神戸・山口蛍が幼少期の経験から得たもの「39歳の長谷部さんができるなら、32歳の自分も絶対にまだまだできる」
プロ15年目の今季、夏場を制して悲願のJ1タイトルへ突き進む
かつて代表で共闘した先輩・長谷部誠の背中を追い続ける山口蛍 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「僕はもともと人と喋ることが得意じゃなかったんですけど、試合に出るようになり、代表にも入って、多少メディアに取り上げられるようになったことで、意見を言えるようにはなりましたね」と本人も笑顔をのぞかせる。
そして32歳になった今、山口は神戸の絶対的リーダーとしてJ1制覇に全力を注いでいる。セレッソ時代の2017年度に天皇杯とYBCルヴァンカップの2冠を取った経験はあるものの、リーグタイトルは未知なる世界。それを手にすることが目下の最重要テーマと言っていい。
「夏場はどのチームも落ちてくる時期。僕らも毎試合、強度の高いゲームをやってる分、チーム全体として落ちる時期があると思うんです。そこでいかにして勝ち点を取っていくかが優勝争いをするうえですごく大事になってくる。夏場に勝ち点を落としてしまうと、頂点に立つのは難しいのかなと感じます。
僕はセレッソ時代の2017年に前半戦首位で折り返しながら、最終的に川崎(フロンターレ)にまくられて優勝を逃しているんで、今の段階で『優勝・優勝』と意識してしまうのもよくないかなと思います。
ただ、神戸は2017年の川崎みたいに上を追いかけるのは苦手。逃げ切りタイプやと思うから、今の順位をずっと保っていれば、最終的に可能性がある。(横浜F・)マリノスとかは追い抜くのが得意なチームなんで、彼らに追走されないだけの底力を示す必要がありますね」と中盤のダイナモはここからの戦いを見据えている。
偉大な先人・イニエスタと長谷部誠への思い
イニエスタから託されたリーダーとしての責務を遂行し、タイトルに向かう山口蛍 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】
「僕はアンドレスが神戸に加入したからここに来ましたし、一緒にプレーさせてもらって新しいものを与えてもらった。セレッソ時代になかったような攻撃的な選手になれたかなと感じています。前に出ていく仕事は昔からあったけど、そこまで点を沢山取るタイプじゃなかった。そういう部分は明らかに変化したなと思います。
アンドレスと日々、練習や試合をやってよさを引き出してもらった選手は沢山いる。代表的な存在が亨梧(古橋=セルティック)ですね。彼も一段とレベルが上がったし、ゴールを量産できるようになった。それは本当に大きかったですね」
イニエスタ効果をタイトルという形で結実させられればまさに理想的。30代半ばに差し掛かろうとしている山口のキャリアもより充実したものになるだろう。ただ、彼はここで歩みを止めるつもりは全くない。この先も進化を続け、日本代表の偉大な先輩・長谷部誠(フランクフルト)のように年齢を重ねても大きな影響力をもたらせる選手になりたいと強く願っているのだ。
熱い気持ちのこもったプレーを見せたい!
最近の欧州を見ていても、30代後半の選手がバリバリ活躍している。特に39歳の長谷部さんがドイツ・ブンデスリーガ1部であれだけのプレーをしているのを見れば、『自分も絶対にできるよな』って気持ちになる。大きな刺激も受けますよね。40歳になる来季も現役続行するのは本当にすごいと思います。
僕も神戸では年齢的に上の方になってきているんで、『俺がこれだけやってるんだから、若手はもっとやらなきゃいけない』と思わせられるような環境作りはしないといけない。そういう気持ちは数年でグッと強まりました。
スタジアムに来てくれる子供たちやお客さんには、熱い気持ちのこもったプレーを見せたい。僕は華のあるテクニカルなプレーヤーじゃないですけど、激しさとかタフさを示して、それもサッカーだと知ってもらえたら嬉しいですね。そうなるように頑張ります」
新たな闘志を前面に押し出す山口蛍は、果たして悲願のJ1タイトルを神戸にもたらせるのか。少年時代からサッカーに人生の多くを捧げてきた男が、頂点に上り詰める姿をぜひとも見てみたいものである。
【画像:スポーツナビ】