J1月間MVP 新潟・伊藤涼太郎が語るブレイクの理由「リキさんとの出会いが大きい」

飯尾篤史

16年のプロ入り後、J1では結果を残せずにいたが、今季その才能が開花。月間MVP受賞3日前の福岡戦ではハットトリックをマーク 【(c)J.LEAGUE】

 2・3月度の「2023明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に、アルビレックス新潟のMF伊藤涼太郎が選出された。2・3月のJ1リーグで2ゴール・2アシストをマークし、6シーズンぶりにJ1を戦うチームの攻撃を牽引。今や国内屈指のファンタジスタとして注目を集めるアタッカーに話を聞いた。

川崎戦に向けたモチベーションは高かった

――2・3月度の明治安田生命J1リーグKONAMI月間MVP受賞、おめでとうございます。

 ありがとうございます。こういった賞をJ1の舞台でいただけるなんて光栄なことですし、素直に嬉しいです。

――2・3月のリーグ戦でアルビレックス新潟は8得点を奪いましたが、伊藤選手は7ゴールに絡み、2得点・2アシストをマークしました。

 トップ下で起用してもらっている以上はゴールに関わらなければならないって、常に意識しています。自分としては、もっとゴール・アシストを記録できたなっていう感覚があるので、もっと追求していきたいと思っています。

――伊藤選手の特徴として、ゴールに向かうスピード感が挙げられると思います。そうした長所がシーズン序盤は遺憾なく発揮されていましたね。

 そこはチームとしても、あくまでも目的はゴールであって、ボールを回すことが目的にならないように。ボールを回すことは手段でしかなく、常にゴールを意識した攻撃をしようということを掲げているので、僕自身も意識していますし、チームとしてもその意識を強めているところです。

――この2・3月のリーグ戦で最も印象に残っているゲームはどれですか?

 川崎フロンターレ戦(3月11日の第4節/○1-0)ですね。個人的にフロンターレはJ1で一番強いチームだと思いますし、選手の質もやっているサッカーの質も高い。僕の好きなサッカーを体現しているチームなので、自分の中であの試合に向けたモチベーションはすごく高かったし、楽しみにしていた一戦でした。そこでゴールを決められたのも嬉しかったですね。

リキさんは「ボールを失うことを怖がるな」と

昨季から新潟の指揮を執る松橋監督。選手の判断やプレースタイルを尊重し、チームの最大値を引き出している 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

――その川崎戦や北海道コンサドーレ札幌戦(3月4日の第3節/△2-2)でのゴールは見事でしたし、他にも随所にファンタスティックなプレーを披露してくれましたが、個人的に素晴らしいと思ったのはセレッソ大阪との開幕戦(2月18日/△2-2)での先制ゴールのアシストです。「打ってください」と言わんばかりの優しいパスでした。決して派手なプレーではないけれど、チームと伊藤選手が勢いに乗るうえでも、意味のあるアシストだったかなと。

 今言っていただいたように、僕はアシストするとき、誰でもって言ったらあれですけれど、簡単に決められるようなパスを出すことを意識していて。あのシーンも谷口(海斗)選手がワンタッチで打てる優しいパスを心がけたつもりです。ただ、映像で見返すと、僕のパスが良かったというよりも谷口選手が相手の股下を通して、よく決めてくれたなって。

――あの場面、ドリブルで運んでからカットインしましたが、自分で打つという選択肢も持ちながら?

 そうですね。カットインして自分で打つのと、そのまま谷口選手に出すのと、あともうひとつ、三戸(舜介)選手が後ろから回って来たのが見えていたので、そっちに出すという選択肢もある中で、谷口選手に出しました。

――今季はここまで、J1で自分の良さを発揮できているという感覚はありますか?

 ありますね。数字の部分はもう少し伸ばしたいですけれど、自分のストロングの部分はJ1でも通用するなっていう感覚がすごくあります。そこは自信を持ってやれていますね。

――21年夏まで在籍した浦和レッズ時代は、J1で自分らしさを発揮できなかった。それがなぜ、今は出せていると?

 リキさん(松橋力蔵監督)との出会いが大きいと思います。リキさんからは「ミスを恐れるな」と常に言われていますし、「ミスしてもその後のプレーで取り返せばいい」「ミスしても何回でもチャレンジするのが大事なんだ」と。

 浦和時代は結果を残せていなかったから、どうしてもミスをしないように、ボールを失わないように、というメンタリティになってしまっていたんですけれど、新潟ではリキさんのおかげで、ボールを失うことを怖がるのではなく、相手ゴールに向かっていくという自分本来のプレーを発揮できています。リキさんとの出会いによって生き生きとプレーできるようになったし、去年1年を通して相手チームにとって怖い存在になれているという実感があります。それを今、J1の舞台でも出せているので、信じてやってきてよかったなと思います。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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