松木玖生ら擁するU-20代表がW杯出場に王手 不安を抱えたチームがGSを首位突破できた理由

松尾祐希

意見交換できる関係性がチームのプラスに

中国戦は苦戦を強いられたものの、主将の松木が1列前に入ってチャンスメイク。修正力の高さを示した 【Photo by Zhizhao Wu/VCG via Getty Images】

 終わってみれば3連勝でノックアウトステージに進出。2位で勝ち抜けていた場合は準々決勝で日韓戦が待ち受けていただけに、首位通過の価値は大きい。ただ、それ以上に3試合で得た経験値は何事にも変え難い財産だ。相手の状況や試合展開に応じて、システムや戦い方を変えながら自分たちのリズムを作ってきた。また、指揮官からの指示だけではなく、選手たちの間で意見交換しながら戦い方に変化を加えられた点も見逃せない。

 サウジアラビア戦では後半10分過ぎに4-2-3-1から3-4-2-1に変更したものの、重心が後ろにいった影響で相手に押し込まれる時間帯が続いた。そこでMF山根陸や松木、FW北野颯太がピッチ内で相談。「意外とぼこぼこ蹴ってくるわけではなく、つないでサイドから入れてくる形だった。それだったら、4-4-2でボールにアタックできるようにしたほうがいい」(北野)という意見になり、最もベンチに近い場所にいた北野が指揮官に意思を示した。冨樫監督は終盤の戦い方も含めて総合的に判断し、現状のまま戦ったが、状況に応じて戦い方を議論できるようになった点は成長の跡だろう。「一次予選の時はあんまりなかった。そういう考えがあった選手も少なかったと思うし、考えが持った上でちゃんと伝える。それは徐々に増えてきている」。北野の言葉からも変化が感じ取れた。

 不用意なミスでピンチを招く場面もあり、戦術的に未熟な部分は多々ある。だが、1年足らずの間に多くの経験を積み、チームとしても個人としても前進を続けてきた。その成果が修正力に繋がり、3連勝に結び付いたと言える。12日のヨルダン戦は勝利すればW杯出場が決まる大一番を前に、大きな手応えを得たのは間違いない。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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