J1月間MVP 広島ドウグラス・ヴィエイラが語る完全復活の理由 「今年は“本当のドグ”を見せられている」

中野和也

5試合5ゴールは立派だが、そのすべてが途中出場からマークしたもの。スーパーサブとして勝負強さが光る 【(C)J.LEAGUE】

 4月度の「2023明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に、サンフレッチェ広島のFWドウグラス・ヴィエイラが選出された。4月のJ1リーグで5試合5ゴールの活躍で広島を上位に押し上げた。加入5年目、本当の自分を披露できていると語るブラジル人ストライカーに話を聞いた。

集中力に強くフォーカスしている

――ドウグラス・ヴィエイラ選手、4月度の明治安田生命J1リーグKONAMI月間MVP受賞、おめでとうございます。2017年10月にJ2で月間MVPを受賞して以来ですね。

 アリガトネ(日本語)。感謝の気持ちでいっぱいですし、自分の努力が報われたなと思います。

――好調の要因について、どう分析していますか?

 まずは神様のおかげだと思っています。ハードワークできていますし、それと自信ですね。ハードワークができているからこそ、自信にも繋がっています。そしてタイトルを勝ち取りたいという気持ちも強い。自分のためにも、チームのためにも。それが自分のモチベーションになっています。

――今回の受賞について、ご家族には伝えましたか?

 はい。みんな、すごく幸せな感じでしたね。家族のみんなは自分の今までの努力、自分が乗り越えてきたもの、自分の気持ち。すべてを常に分かち合ってきたし、ずっと話し合っている。辛い部分も良いこともすべて分かっているのでね。

――昨年1月に生まれた娘さんも、とても喜んでいると思います。ドウグラス・ヴィエイラ選手のほうに似ているんですか?

 それに関しては、よく夫婦げんかになるんだよ。どっちに似てるんだ、パパかママかってね(笑)

――この子は将来、こういう子になるんじゃないかという予感はありますか?

 それはちょっと、分からないね。でも、すごくやんちゃな子なんですよ。あちこちに動いたりとか、エネルギッシュな子なのでね。つい最近、僕の母親と話してね、「ウチの子はすごくやんちゃで大変だよ」と言うと、母は「いやいや、何いってんの。あんたの方が10倍、すごかったよ」って(苦笑)。

――4月は5試合5ゴール。この数字も凄いんだけども、同点ゴール1点、決勝ゴール3点と4点が勝利に直結するゴールというところも凄い。こういう拮抗した状況で得点を決める勝負強さの秘訣は?

 厳しい試合の中で、しかも短い時間で仕事をしないといけないのは、本当に集中しないと難しい。自分としては、その「集中力」に強くフォーカスしています。あとは、勝ちたいという強い気持ちですね。それが集中にも繋がっています。

ゴールから逆算したプレーが大切

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――その4月の快進撃の1点目となる鹿島アントラーズ戦(4月1日/○2-1)のPKは、本当にプレッシャーがかかったと思います。相手に先制され、なかなかビッグチャンスも作れないなか、PKを得た。あの重圧のなかでしっかりといいコースに鋭いボールを決めた。なかなかできないと思います。

 PKには集中力と冷静さが必要です。あれは、確かに簡単ではない場面でした。アウェーで、相手のサポーター側の前でPKを蹴らないといけないし、相手チームの選手もプレッシャーをかけてきた。でも、うまく説明はできないんですけど、自分は冷静さを失わないし、周りのプレッシャーを吸収できるんですよね。そういう強みを持っているという実感はあります。

――鹿島戦の2点目、逆転ゴールはエゼキエウ選手の素晴らしいスルーパスをいい動き出しで引き出した。あのシュートも、ここしかないというコースに打ち抜けましたね。

 ゴールに向かうプレーっていうのは確かに難しい。ミスの確率も高くなるのでね。ゴールに向かうパスを出すと、もしかしたら周りから批判があるかもしれない。何でそんなに強引に行くのかって、言われるかもしれない。でも、そのパスが通ればゴールだっていうチャレンジは重要です。そこはエゼ(エゼキエウ)とよく話をするんですけどね、ふたりとも同じ考えなんですよ。

 何が試合を決定するのか、それはゴールですよね。そこに向かうプレーが大切だとふたりでよく言い合っています。横や後ろにパスをするのは簡単ですけど、一番重要なのは前にパスを出すことだから。それが、鹿島戦の2点目につながったと思います。

――日本のサッカーはよく「横パスが多い」と言われています。ゴール前をUの字にボールが動いて、得点を取りにいかない、と。でも、サッカーの本質っていうのは、ゴールにシンプルに向かうところだと、ドウグラス・ヴィエイラ選手は考えているわけですね。

 そうですね。勝利を決めるのはゴールですから、そこから逆算したプレーが大切だと考えます。もちろん、いろいろなやり方があると思うし、フォーメーションもある。でも前にいけるチャンスがあれば、前にパスを出してゴールに向かおう。そういう話は、ずっとしています。

――サガン鳥栖戦(4月9日/○1-0)のゴールも、実にストライカーらしいなと感じています。東俊希選手のスルーパスを引き出して、冷静に決めた。ドウグラス・ヴィエイラ選手のストライカーとしての能力が凝縮されていましたね。

 あのシーンを振り返ってみると、大迫敬介のロングボールに対する競り合いから始まりましたね。自分がセカンドボールをドリブルして、パスを出して取られて、またすぐ取り返してという状況になった。そしてシュンキがボールを運んだ時、自分のポジションを見てくれていると感じたので、裏に抜けた。本当にいいボールをもらったんだけど、相手のGK(朴一圭)は動きが速いんで、それを考えながら強いキックでシュートしたんです。すごく大事な試合で得点がとれて、嬉しかったですね。

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著者プロフィール

1962年生まれ。長崎県出身。広島大学経済学部卒業後、株式会社リクルートで各種情報誌の制作・編集に関わる。1994年よりフリー、1995年よりサンフレッチェ広島の取材を開始。以降、各種媒体でサンフレッチェ広島に関するリポート・コラムなどを執筆。2000年、サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』を創刊。近著に『戦う、勝つ、生きる 4年で3度のJ制覇。サンフレッチェ広島、奇跡の真相』(ソル・メディア)

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