連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が考えるオープン戦の意義「シーズン前だからこそ試せること」

工藤公康

ソフトバンク監督を務めた工藤氏が、各球団がオープン戦で準備していることについて解説してくれた 【写真は共同】

 現役通算224 勝。ソフトバンク監督時代にはチームを5度の日本一に導き、2022 年からは野球評論家として幅広く活躍する工藤公康さん書き下ろしの連載コラム。各球団は開幕に向けて、オープン戦を戦いながらチームを仕上げていきます。監督・選手たちはどんな意識を持って準備を重ねているのでしょうか? 第11回目は、工藤氏が選手時代にどんなことを考えながらオープン戦の時期を過ごし、開幕を迎えていたのかを振り返ります。

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オープン戦は情報収集の場でもある

開幕に向けて選手たちはどんな気持ちでオープン戦に臨んでいるのだろうか? 【写真は共同】

 WBCは侍ジャパンの準決勝進出が決まり、大変盛り上がっている一方で、日本国内でも2023シーズンの開幕に向けてオープン戦が行われています。選手であれば、自主トレからキャンプで積み上げてきたものを確認し、より実践的な場面で自分の身体と野球の技術をマッチングさせ、どのようにシーズンを戦っていくのかをイメージしていく時期かと思います。

 結果を残して1軍に残る。レギュラーを掴む。そのためには若い選手や新人の選手は、オープン戦の1戦1戦が勝負になります。

 一方で、ある程度実績のある選手は、投手であれば今年の自分の状態、例えば「コントロールはどうだろう?」「変化球の精度はどうだろう?」というように、自分の状態やコンディションを確認していきます。

 新しい球種を覚えたときには、カウント球として使えるのか、決め球として勝負ができるのか、などを試していきます。

 ただその中で、同じリーグの打者とオープン戦で対戦した際、試したいボールを投げたり、試合の中でやりたいことを実践するということはあまりしません。プロ野球の世界にとって、情報というのは非常に大きな武器になります。自分が投げたいボールや戦略をオープン戦で試してしまうことで、シーズン開幕前に相手に情報を与えることになってしまいます。そういった考えが背景にあるため、同じリーグの打者に対して投げるときは、あえて昨年と同じような攻め方や、投球をするケースもあります。

 しかし、同じリーグのチームでも、新外国人・新人の打者と対戦する場合は状況が変わります。インコースを続けてみたり、変化球を続けて何球目に打者が手を出すのか、そういった反応を見ることもあります。先ほども話したように、プロ野球という世界は、相手を知っているか、知らないかで大きく戦況は変わります。情報が未知の選手に対しては、変化球を続けて投げた時のタイミングの取り方や反応を見て情報を集めます。

 このような情報収集は、バッテリーで話して取り組む場合もありますが、チームとして取り組むこともあります。特に外国人選手には、インコースを続けたときにどういった反応をするのか、そのインコースを続けた後の変化球にはどういった対応をするのか、チームとして作戦を練って取り組む場合もあります。オープン戦という時期は、調整や“試す”という時期だけでなく、情報を収集していくうえでも大切な時期になると考えても良いでしょう。

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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