「優勝して甲子園の怖さを知った」 夏春連覇に挑む仙台育英・須江航監督インタビュー
秋の大阪桐蔭戦では特別な経験ができた
明治神宮大会の準決勝では大阪桐蔭に敗北。9回表に2点を奪い1点差まで迫ったが、あと一歩及ばなかった 【写真は共同】
負けて、泣いている選手もいましたからね。あの負けで、本当の意味で新チームがスタートした、と思っています。「甲子園に行くのって簡単じゃないんだな」とか、「もっと頑張らないと甲子園にすら行けないんだな」と思えた敗戦になりましたね。
――選手に聞くと、東北大会に向けた練習は苦しかったとか。無死満塁から3点ビハインドをひっくり返す攻撃では思い描くように進められず、「しんどかった」と言っていました。
私としては大した練習はしていないんですけどね(苦笑)。決まるまでやるって、そんなの当たり前だろ、と思うんですけど、選手は「大変な練習だった」って言っていて、それが面白かったです(笑)。
――東北大会ではその練習の成果か、攻撃につながりが出てきました。決勝で東北にリベンジし、明治神宮大会に出場。沖縄尚学との初戦(2回戦)では0-4の9回裏に一挙5点で大逆転勝ち。続く準決勝では大阪桐蔭と対戦し、9回に2点を奪って1点差まで詰め寄るも、4-5で敗れました。
財産になっています。秋に大阪桐蔭さんと対戦し、もう少しで勝てそうだなと思う部分もあれば、やっぱり届かないなと感じる部分もあり、その両方を体感できた。それはスペシャリティなことでした。
――夏の優勝からの7ヶ月を総評すると?
夏、秋、冬、春と停滞せずに成長してきたので、選手たちは立派だなと思います。伸び悩みみたいなことってあるじゃないですか。ちゃんと成長を感じられたので、すごいなと思っています。
チャンピオンの力があるとは思っていない
昨夏には東北勢の悲願だった全国制覇を成し遂げた。須江監督はこの優勝によって「甲子園は怖い」と思うようになったという 【写真は共同】
甲子園は怖いなと思っていますよ。と言いますか、優勝してから思いましたね。優勝候補だと言われる学校がコロっと負けるのが甲子園だし、逆に、去年のうちのようにノーマークの学校が勝ったりするので、甲子園って本当に怖いところなんだなって思うようになりました。これは大きな変化だと思いますね。
――それまでは?
怖いな、というのはなかったですね。いかにパフォーマンスを発揮できるかが勝負、そういう場所かなと思っていたんです。もちろん、それは変わらずあるのですが、でも、本当に怖いところだなと感じ、用心深くなりました。また、怖さと同じく学んだことといえば、弱くても大会中にしっかりと積んで強くなることができるんだ、ということ。勝ちながら強くなっていくことができるんだと思えるようになりました。
――夏の優勝校であり、それをベンチに入って経験した2年生(新3年生)が8人も残っているということで、おのずと「夏春連覇」に期待がかかります。センバツの戦い方は?
今回、夏春連覇の挑戦権を持っているのは自分たちしかいませんが、40年くらい達成されていないことなので、それがどれくらい大変なことなのか、重々承知しています。追われる立場なんて微塵も思っていませんし、現状、チャンピオンの力があるとも思っていません。大会で打てるように一生懸命、練習してきましたが、やっぱり投手力を全面に活かした守備と、少ないチャンスを逃さない丁寧な野球をすることですね。これしかないです。私たちがこの春、何かを達成するためにはこの精度を上げていくしかないですね。
――初戦は大会4日目の第3試合、相手は慶応(神奈川)です。
強いところと当たっちゃいましたね。ストロングポイントとされているバッティングは本当に力強いですね。強力打線と言われる打力を持ち合わせていますが、きちんとバントをしたり、細かいこともやるチーム。どんどん振ってくる打つだけのチームではない、と思わないといけないですね。
そもそもの話をすれば、野球そのものも順立てて理論があり、日本の高校野球のなかで自分たちがどういう位置付けてチームを運営をしていきたいかなど、何事に対しても明確な目標や理念を持っているチーム。走攻守といった野球の能力だけでなく、常に高校野球をリードする存在です。そういう意味で組織の強さも持ち合わせていますから、とにかく、とてつもない難敵と初戦で当たってしまったなと思っています。
私たちが甲子園で優勝させていただいてから、次の甲子園で戦う相手が慶応さん。それは新しいスタートを切る上で深い意味があるのかなと思っています。
(企画・編集/YOJI-GEN)