連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が考えるオープン戦の意義「シーズン前だからこそ試せること」

工藤公康

ブルペンと試合との差を埋める

現役時代の工藤氏はシーズンで結果を残すために、オープン戦でどんなことを試していたのだろうか? 【写真は共同】

 私自身はというと、オープン戦では、ブルペンで投球できていたことが実際の試合で発揮できるか、そうでないか、その感覚の違いを確認していました。例えば、ブルペンで「今日はアウトコースの調子が良い!」となったときに、それが実際の試合で同じようにアウトコースにコントロールできているのか、いないのかをオープン戦では確認していきます。

 シーズン中でも同じですが、特にこのオープン戦は、現在の自分の体の状態、調整がどれほどできているのか、という視点も大切にしつつ、ブルペンと試合でのギャップを埋める取り組みも行ってきました。

 ブルペンではコントロールができていたボールが、試合ではボール1個分外れてしまう、ボール球にしたい変化球のコントロールができないなど、実際の試合では、どうしても力が入ってしまい、フォームやボールにブレが生まれてしまいます。

 ブルペンでの投球と実際の試合とのブレや感覚の違いを確認、自覚をしたうえで、調整・修正方法を試合の中で養い、試す。こういった一連のサイクルをオープン戦の時期に大切にしていました。

 大切なのは、自分なりの調整方法を見つけていくことです。ボールが高くいってしまうなら、それを低くする方法、外れてしまうならそれを戻す方法、ストライクからボール球にしたい変化球がストライクゾーンからストライクゾーンでの変化になってしまうのであれば、試合の中でその変化球を3球続けるなど矯正をしていく。それができるのがこのオープン戦です。

 シーズンが始まれば、打者1人ひとりと戦っていかなければいけないので、何かを試すということは難しい。オープン戦だからこそ、調整方法や変化球をうまくコントロールできないときの修正方法を試合の中で探ることができます。

 オープン戦では、ある程度「球数」という設定もあります。その中でも、ただ球数をこなしていくのではなく、限られた球数の中で目的を持って取り組むことも大切になります。

 例えば、変化球の1つをカウントを取る球に使いたい。そういった意図がある時に、キャッチャーと話をして、ボールが続いたタイミングでその変化球を選択してカウントが取れるのかを試す。その日の登板の中で、何回もできませんが、1~2回試して調整をしていく。限られた球数の中でやりたいことを試していき、その中で球数を増やし、シーズンを迎える準備をする。私はオープン戦で登板していくうえで、そういったことも大切にしていました。

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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