敗戦直後から始動した東邦の新チーム 2つの「0-2」から巻き返す“秋の始まり”

尾関雄一朗

異例の合宿で心身を強化

新チーム発足後の練習では、一球への執念を醸成。ユニフォームを泥だらけにし、気を抜くことなく取り組んでいる 【尾関雄一朗】

 チームは7月27日から、3泊4日で合宿を張った。夏の愛知大会で勝ち上がっていれば、準決勝以降を戦っていたはずの期間だ。ぽっかり空いたこの期間に急遽、和歌山県へ向かった。

 合宿では、実戦練習に多くの時間を割く中で、まずは“技術以前”の面を最重視したという。

「この時期にこれだけ日程が空くことは、あまりなかったですから。何が正解かは分からないですが、タフなチームとなるために、いろいろと試していきたい。合宿では体力的にもきつい中、気を抜く場面をなくすように注意し、チームとして大事にしたい部分を徹底しました」(山田監督)

 小西は今回の合宿で、プレー中の「呼ぶ声」の重要性を再認識したと話す。

「外野からの三塁への送球とか、ショートから一塁への送球とか、送球を受ける側がジェスチャーと大きな声で呼べば、ボールがちゃんと胸元にくる精度が高まってきます。こういうことを徹底していけば、大事な場面で生きるはずです」

 センバツ甲子園の報徳学園戦では、岡本、上田耕晟、藤江壮太(2年)の外野陣が揃って補殺を記録した。小さな積み重ねの先に、ビッグプレーが待つ。

 小西が「昨年の秋はまだ、僕たちの学年はグラウンド外も含め、意識や気合が低いままでした。この夏の負けを経験したことで、より一層練習でも集中し、全てを出し切っていきたいと思っています」と言えば、指揮官は「各自が『もっと』と思えば、勝てるポテンシャルはある」と発破をかける。

 この夏、2年生は6人がベンチに入っていた。センバツ甲子園で鮮やかな守備を見せた大島善也や、同じく守備力抜群の手島慈元が新チームの内野を固めそう。走力とポジショニングの光る外野手の藤江、強肩強打の三浦天和は試合経験も多い。捕手の高柳大治は大型だ。そして小西は、最速142キロの投手として期待がかかる。

「現時点で野球の力がある彼らが、今後引っ張ってくれれば一番いい。ただ、僕はそこにこだわりはありません。彼らが今のままでいいということは全くないし、力量の近い選手も多くいます。なにより勝利に貪欲で向上心があり、チームのために動ける者が出てこれば、その選手にチームを任せたいです」(山田監督)

 チームは8月上旬に練習試合を重ね、中旬からの地区予選、9月の県大会に臨む。誰がどうチームを引っ張り、どんな形になっていくのか。夏の甲子園大会の裏で、その次の甲子園を目指す戦いが静かに熱を帯びている。

2/2ページ

著者プロフィール

1984年生まれ、岐阜県出身。名古屋大を卒業後、新聞社記者を経て現在は東海地区の高校、大学、社会人野球をくまなく取材するスポーツライター。年間170試合ほどを球場で観戦・取材し、各種アマチュア野球雑誌や中日新聞ウェブサイトなどで記事を発表している。「隠し玉」的存在のドラフト候補の発掘も得意で、プロ球団スカウトとも交流が深い。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント