球団担当者が語る限定ユニフォーム制作の裏側 西武初のストライプ柄はどのように決まったのか?

三和直樹

ファンからの支持に加えて必要なもの

昨年の「WILD WILDユニフォーム」。選手会からの要望を受け全身をコーディネートしたものになった 【(C)SEIBU Lions】

――その流れから今年の「蒼空ユニフォーム」も全身ブルーでストライプ柄という今までにないデザインになっているかと思いますが?

 最終決定する前の複数案ある中から、選手会とも意見が一致したのが今回の「蒼空ユニフォーム」でした。満場一致で選ばれたので、それぐらいみんなが格好いいと思ったんだろうし、気に入ってもらったんだろうと思います。

――改めて今回の「蒼空ユニフォーム」のコンセプトを教えていただいてよろしいですか?

 一番は、コロナ禍が明けてきた中で野球界全体として元の日常を取り戻そうというテーマがあります。その上で、『ライオンズフェスティバルズ』の元々の原点であった青空の下でボールパークを楽しんでもらいたいということで「青空」を決め、そこに球団が大事にしてきたライオンズブルーを掛け合わせました。そして、チームには飛行機雲のように高く強く突き抜けてもらいたいという願いが白のストライプに込められています。結果的に、西武ライオンズとしては初めてのストライプ柄のユニフォームになったので、ファンの方にもインパクトがあったようです。

――今回の「蒼空ユニフォーム」は着心地や機能面での特徴はあるのですか?

 機能面に関しては、普段のユニフォームと違ってしまっては逆にだめなんです。デザインは変わっても、年間で着用するユニフォームと全く同じ素材で、同じ使用感になるように作っています。そこが変わってしまうとプレーに影響してしまいますから、イベント限定ユニフォームであっても機能性に関しては年間で着用するユニフォームと変わらないです。

――これまで多くの夏限定ユニフォームを制作して来ましたが、デザイン的にはいいものができてもチームが勝てない場合、その反対にチームが勝つことで人気が出るユニフォームもあったのではと思いますが?

 はい。機能性は変わらない訳ですから、ユニフォームのデザインが変わることでチームが強くなるということはないとは思うんですけど、ファンの方にとっては勝った時のユニフォームというのは思い入れが強くなると思います。特に2017年の「炎獅子ユニフォーム」の時はチームが13連勝したことがあった。どのユニフォームに思い入れがあるかはファンの方それぞれ違うとは思いますけど、今でも夏限定ユニフォームを着て球場に来られるファンの方も多いです。

――そういうファンの反応というのはやはり気になるところだと思います。

 そうですね。2017年からファンの方の前で限定ユニフォームを発表する試みを続けているんですが、そのお披露目の時は結構、緊張しますね(苦笑)。「ファンの方がどういう声を上げるのか。歓声が上がるのか、それともちょっとネガティブな反応になってしまうのか…」そこはやっぱり気になりますね。限定ユニフォームの場合、通常のユニフォームとは異なるカラーとか柄を採用することが多いので、最初に見た時はどうしても違和感を感じるのかなとは思います。2017年の「炎獅子ユニフォーム」の際も、普段使わない赤色だったので、最初は正直、いい反応は得られなかったんです。でも、チームが勝って行く中でファンの方がユニフォームに対してもいいイメージを持つという流れになりました。

――そう考えると、デザイン的に好評な上にチームも勝つというのが理想の限定ユニフォームということになりますか?

 社内全体のプロジェクトとしてやっているので、やっぱりチームが勝つことでイベント全体が盛り上がりますし、限定ユニフォームも支持されると思います。そうですね。デザインも好評で、試合も勝つ。それが理想です。

差別化とチャレンジ精神

2年ぶりにイベントが復活した2021年は色鮮やかな「彩虹(さいこう)ユニフォーム」が着用された 【(C)SEIBU Lions】

――近年は他球団も夏の期間を中心に限定ユニフォームを着用して戦っています。他球団が発表したユニフォームデザインは気になるところだと思いますが?

 当然、他球団のものは気にしますし、チェックします。ただ、限定ユニフォームのプロジェクトは長い期間に渡って動いているので、他球団のデザインを見てすぐに変えることはしません。でも、自分たちが発表する前に他球団から似たようなカラーだったり、デザインだったりのユニフォームが発表されたことはありましたし、その時は正直、「あ、かぶったな」って思います(苦笑)。でも自分たちの情報は漏れないように動いていますし、他球団も同じなので…。その時は担当者同士で会った時に「似てましたね…」と言うしかないです。

――他球団のユニフォームからヒントを得ることは?

 そこはかなり勉強させてもらっています。今年の新庄(剛志)さんの襟付きユニフォームは衝撃を受けました。その上で意識するのは、自球団も他球団も含めて、過去に作ったユニフォームと同じようなものにはしないということです。同じ年に発表して似てしまうのは仕方ないのですが、過去のものからヒントは得ても、同じようなデザインにはならないようにしています。でも一番は、自分たちのユニフォームです。だいたい1年に2回か3回かイベントユニフォームを着るのですが、その中での差別化は意図的にするようにしています。

――今後、どのようなユニフォームを作っていきたいですか?

 以前は「珍しいもの」、「奇抜なもの」を追い求めていた面があったんですけど、やっぱり受け入れていただくことが一番だと思っています。とはいえ、夏のお祭りなので、普段とは違う華やかさだったり、話題性だったりも作って行きたいです。そこのバランスですね。受け入れられるものだけを作れば、普段のユニフォームと変わらなくなってしまうと思います。そうではなくて、新しいものを取り入れて、常にチャレンジはしていきたいです。

――最後に改めて今年の8月、「蒼空ユニフォーム」を着用する『ライオンズフェスティバルズ』に向けて、ファンの方々にメッセージをお願いでしますか?

 コロナが明けてきた中で是非、蒼空ユニフォームを着て、ボールパークを楽しんでもらいたいです。懐かしい縁日イベントや試合後のアーティストライブなど開催しますので、そこで楽しんで、一緒に球場を盛り上げていただけたらと思います。よろしくお願いいたします!

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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