スタメン5人変更は「傲慢」であり「無謀」 韓国メディアが見たコスタリカ戦の日本代表

逆転で大国ドイツを下した初戦からの反動が大きかったこともあるだろう。韓国メディアの多くが、日本のコスタリカ戦の敗北について驚きをもって伝えた 【写真は共同】

 試合を優位に進めながらゴールを奪えず、逆に終盤に失点を喫してコスタリカに敗れた日本代表。この試合の森保ジャパンの戦いぶりを隣国・韓国のメディアはどう見たのだろうか。ドイツ戦の日本に対しては「ドーハの奇跡」などとその快挙に称賛を送っていたが、やはり今回は厳しい論調が支配的だ。

韓国メディアにとっても“想定外”の敗戦

 日本代表がコスタリカ代表に0-1で敗戦したニュースは、韓国でも多くのメディアで報じられている。「コスタリカの“ワンショット・ワンキル”に崩れた日本」(一般紙『ハンギョレ新聞』)などで、試合から一夜明けた28日も「“巨艦”ドイツを捕らえた日本、“弱体”コスタリカに足元をすくわれる」(一般紙『東亜日報』) 、「異変の日本、今回は沈黙」(一般紙『京郷新聞』)など、日本の敗戦が驚きをもって報じられている印象だ。

「日本列島、コスタリカ戦敗北で熱狂からため息へ」(通信社『聯合ニュース』)、「ドイツを破って浮かれた日本、コスタリカ戦敗北で“冷や水”」(経済紙『韓国経済新聞』)と日本の意気消沈ムードを詳しく伝えるメディアもあるほどだが、日本がコスタリカに敗れることは韓国メディアにとっても“想定外”でもあったのだろう。

 というのも、実は大会前、筆者は旧知のサッカー記者たちに韓国代表の戦績や日本代表の戦績を予想するアンケートを実施。現地カタールで取材をしている一般紙やスポーツ紙のサッカー担当記者はもちろん、韓国のサッカー専門メディアの編集長に現役記者まで計10名の記者たちに話を聞いたが、コスタリカ戦に関しては「日本が勝つ」という見方が支配的だった。1名だけが2-2のドローを予想したが、残る9名は日本の圧勝に終わるだろうと展望していたのだ。

 まして数日前にはドイツ相手に劇的な逆転勝利を収めたばかり。その快挙は韓国でも「ドーハの奇跡」として紹介され称賛されていただけに、反動も大きかったようだ。「ドイツを破った日本の傲慢」(総合メディア『Mydaily(マイデイリー)』)、「“自慢”で“自滅”、日本がコスタリカに敗戦」(『Goal.com』韓国版)、「奇跡を起こした意味なしか……日本、ドイツ・コスタリカ相手に結局1勝1敗」(サッカー専門メディア『FOOTBALLIST(フットボリスト)』)と手厳しい。

アン・ジョンファンやパク・チソンも森保采配に疑問を呈す

ドイツ戦からスタメンを5人入れ替えた森保監督の「過信」が、コスタリカ戦の敗北を招いたと報じるメディアは少なくない 【GettyImages】

 特に厳しい声が集まっているのが森保一監督の采配だ。

 ドイツ戦時は「森保一監督が幻想的な用兵術でドイツを捕らえた」と伝えたネットメディア『エックススポーツ・ニュース』や、「策略家・森保、精巧な選手交代」と見出しを打った『ハンギョレ新聞』など、韓国でもメディア各社が森保監督に最大限の賛辞を送っていたが、コスタリカ戦では一転。その采配に首を傾げるメディアが多い印象だ。

 「日本の果敢な選択と集中が“戦車軍団”ドイツを破った」と書き出した記事で森保采配を大絶賛していた『スポーツソウル』も、コスタリカ戦に関しては「ドイツに勝ってコスタリカに負けた日本に韓国も驚き……森保監督の采配に疑問符」とタイトル付けして指摘している。

「コスタリカ戦の敗北は油断が招いたと言える。森保監督はコスタリカ戦で主力5人を変更するという冒険に出た。ベスト16が確定していない状況で理解できない起用ではないだろうか」

 日本では森保監督がターンオーバーを導入することがあらかじめ想定されていたが、韓国メディアには「傲慢」にも「無謀」にも映ったのだろう。

 韓国では地上波全国ネット3局でカタール・ワールドカップが同時中継されており、日本対コスタリカ戦もKBS(公共放送)、MBC、SBS(ともに民放)の3局で同時中継されたのだが、実況席に座る韓国人元Jリーガーたちも森保采配をチクリ。実況席で試合開始前の先発ラインナップを見たアン・ジョンファン(MBC)は「いくらなんでも先発を5人変えたのは傲慢ではないか」と語り、戦前は「2-1で日本が勝利する」と予想していたパク・チソン(SBS)も先発メンバーを見て、「引き分けか、コスタリカが勝つんじゃないか」と予想を変えたほどたった。

 サッカー専門誌『Best Eleven(ベストイレブン)』も、「あまりにも過信した日本、ドイツ戦の先発から5人を変えて“惨事”に」と題した記事の最後をこう締めくくっている。

「結果論だが、ドイツ戦で稼動していた先発11人をそのまま起用していたらどうだっただろうかという仮定の話をせざるを得ない試合だった。結局、森保監督の過信が災いを招いた」

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著者プロフィール

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で2002年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書に『祖国と母国とフットボール』『イ・ボミはなぜ強い?〜女王たちの素顔』のほか、訳書に『パク・チソン自伝』など。日本在住ながらKFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)に記者登録されており、『スポーツソウル日本版』編集長も務めている

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