“甲子園の星”西武・山田陽翔の現在地 約半年のプロ生活と「2、3年後には必ず」の誓い

三和直樹

近江の大黒柱として、2021年夏、22年春夏と3季連続甲子園4強入りを果たした山田陽翔。プロ1年目の今、3軍の先発マウンドに上っている 【スポーツナビ】

 1年前の夏、近江のエース兼4番として間違いなく甲子園の主役の1人だった山田陽翔は今、埼玉西武ライオンズの3軍のマウンドに上り、大粒の汗を流している。1月の新人合同自主トレから約半年が経過した段階で、山田は何を感じ、何を思っているのか。「高校球児」から「プロ野球選手」へと変わる過程の段階にある19歳の「生の声」を聞いた。

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2軍戦で2/3イニング5失点のほろ苦デビュー

甲子園に春夏通じて3回出場、通算11勝は松坂大輔氏らに並ぶ歴代5位の記録だ 【写真は共同】

――高卒でのプロ1年目、ここまで2軍戦、3軍戦で計8試合(取材日の7月12日時点)と多くの実戦マウンドに上っています。充実した日々を過ごしているのでは?

 はい。やっぱり実戦のマウンドの上で、いろいろと経験させてもらっているのはすごくありがたいです。1年目は体作りが一番大事だと思っているので、まずは怪我をしないというところに気を付けていますけど、試合に投げるチャンスをもらっているので、しっかりと投げたいですね。

――ただ、ファーム公式戦の初マウンド(3月29日イースタン・ヤクルト戦)は3番手で登板して2/3イニングを5失点とほろ苦いデビュー戦になりました。

 これまで投げた中で、その試合が一番印象に残っています。プロの怖さというものを知れましたし、慎重に行くところは慎重に、大胆に行くところは大胆に行かなくてはいけないというところを学べました。悔しかったですけど、すごくいい経験になったと思っています。

――2安打6四球と制球に苦しんだ印象ですが、自身の中での反省点は?

 ブルペンでの準備が足りなかったなと思いました。ブルペンで球種の確認をしたりはしていたんですけど、その日の自分の調子をしっかりと知っておくということが大事なんだな、と。改めて冷静になって振り返った時、それまでの自分はブルペンの大切さに気付けていなかったなと感じました。体自体もぜんぜん動いていなくて、球のスピードも出ていなかった。それも含めて準備が足りなかったと思います。

――ただその後、4月12日のイースタン・楽天戦に先発して3回を1安打無失点、三軍戦でも4月28日のジェイファム戦で5回1安打1失点、5月16日の巨人戦では5回1/3を7安打ながら2失点と、先発投手としてしっかりと試合を作っています。

 徐々に球数も増えて、投げるイニングも長くなってきたことは収穫ですけど、まだまだ自分が満足できる結果は残せていないです。もっともっとしっかりと投げないといけないと思っています。でも、プロ野球選手として、今後自分がどうなって行きたいのか。徐々にですけど自分の中での理想の選手像というものは見えてきたのかなと思うので、それに向けて頑張っているというところです。

高校時代の“学び”と高校時代からの“成長”

――改めて高校時代を振り返って、例えば今の自分から高校時代の自分に声をかえるとすればどのような声をかけたいですか?

「楽しめ」ですかね。自分だけじゃなくて高校球児全員に言えることだと思いますけど、やっぱり“高校野球を楽しむこと”が一番大事かなと思います。プロになるとレベルも環境も、置かれている立場も違ってくると思いますし、高校時代は楽しむことが大事だと思います。でもホント、夏の予選が始まると「あの頃はこうだったなぁ」とかは思い出しますね。甲子園は自分の目標としていた場所でしたし、今思っても「すごく楽しかった」という思いですね。

――高校時代は新型コロナウイルスとの戦いでもあったと思いますが、そこで気付いたこと、成長できた部分もあったと思います。

 そうですね。やっぱり練習時間がすごく短くて、その中でどれだけ短期集中でやれるかどうか、どれだけ内容の濃い時間にできるかどうかを求められていましたし、常に意識してやっていましたね。そういった部分はプロになっても同じですし、プロの方がより大事な部分になってくると思います。

――昨秋のドラフト会議では、少し待たされての5位指名でした。指名順位には悔しさもあったのではと思いますが?

 もちろんありましたけど、今はとにかく、感謝の思いですね。プロに入れば横一線ですし、上を目指して頑張りたいなと思っています。

――プロの環境下で練習を続けて約半年、高校時代の自分のピッチングと比べて、一番変わったと思う部分はどこですか?

 配球面だと思います。しっかりと自分でも考えるようになりましたね。高校とはやっぱり打者のレベルが違うので、自分の好きな球をただ投げていたら打たれる。苦手な球でも必要な場面がありますし、そこで投げ切らないといけない。そこをおろそかにしてしまうと試合の後半で自分自身が苦しくなってくる。そういう1試合の中での配球面をすごく学びましたし、変わったかなと思います。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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