狙うは頂点のみ。日本女子、「打倒・中国」で世界一へ

月刊『卓球王国』
 5月20日より、南アフリカ・ダーバンで開催される世界卓球選手権個人戦。世界選手権は1年おきに個人戦と団体戦が交互に開催されるため、今大会はパリ五輪前最後の個人戦となる。2021年にアメリカ・ヒューストンで開催された前回大会、日本女子はシングルスに出場した5名のうち、同士討ちで伊藤美誠に敗れた芝田沙季を除く4名が中国勢に敗戦。女子ダブルスでも伊藤美誠/早田ひなが決勝に進んだが、中国の壁に阻まれ、2大会連続の準優勝に終わった。今大会も掲げる目標は「打倒・中国」での世界一だ。

タフな連戦を経ての世界戦、コンディション調整がカギか

1月の全日本前から臀部に痛みを抱えていたという伊藤 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 今大会に出場するのは伊藤美誠、早田ひな、木原美悠、平野美宇、長﨑美柚の5名。伊藤と平野が5度目、早田が4度目、木原と長﨑は初の世界選手権個人戦出場となる。現状、世界で最も中国に近い位置にいる日本女子。今大会に出場する5名全員がシード選手になっており、初出場の木原と長﨑を含め、全員がベスト8を狙えるだけの実力がある。

 しかし、今大会は第1〜4シードが中国勢となっており、彼女たちがトーナメントの四隅にドローされるため、メダルを獲得するには、中国勢を最低でも1人倒さないといけない可能性が高い。当然、中国も日本女子を徹底マークしてくるが、厚い壁を破ってメダルを手にしたい。

 また、今大会は成績に応じてパリ五輪代表選考ポイントが与えられる。国内選考会で優勝すると100ポイントが与えられるが、今大会は3位に入賞すると120ポイント、2位が160ポイント、1位は200ポイントと、選考会優勝以上のポイントを獲得可能。ベスト8でも80ポイントが付与される。さらに中国選手の世界ランク上位3名から勝利をあげると、1勝につき15ポイントが与えられることになっている。女子は現在、早田が332.5ポイントで2位の平野(207ポイント)を大きく引き離しているが、2位以下はまだまだもつれる予感。南アフリカでも、パリ行きの切符をかけた争いが繰り広げられる。

 ただ、選手たちのコンディションには不安が残る。今大会に出場する日本代表選手たちは4月にWTTを戦い、帰国後はパリ五輪代表選考会である全農CUP平塚大会に出場と国内外を転戦。その中で伊藤が腰に痛みを抱えていることを明かし、大会出発前の代表合宿では治療に専念することとなった。女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスと3種目にフルエントリーの早田も「とにかく今は故障しないこと、体調を100%に持っていくこと。こういう状況の中でやっている以上、自分の体のSOSには気がついてあげないといけない」とコメント。タフな戦いとなるが、メダル獲得の吉報を南アフリカから日本へ届けてほしい。

日本女子のツインエースは中国の壁を破れるか

3種目に出場の早田。伊藤との女子ダブルスの他、張本との混合ダブルスにも期待 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 中国勢以外では世界ランキング最上位の伊藤(7位)、それに続く8位の早田は準々決勝までは中国勢と対戦しないドローとなる。故障を抱えている伊藤だが、出発前の公開練習での口ぶりは明るく、「痛みさえなければ卓球自体はめっちゃ良い感じ」と語った。故障の影響もあっただろうが、ここ最近は独創性あふれるプレーが影を潜めていた伊藤。現地に入ってから本格的な打球練習を再開し、そこから試合に向けて仕上げていくということだが、どのようなプレーを披露するか。

 早田は前回大会で初めてシングルスに出場してベスト16。そこから心技体智すべてにおいて成長しており、「シングルスは最低でもメダル獲得が目標」と語る。4月のWTTでは東京五輪金メダリストの陳夢(中国)をあと一歩のところまで追い詰め、5月上旬の全農CUPでも優勝を果たすなど、過密日程の中でも調子は上向いているように映る。

 故障も数多く経験し、昨年の世界選手権団体戦でも決勝の中国戦を欠場するなど、コンディションの調整が早田にとって一つの課題。しかし、「試合はやるしかないので、練習の中でどう抑えるか。1日やらなかっただけで、フィーリングがなくなることはない。その余裕を持つことが大事」「やらない選択をどんどん増やしていって、『やらなくてもできる』と思うことが大事だと思う」「100%の力を出せても負ければ負け。最終的にどんな状態でも勝ちは勝ち」とコメントするなど、「どんな状態でも勝ち切る」ことをテーマに練習を取り組んできた。体をケアしながら、スケールアップしたプレーを披露してほしい。

 また、伊藤と早田には女子ダブルスでの金メダルも期待される。前回、前々回大会と決勝で中国の孫穎莎/王曼昱に敗れて準優勝に終わっているが、今回もこの中国ペアが最大のライバル。伊藤の故障もあり、ペアでの練習は限られてくるが「私のコンディションさえ良ければ、これまで作り上げてきたものがあるので心配はしていない」と伊藤。「早田選手と笑い合って試合ができたら良いなと思う」という言葉どおり、ゴールデンスマイルで大会を終えることはできるか。

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