「リーダー向きではない」と自認する富樫勇樹 B1最強・千葉Jを大一番で勝たせる異色のキャプテン像
富樫勇樹はキャプテンとして千葉JをB1のクォーターファイナル進出に導いた 【(C)B.LEAGUE】
千葉Jが2勝1敗で四強へ
15日の第3戦は両者にとって、負けたら終わりの大一番。千葉は41-30の11点リードで前半を終えたが、広島に食い下がられて最後まで突き放せなかった。
千葉Jのジョン・パトリックヘッドコーチ(HC)は試合後にこう振り返っている。
「最後の4分くらいはナーバスになったというか、試合が“面白く”なってしまった。大事なときに(佐藤)卓磨がベンチから出てシュートを決めて、ヴィック・ローも第4クォーターに向こうがラン(連続得点)のときに3ポイントを入れた。(富樫)勇樹はまったく緊張していなくて、冷静にボールを運んでいた」
広島の流れを断ち切った富樫のプレー
チームの中心は何と言ってもポイントガード(PG)の富樫勇樹だ。15日の広島戦も、勝負どころでその頼もしさが際立っていた。日本代表、2018-19シーズンのMVPで、一昨季のCSと4度の天皇杯で千葉を優勝に導いた立役者なのだから、今さらの話ではある。そういう意味で広島3連戦の富樫は“いつも通り”の活躍だった。
千葉Jは58-59と1点差に追い上げられて第3クォーターの残り1分を迎えていた。富樫は残り45秒でベンチからコートに戻ると、すぐさま残り40秒に3ポイントシュートを決める。広島はフリースローで1点を返すが、富樫がスーパープレーで“3倍返し”を見せた。
クロックが「残り0秒」に近づき、しかもゴール下に敵が揃う状況下で、彼は左ウイングから強引にドライブを仕掛けた。そしてブロックを避けるように腕を伸ばし、なおかつ上半身を後ろに傾ける捨て身のレイアップを沈める。胴体からコートに落ちる危険なシュートフォームで、勇敢に打ち切った。さらに相手のファウルで得たエンド1のフリースローも決め、千葉Jは65-59の6点リードで第3クォーターを締めた。
第4クォーターに入ると、今度は10分間で6アシスト。千葉Jのボール運びを滞らせよう、あわよくば奪おうと強度を強めた広島のプレスに対して、落ち着いてボールを運び、捌いていた。流れが相手に傾きそうなタイミングに、それを食い止める。誰もが“テンパる”時間帯に、冷静さを失わない――。富樫はそんなプレーヤーだ。
「いわゆるキャプテンの仕事」はしていない
パトリックHCは富樫をこう称賛する。
「彼はチームの顔だと思うし、リーダーシップもありますよね。もちろん得点を取る力はありますけど、他のメンバー、外国人選手がナーバスになったときは冷静にプレッシャーブレイクをして、大切なときにレイアップも打ってくれました」
富樫は2020-21シーズンから千葉Jのキャプテンを任されて、今季まで3シーズン務めている。彼自身は就任直後から「自分はキャプテン向きではない」と繰り返しコメントしていた。15日の試合後も、やはりこう述べている。
「自分は“すごくリーダーシップがある”ほうではないと思います。一応キャプテンとして何シーズンかやらせてもらっていますけど、いわゆるキャプテンの仕事をしているわけではありません。コートの中で気づいたこと、自分が思ったことを発しているだけです」