敗戦直後から始動した東邦の新チーム 2つの「0-2」から巻き返す“秋の始まり”

尾関雄一朗

山田祐輔監督の話を聞く新チームの東邦ナイン。来年春のセンバツ甲子園を目指す戦いが始まっている 【尾関雄一朗】

 夏の甲子園大会開幕をあす6日に控える中、惜しくも出場できなかった高校は、既に“新チーム”をスタートさせている。愛知大会4回戦で敗れた強豪・東邦高校もその一つだ。世代が代わり、今度は2年連続のセンバツ甲子園出場を目指していく。この夏を振り返り、秋の始まりをレポートする。

早すぎた夏の終わり

 東邦はこの夏、愛知大会4回戦で姿を消した。県内上位の私立校・星城に対し、0対2で敗れた。

 流れは来なかった。両チーム無得点のまま迎えた試合終盤。東邦は8回表、9回表にタイムリーヒットで1点ずつ失った。絶体絶命の9回裏の攻撃では、二死一、二塁のチャンスを作り、1番・中村騎士がレフト前ヒットを放った。しかし一塁走者が二塁ベース過ぎでタッチアウトになり、ゲームセットとなった。

 攻撃に精彩を欠いた。フライでのアウトは15個を数えた。

「相手のピッチャーがしっかりインコースを使って投げてくる中、バッター陣が修正しきれず、苦戦するパターンにはまりました。『いい打球を打ちたい』『こういう打撃がしたい』という気持ちが強すぎて、イメージに合わない球を見逃し、消極的になっていた面もあります。積極的に振りにいっていたら、もっとチャンスはあったかもしれません」

 監督就任後、3度目の夏(※コロナ禍で途中辞退した独自大会を除く)を終えた山田祐輔監督はそう振り返り、唇を噛む。

「もう少し可能性のある攻撃ができたのではないかと、私自身も反省しています。ベンチの中には『どうにかなるだろう』という雰囲気が漂っていました。チームはこれまでの公式戦で、打順の2巡目、3巡目で得点するスタイルを築いてきました。ただ星城戦は、工夫のないまま『何とかなるだろう』という楽観視だけが残ってしまった感じです」

「何とかなるだろう」というと慢心のようにも聞こえるが、東邦とて必死で、けっして油断していたわけではない。相手の強さも織り込み済みだ。つとめて前向きに後半勝負をもくろむ中、結果的に悠長に構えすぎてしまったというところだろうか。

 早すぎる夏の終わりに、2年生たちも呆然となった。背番号19でベンチ入りしていた投手兼外野手の小西正人は「負けた瞬間、今までやってきたことが、一瞬で無くなるような感じがしました」と話す。

 夏に1敗したからといって、センバツ甲子園で2勝したチームの偉業は消えない。ただ、夏の甲子園、さらにその先の全国制覇をゴールとしてきた当人たちにとって、悔しさの残る結果となった。

1年生大会での「東邦0-2星城」

投手陣は小西正人(写真手前)や片山恭、杉浦成海など最速140キロ超の2年生が複数いる。誰が一本立ちするか 【尾関雄一朗】

 新チームのスタートは7月21日。愛知大会4回戦で敗れたその日の夕方だ。試合会場から自校グラウンドへ戻り、山田監督が1、2年生にノックを打った。

「2年生たちには、チームワークや野球に向かう姿勢を強く訴えました。みんなでカバーし合って戦わないといけない。この学年は、野球に対する積極性がもう一つ感じられない面があったので、選手一人一人が『こんなもんでいいや』と妥協してほしくないんです」

 今度の新チームは必ずしも、勝算に満ちた船出ではない。むしろ危機感が強い。というのも、2年生たちは昨年秋、県の上位勢16校による「1年生大会」で初戦敗退を喫している。相手は星城で、スコアは0対2だった。奇しくも、この夏の結果と同じである。試合内容も似ていて、制球の良い相手投手に内角を攻められた。

 現状、チームには絶対的な柱がいない。まだ練習試合が少なく、具体的な布陣は今後探っていくが、それ以前にキャプテンの適任者が見当たらない。今は「日替わりキャプテン」で運営されている。また、これまでの投手陣を宮國凌空、山北一颯、岡本昇磨の3年生が担ってきた分、2年生投手陣は未知数である。

「前のチームは、石川(瑛貴)がダントツでキャプテンシーがあり、眞邉(麗生)がサポートしながら、プレーでは中村が引っ張る形でした。『あいつが言うなら大丈夫』という存在が石川で、周囲に安心感を与えていました。ピッチャー陣も、宮國が投げていれば形になっていました。今回の新チームは、これらの点で差があります」(山田監督)

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著者プロフィール

1984年生まれ、岐阜県出身。名古屋大を卒業後、新聞社記者を経て現在は東海地区の高校、大学、社会人野球をくまなく取材するスポーツライター。年間170試合ほどを球場で観戦・取材し、各種アマチュア野球雑誌や中日新聞ウェブサイトなどで記事を発表している。「隠し玉」的存在のドラフト候補の発掘も得意で、プロ球団スカウトとも交流が深い。

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