[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第20話「恩師のカミングアウト」
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
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玉城迅はフィンランド経由の便でパリ=シャルル・ド・ゴール空港に到着した。日本代表のホテルから直接来たため、荷物はバックパックひとつのみ。機内食だけでは物足りず、玉城は売店でクロワッサンを買ってかぶりついた。
「このバターが焦げたこうばしさ……パリに戻って来たって感じがするわ」
玉城がパリ行きを決意したのは、前半15分で交代させられたチリ戦直後のことだ。
ロッカールームで誰とも視線を合わせたくなく、頭からタオルをかぶっていたとき、秋山大監督からこう告げられた。
「事故のショックもまだあるだろう。3日間のオフを与える。中国戦までに戻ってくれれば大丈夫だ」
表面的には「戻ってきてほしい」と言っているが、ほぼ戦力外通告だ。必要とされていないことを瞬時に悟った。
玉城は自分でも代表を去るべきだと自覚していた。
不用意な一言が加藤慈英と松森レオのケンカを引き起こし、交通事故の原因になった。2人は謹慎処分になってしまう。そして試合でミスを連発――。まだ代表は早すぎたのだ。
玉城はロッカールームを出て通路を抜けると、サポーターと目が合わないようにうつむいたままバスに乗った。
チームバスが事故にあって観光バスが用意されたため、ガラスがスモークになっていない。サポーターからの視線が突き刺さる。
もう大学に帰ろう……。
そう思った瞬間、玉城は窓の外に目を奪われた。
Tamashiro 21
【(C)ツジトモ】
その少年は父親と手をつなぎ、21番の背中をこちらに向けたままバスから遠ざかっていった。
なぜわざわざ自分を?
玉城は全身から勇気が湧き上がってくるのを感じた。
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