野球界で輝きを放つ東北出身者と東北の強豪校

仙台育英の最強投手陣、花巻東の怪物スラッガー佐々木麟太郎…東北6県の甲子園出場校が誇る「武器」とは?

高橋昌江

世代最強打者・佐々木麟太郎(左)を擁する花巻東は、4年ぶりの夏の甲子園。連覇がかかる仙台育英は、昨夏の甲子園で胴上げ投手になった高橋煌稀(右)ら全国随一の強力投手陣を抱える 【写真は共同】

 第105回全国高校野球選手権大会が8月6日に開幕する。昨夏は仙台育英(宮城)が頂点に立ち、東北地方に春夏通じて初めてとなる優勝旗をもたらした。あれから1年。仙台育英が優勝旗を返還し、新たな戦いが始まる。

 全国的には初出場校や久しぶりの出場が目立つが、東北勢は2年連続が3校、2年ぶりが2校、最長でも花巻東(岩手)の4年ぶりで、10回以上の出場回数を誇る常連校ばかり。青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島の各地方大会を勝ち抜いた6校は、それぞれどんな特徴を持ち、どれだけの可能性を秘めているのか。

八戸学院光星(青森) 2年連続12回目

セールスポイントは打力。県大会で5割超の打率を残した切り込み隊長・砂子田が打線に火をつける 【YOJIJ-GEN】

 春の県大会は決勝で八戸工大一に2-3で敗れ、夏は第2シードで臨んだ。初戦(2回戦)では、弘前工のプロ注目右腕で最速149キロを誇る成田晴風(3年)と対峙。9三振を喫したが、中澤恒貴主将(3年)、藤原天斗(3年)が本塁打を放つなど、10安打8四死球で11得点を挙げた。以降も二桁安打を放ち、チームカラーである打力を十分に発揮。青森山田との準決勝も11安打と打線が活発だった。

 青森大会におけるチーム打率は.353。砂子田陽士(2年)がチームトップの打率.529で、二塁打を6本放つなど攻撃的なリードオフマンだ。2本塁打の藤原は11打点を挙げており、昨夏もレギュラーだった中澤恒主将も2本のアーチを描いている。

 投手は岡本琉奨、洗平比呂の両2年生左腕が軸。背番号1をつけた岡本は最速148キロ、昨夏の甲子園でマウンドに上がっている洗平は最速147キロとスピードがあり、ともに変化球の精度も高い。

 甲子園帰りの昨秋は県大会初戦(2回戦)で弘前東に敗れ、公式戦未勝利でオフシーズンに突入した。春は県準優勝だったが、東北大会決勝で仙台育英を破り、17年ぶりに優勝。長い冬を経て地力を上げており、甲子園でも勝ち上がる力を持っている。

花巻東(岩手) 4年ぶり11回目

県大会の準決勝、決勝でいずれも10点を叩き出したように、打線は切れ目がない。3番・佐々木麟太郎(写真中央)の後を打つ千葉、北條も長打力を秘め、1・2番の久慈、熊谷の巧打も光る 【写真は共同】

 高校通算140本塁打の佐々木麟太郎(3年)が注目を集める。その本塁打数が目を引くが、3年生になり、パワーに加えて確実性も向上している。佐々木だけでなく、千葉柚樹主将(3年)、北條慎治(3年)も長打力があり、上位の久慈颯大(3年)、熊谷陸(3年)は巧打が光る。廣内駿汰(3年)は足が速く、長短打を織り交ぜた攻撃が特徴だ。

 岩手大会の全5試合で打点を挙げた北條は、背番号1で最速145キロの本格派右腕。右肘痛から復帰し、中軸を担いながらマウンドにも上がる。2年生右腕・小松龍一は最速147キロの直球に変化球の精度も高く、全国デビューが待ち遠しい。さらに3回戦で先発した正遊撃手の熊谷、右サイドの中屋敷祐介、2年生左腕・葛西陸など投手陣は多彩だ。

 「逆襲」をテーマに4年ぶりの甲子園出場を決めた。2年前は決勝に進出するも、当時1年生だった佐々木麟太郎が最後の打者になり、盛岡大付に敗れた。昨年は斎藤響介(現オリックス)を擁する盛岡中央と準決勝で当たり、2-3の敗北。先制を許したり、延長タイブレークまでもつれたり、途中まで拮抗したりと苦しい試合が多かった岩手大会を突破し、2年分の思いを甲子園にぶつける。

ノースアジア大明桜(秋田) 2年ぶり11回目

 2017年に輿石重弘監督が就任して以来、試合は常に決勝戦という意味の「一戦決勝」という気持ちで臨んでいる。先を考えることなく、目の前の1試合に集中。その積み重ねが優勝につながる。そんな1試合に懸ける考え方が根付いたチームは、9イニングを冷静に捉え、試合終盤での勝負所を逃さない。序盤や中盤で競っても、リードされていても、今夏は後半に強さを見せた。技量はさることながら、そんなメンタリティも明桜の強みだ。
 
 県大会では初戦(2回戦)こそ無安打だったが、以降、好調だったのが2番・土田亮太(3年)。3回戦で3ラン、決勝では逆転打を放つなど、打率.500で8打点を挙げた。3番・松橋日々生(3年)、4番・吉川新汰(3年)も勝負強い。下位の篠崎拓真(3年)、猪原空駈斗主将(3年)と俊足の1番・吉野鈴之助(3年)の出塁率が高いことが得点につながっている。

 4試合に先発したエース右腕・難波佑聖(3年)は、140キロ台の球威ある直球を軸に強気に攻める投球をする。準決勝で1失点完投するなど、3試合に登板した2年生の加藤悠羽は140キロ台の直球とスライダーでゲームメイク。登板は2試合だったものの秋田大会で好調だった松橋裕次郎(2年)、制球力の高い川口龍馬(3年)が控える。

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著者プロフィール

1987年、宮城県若柳町(現栗原市)生まれ。中学から大学までソフトボール部に所属。東北地方のアマチュア野球を中心に取材し、ベースボール・マガジン社発刊誌や『野球太郎』、『ホームラン』などに寄稿している。

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