまま『何とかなるだろう』という楽観視だけが残ってしまった感じです」
「何とかなるだろう」というと慢心のようにも聞こえるが、東邦とて必死で、けっして油断していたわけではない。相手の強さも織り込み済みだ。つとめて前向きに後半勝負をもくろむ中、結果的に悠長に構えすぎてしまったというところだろうか。
早すぎる夏の終わりに、2年生たちも呆然となった。背番号19でベンチ入りしていた投手兼外野手の小西正人は「負けた瞬間、今までやってきたことが、一瞬で無くなるような感じがしました」と話す。
夏に1敗したからといって、センバツ甲子園で2勝したチームの偉業は消えない。ただ、夏の甲子園、さらにその先の全国制覇をゴールとしてきた当人たちにとって、悔しさの残る結果となった。
1年生大会での「東邦0-2星城」
投手陣は小西正人(写真手前)や片山恭、杉浦成海など最速140キロ超の2年生が複数いる。誰が一本立ちするか 【尾関雄一朗】
「2年生たちには、チームワークや野球に向かう姿勢を強く訴えました。みんなでカバーし合って戦わないといけない。この学年は、野球に対する積極性がもう一つ感じられない面があったので、選手一人一人が『こんなもんでいいや』と妥協してほしくないんです」
今度の新チームは必ずしも、勝算に満ちた船出ではない。むしろ危機感が強い。というのも、2年生たちは昨年秋、県の上位勢16校による「1年生大会」で初戦敗退を喫している。相手は星城で、スコアは0対2だった。奇しくも、この夏の結果と同じである。試合内容も似ていて、制球の良い相手投手に内角を攻められた。
現状、チームには絶対的な柱がいない。まだ練習試合が少なく、具体的な布陣は今後探っていくが、それ以前にキャプテンの適任者が見当たらない。今は「日替わりキャプテン」で運営されている。また、これまでの投手陣を宮國凌空、山北一颯、岡本昇磨の3年生が担ってきた分、2年生投手陣は未知数である。
「前のチームは、石川(瑛貴)がダントツでキャプテンシーがあり、眞邉(麗生)がサポートしながら、プレーでは中村が引っ張る形でした。『あいつが言うなら大丈夫』という存在が石川で、周囲に安心感を与えていました。ピッチャー陣も、宮國が投げていれば形になっていました。今回の新チームは、これらの点で差があります」(山田監督)