敗戦直後から始動した東邦の新チーム 2つの「0-2」から巻き返す“秋の始まり”
異例の合宿で心身を強化
新チーム発足後の練習では、一球への執念を醸成。ユニフォームを泥だらけにし、気を抜くことなく取り組んでいる 【尾関雄一朗】
合宿では、実戦練習に多くの時間を割く中で、まずは“技術以前”の面を最重視したという。
「この時期にこれだけ日程が空くことは、あまりなかったですから。何が正解かは分からないですが、タフなチームとなるために、いろいろと試していきたい。合宿では体力的にもきつい中、気を抜く場面をなくすように注意し、チームとして大事にしたい部分を徹底しました」(山田監督)
小西は今回の合宿で、プレー中の「呼ぶ声」の重要性を再認識したと話す。
「外野からの三塁への送球とか、ショートから一塁への送球とか、送球を受ける側がジェスチャーと大きな声で呼べば、ボールがちゃんと胸元にくる精度が高まってきます。こういうことを徹底していけば、大事な場面で生きるはずです」
センバツ甲子園の報徳学園戦では、岡本、上田耕晟、藤江壮太(2年)の外野陣が揃って補殺を記録した。小さな積み重ねの先に、ビッグプレーが待つ。
小西が「昨年の秋はまだ、僕たちの学年はグラウンド外も含め、意識や気合が低いままでした。この夏の負けを経験したことで、より一層練習でも集中し、全てを出し切っていきたいと思っています」と言えば、指揮官は「各自が『もっと』と思えば、勝てるポテンシャルはある」と発破をかける。
この夏、2年生は6人がベンチに入っていた。センバツ甲子園で鮮やかな守備を見せた大島善也や、同じく守備力抜群の手島慈元が新チームの内野を固めそう。走力とポジショニングの光る外野手の藤江、強肩強打の三浦天和は試合経験も多い。捕手の高柳大治は大型だ。そして小西は、最速142キロの投手として期待がかかる。
「現時点で野球の力がある彼らが、今後引っ張ってくれれば一番いい。ただ、僕はそこにこだわりはありません。彼らが今のままでいいということは全くないし、力量の近い選手も多くいます。なにより勝利に貪欲で向上心があり、チームのために動ける者が出てこれば、その選手にチームを任せたいです」(山田監督)
チームは8月上旬に練習試合を重ね、中旬からの地区予選、9月の県大会に臨む。誰がどうチームを引っ張り、どんな形になっていくのか。夏の甲子園大会の裏で、その次の甲子園を目指す戦いが静かに熱を帯びている。