神戸・山口蛍が幼少期の経験から得たもの「39歳の長谷部さんができるなら、32歳の自分も絶対にまだまだできる」

元川悦子

プロ15年目の今季、夏場を制して悲願のJ1タイトルへ突き進む

かつて代表で共闘した先輩・長谷部誠の背中を追い続ける山口蛍 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2009年のトップ昇格から3年後の2012年からセレッソで主軸を担うようになり、ロンドン五輪、2014年ブラジル・2018年ロシアの両ワールドカップに参戦するなど、日本を代表するトップ選手に飛躍した山口。10代の頃は人見知りが激しくて、人前で多くを語るタイプではなかったが、日の丸を背負って大舞台に立ったり、所属チームでキャプテンマークを巻いたりすることで、人間としても円熟味を増していった。

「僕はもともと人と喋ることが得意じゃなかったんですけど、試合に出るようになり、代表にも入って、多少メディアに取り上げられるようになったことで、意見を言えるようにはなりましたね」と本人も笑顔をのぞかせる。

 そして32歳になった今、山口は神戸の絶対的リーダーとしてJ1制覇に全力を注いでいる。セレッソ時代の2017年度に天皇杯とYBCルヴァンカップの2冠を取った経験はあるものの、リーグタイトルは未知なる世界。それを手にすることが目下の最重要テーマと言っていい。

「夏場はどのチームも落ちてくる時期。僕らも毎試合、強度の高いゲームをやってる分、チーム全体として落ちる時期があると思うんです。そこでいかにして勝ち点を取っていくかが優勝争いをするうえですごく大事になってくる。夏場に勝ち点を落としてしまうと、頂点に立つのは難しいのかなと感じます。
 僕はセレッソ時代の2017年に前半戦首位で折り返しながら、最終的に川崎(フロンターレ)にまくられて優勝を逃しているんで、今の段階で『優勝・優勝』と意識してしまうのもよくないかなと思います。
 ただ、神戸は2017年の川崎みたいに上を追いかけるのは苦手。逃げ切りタイプやと思うから、今の順位をずっと保っていれば、最終的に可能性がある。(横浜F・)マリノスとかは追い抜くのが得意なチームなんで、彼らに追走されないだけの底力を示す必要がありますね」と中盤のダイナモはここからの戦いを見据えている。

偉大な先人・イニエスタと長谷部誠への思い

イニエスタから託されたリーダーとしての責務を遂行し、タイトルに向かう山口蛍 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 7月1日のコンサドーレ札幌戦を最後にチームを去るアンドレス・イニエスタへの恩返しも頭に入れつつ、山口はピッチに立ち続ける覚悟だ。

「僕はアンドレスが神戸に加入したからここに来ましたし、一緒にプレーさせてもらって新しいものを与えてもらった。セレッソ時代になかったような攻撃的な選手になれたかなと感じています。前に出ていく仕事は昔からあったけど、そこまで点を沢山取るタイプじゃなかった。そういう部分は明らかに変化したなと思います。
 アンドレスと日々、練習や試合をやってよさを引き出してもらった選手は沢山いる。代表的な存在が亨梧(古橋=セルティック)ですね。彼も一段とレベルが上がったし、ゴールを量産できるようになった。それは本当に大きかったですね」

 イニエスタ効果をタイトルという形で結実させられればまさに理想的。30代半ばに差し掛かろうとしている山口のキャリアもより充実したものになるだろう。ただ、彼はここで歩みを止めるつもりは全くない。この先も進化を続け、日本代表の偉大な先輩・長谷部誠(フランクフルト)のように年齢を重ねても大きな影響力をもたらせる選手になりたいと強く願っているのだ。

熱い気持ちのこもったプレーを見せたい!

「サッカー選手の寿命はちょっとずつ伸びているし、自分もできるだけいいパフォーマンスで長くやりたいと考えています。
 最近の欧州を見ていても、30代後半の選手がバリバリ活躍している。特に39歳の長谷部さんがドイツ・ブンデスリーガ1部であれだけのプレーをしているのを見れば、『自分も絶対にできるよな』って気持ちになる。大きな刺激も受けますよね。40歳になる来季も現役続行するのは本当にすごいと思います。
 僕も神戸では年齢的に上の方になってきているんで、『俺がこれだけやってるんだから、若手はもっとやらなきゃいけない』と思わせられるような環境作りはしないといけない。そういう気持ちは数年でグッと強まりました。
 スタジアムに来てくれる子供たちやお客さんには、熱い気持ちのこもったプレーを見せたい。僕は華のあるテクニカルなプレーヤーじゃないですけど、激しさとかタフさを示して、それもサッカーだと知ってもらえたら嬉しいですね。そうなるように頑張ります」

 新たな闘志を前面に押し出す山口蛍は、果たして悲願のJ1タイトルを神戸にもたらせるのか。少年時代からサッカーに人生の多くを捧げてきた男が、頂点に上り詰める姿をぜひとも見てみたいものである。

【画像:スポーツナビ】

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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