高校サッカー、鹿児島の覇権争いが激化 鹿児島城西が神村学園を破って九州制覇

平野貴也

神村学園とは異なる特長

九州大会決勝で2得点を挙げた中村 【筆者撮影】

 神村学園には、昨季の主力が数名残っており、23年度も全国トップレベルの戦いが期待できる。その神村を破った鹿児島城西も、地力があることを今大会で証明した。準々決勝で直接FKを決めるなど高精度のキックを誇るDF横山輝人(2年)や主将の福岡を中心とする守備ラインは、競り合いに強い。決勝で先制点を奪ったDF内田輝空(2年)は右サイドでもプレーでき、空中戦に強さをもたらす。中盤は、機動力の高いMF坂上日向(2年)と攻撃的センスが目立つMF芹生海翔(2年)が中心。兵庫県の出身で、自身の希望により一般受験で入部してきた芹生は「神村学園に年代別日本代表が何人かいると聞いて、そこを倒したいと思って来た」と話していたが、決勝戦で2点目をアシストするなどチャンスメーカーとして輝きを放った。

 強い岡留と、速い矢吹のツートップも強烈。決勝で2ゴールを決めたMF中村玲音(1年)ら下級生にも有望株がいる。センターラインは競り合いに強い選手が多く、駆け引きや技術に長ける神村学園に対して、異なる特長をぶつけて勝負できるチームでもある。両足を巧みに使ってパスを繰り出すMF坂上は「神村には西丸とか名和田とか注目されている選手がいるけど、総合力では自分たちが上だと思っている」と自信を示した。ツートップを生かして速攻を仕掛けた後、二次攻撃ではボールを保持して両サイドへ散らす攻撃のバリエーション増を目指しており、進化が楽しみなチームだ。

同じ県内には、スタイル転換中の鹿児島実業も

 16年ぶりに全国4強へ進出した神村学園は、今季からプレミアリーグWESTへ昇格。新たな場で力をつけて、昨年度は届かなかった全国の決勝、そして日本一を狙う。そのチームに刺激を受ける鹿児島城西が、県大会に続いて宿敵を2度破り、なおかつ無失点で九州大会を制して存在感を示した。もちろん、他チームも追いかける。筆頭格は、県大会で鹿児島城西にPK戦で敗れた鹿児島実業だろう。昨年度の選手権県大会決勝では神村学園に0-1で敗れたが、激しいプレッシングと、技巧派の中盤を生かしたパスワークで堂々と渡り合った。かつては全国大会の優勝争いの常連。数多くのプロ選手を輩出してきたが、2007年度以来、選手権の全国大会から遠ざかっている。しかし、17年に中学生年代のFC KAJITSUを立ち上げて育成を強化。中高一貫指導を受けた世代が高校の上級生になり、以前よりも速攻頼みの傾向が薄れ、ボールポゼッションによる攻撃を志向するチームに変ぼうを遂げている。鹿児島城西の新田監督も「フィジカル能力がある子も、技術がある子もいる」と警戒する相手だ。

 神村学園、鹿児島城西、鹿児島実業――鹿児島には、強豪が揃う。どの都道府県でもライバル争いは見られるが、鹿児島県勢同士で九州の頂上決戦を行えるレベルで、彼らにとっては「鹿児島最強」の争いは、あくまでも通過点。日本最強の座を得るための切磋琢磨から、全国トップクラスの強豪チームが生まれ出る。22年度にFW福田師王(ボルシアMG)、MF大迫塁(C大阪)らを擁して全国4強に進んだ神村学園の躍進が、県内の切磋琢磨をより激しいものにしたことは、間違いない。2年連続となる鹿児島県勢の躍進も十分にあり得るが、県代表の座をつかむのは、どこか。まずは、新1年生が入学してシーズンが本格化する4月から、リーグ戦を通して夏のインターハイへ。覇権争いはますます激しくなりそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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