連載:センバツ2023の主役を探せ!

「優勝して甲子園の怖さを知った」 夏春連覇に挑む仙台育英・須江航監督インタビュー

高橋昌江

センバツ大会を目前に控えた時期にもかかわらず、須江監督は快く取材に応じてくれた 【高橋昌江】

 昨夏の甲子園で、春夏通じて東北勢初の優勝を果たした仙台育英(宮城)。2年ぶり15回目の出場となる今回の選抜高校野球大会では、1982年夏、83年春の池田(徳島)以来となる史上5校目の「夏春連覇」への期待がかかる。大会の開幕を前に、チームの仕上がり具合などを須江航監督に聞いた。

投手陣が各々の課題を克服し秋から成長した

昨夏の甲子園を経験している3人をはじめ、投手陣は秋から軒並み成長している。左腕の仁田は特に制球力が向上した 【写真は共同】

――3月4日から練習試合が始まり、10試合以上を消化していると思います。チームの状態はいかがですか?

 冬の練習の成果が随所に見られ、よかったなと思っています。具体的にはピッチャー陣がそれぞれの課題を克服し、秋よりもよくなっているなと感じています。

 仁田(陽翔/新3年)はコントロールが随分と改善し、自滅することがなかったですね。髙橋(煌稀/新3年)は球速が上がり、湯田(統真/新3年)も変化球、ストレートともに成長を感じさせています。

――昨夏に甲子園のマウンドを経験している3人の投手がレベルアップしているのですね。

 それから田中(優飛/新3年)。彼はコントロールが悪いわけではないんですけど、いい部類には入らない。球速を出したいと思いながら一生懸命、取り組んでいました。そして、自分でテンポよく、リズムよく打たせて取るようにやってくれた結果、今までうちにいなかった左でしっかりとゲームを作れる選手になりました。

――投手層がさらに厚くなっていますね。

 5人目のピッチャーを(メンバーに)入れるか悩んでいたのですが、新2年生の佐々木(広太郎)が球速、変化球、制球力のどれもが入れてもいいのではないかと思えるレベルになり、心強い感じになりましたね。佐々木は長いイニングを投げる予定がないので、5イニングとかですが、高橋、湯田、仁田、田中は完投もしています。球数がちょっと多くなっても球威が落ちることなく、スタミナ面もオーケーだなと感じています。

――攻撃はどうでしょう?

 寺田(賢生/新3年)の成長が著しいですね。(165センチと)体は小さいんですけど、よく打ち、チームで一番の成績を残し続けています。山田(脩也/新3年)も秋は打率が上がりませんでしたが、今は4割打っているので立派だと思いますね。あとは尾形(樹人/新3年)が、筋力がついて体が大きくなり、ホームランが何本か出ています。

 組み合わせ抽選(3月10日)以降の練習試合では、長打もありながら、ヒットエンドランやスクイズも決め、いろんなバリエーションで得点できており、急ピッチではありますけど、ちゃんとチームが仕上がってきている感じがあります。

レギュラーと控えの差がかなり縮まった

選手たちの成長を日々実感しているようだ。秋と比べて戦力が底上げされ、センバツ大会のメンバーを決めるのは「本当に大変でした」と語る 【高橋昌江】

――1月5日に年明け最初の練習があり、ミーティングではセンバツ大会に向けたプランを話されていました。まず測定会を実施し、その後は投手対打者の実戦に入り、2月下旬の合宿で試合形式を重ねていく、と。測定会は「誰かと競争するのではなく、持っている最大のパフォーマンスを出すこと」で自分の現状を知ることが大切だとおっしゃっていました。

 測定会は1月14、15日に行い、ここまでよく練習してきたなと感じました。平均化すると難しいのですが、パーセンテージでいうと20パーセントアップくらいにはなっていましたからね。上がりにくい項目はそこまで上がっていないと思いますが、スクワットやベンチプレス、駆け抜けの速さや打球の速度など、成果が出ていましたね。

――実戦では「投手はアベレージの球速とストライク率を測り、打者はハードコンタクトできているか、打球速度を見ている」と説明されていました。合宿では「内容を見ている。野球を評価する」と。

 実戦はグラウンドでやれるほど暖かい日があまりなかったので、主に室内練習場でやりました。全体的に力強さが増しているなと思って見ていましたが、特にピッチャーのほうが伸びている感じがありましたね。合宿ではレギュラー選手と控え選手の差がかなり縮まっていました。合宿の前から感じてはいましたが、実際のパフォーマンスや残した数字が近づいていましたね。

――ベンチ入りメンバーを決めるのは大変だったでしょうね。

 本当に大変でした。

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著者プロフィール

1987年、宮城県若柳町(現栗原市)生まれ。中学から大学までソフトボール部に所属。東北地方のアマチュア野球を中心に取材し、ベースボール・マガジン社発刊誌や『野球太郎』、『ホームラン』などに寄稿している。

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